無関心や孤立、寛容性が下がる「社会的なトラウマ」 という現象ーその連鎖と国連関係者が学ぶ「どうしたら憎しみの連鎖を防げるのか」という理論

先日はトラウマとは単に「心の病」というよりは、「身体に残り外に出切れていないエネルギーである」とお伝えしました。

 

アメリカでは10人に一人がPTSDと言われるくらい、トラウマやPTSDが過剰に診断される状態があるとも指摘され、

 

すべてを「トラウマ化」する必要はない、と断っておいた上で、

 

トラウマと暴力の連鎖のメカニズムと、それを乗り越える過程を理論化したものして知られる

 

The Center for Justice and Peace-buildingの Strategies for Trauma Awareness and Resilience(STAR)より、トラウマが日常的にどういう風に現れるのかお伝えしたいと思います。

 

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⏫  The Center for Justice and Peace-building, Strategies for Trauma Awareness and Resilience: STAR)より

 

一般的にはこのような状態がみられます。

 

・判断能力が低下し、何かに対する事象を恐れとして認知しやすくなる。

・コミュニケーション能力が低下し、特に共感性が下がる

・柔軟性や寛容性が下がる

・直接何かが起こったわけでもない個人との関係において緊張や対立がおこる

・無関心や孤立

・自分の被害ばかりに目がいき、他者の視点で見ることができなくなる(歴史、係争、関係性)

 

さらに、そのエネルギーが内に向けられるか(acting-in)、または外に向けられるのか(acting-out)?に分けられます。

 

内に向けられた場合には、以下のような症状が見られます。

 

内に向けられた場合:

・依存 (インターネット、薬物、買い物、セックスなど)

・過食症・拒食症

・仕事中毒

・自傷行為

・うつ

・不安

・頭痛や身体の緊張など・慢性的な痛み

・病気(身体的症状)

・自殺

 

外に向けられた場合には、以下のような症状が見られます。

 

外に向けられた場合:

・ドメスティックバイオレンス(DV)

・虐待

・犯罪行為

・リスクを犯したがる

・攻撃的な行為

・暴力行為

・戦争

 

社会的・集合レベルでは次のようなトラウマのサインを見ることができます。

 

・無関心(国の政策や政治や社会に対する無関心)

・黙る(表現の自由の抑圧、真実が語られなくなる)

・共感や寛容性のうすれ

・二元論(ゼロか100か、こちら側かあちら側か)

・ 人との繋がりが希薄になり信用できなくなる

・環境の悪化

・性の軽視や売春の増加

・薬剤の使用量の増加

 

 

トラウマはそれに苦しんでいる当事者が自分で心の痛みを癒し、その体験を完了させなければ、さまざまな 形で次の世代や社会に引き継がれると言われています。

 

最近は、トラウマと暴力の連鎖だけでなく、それを乗り越える過程も理論化されています。

 

これは、9.11をきっかけに始まった「どうしたら憎しみの連鎖を防げるのか」という研究から生まれまし た。

 

今では、「Strategies for Trauma Awareness and Resilience: STARプログラム」として知られ、私も国連の研修の一環で参加したことがありますが、米政府や国連関係者、アフガニスタ ンやイラク従事者をはじめ、ドイツ、ケニア、レバノンなど世界60ヵ国から参加者が集まるプログラムとして知られています。

 

STARは、米国で起きた1995年のオクラホマシティ連邦政府爆破事件の被害者が「和解」へ向かっていた 過程などを理論化し、紛争を根本から解決するには、個人が心の傷やトラウマの体験を癒すことが重要だとしています。

 

STARに理論によると、寛容性の低下や排他主義といった排除型の暴力も、トラウマと暴力の連鎖の一つだと説明することもできます。

 

報復の「連鎖」を根本的に解決するためにも、こうした連鎖のメカニズムとそれを断ち切るのは何か?と理解することは役に立つと思います。

 

STARの理論では以下のステップが説明されています。

 

STAR 和解.001

 

(#1)身の安全

(#2)なげく・自分のストーリーを話す

(#3)Why me? ⇒ Why them?なぜ私?からなぜ相手?への視点

(#4)相手の「ストーリー」を理解する

(#5)ストーリーが書き換わる

(#6)ゆるし

(#7)正義(restorative justice)

(#7)和解

 

こちらについてはまた説明したいと思います。

 

個人的なトラウマやPTSD(援助従事者による二次受傷、セカンダリートラウマも含む)の回復プロセスについてはこちらで説明しています。

 

トラウマとまで言わなくても、人生では自分の思うようにならない時もあれば、理不尽なことも起こります。一人ではどうしたらいいのか分からなくなることもあるでしょう。

 

そんな波の中にいる時にどうしたいいのか?

 

少しでもそんなヒントになるように、トラウマやPTSDの回復理論やレジリエンスに関する研究と私自身の燃え尽き症候群やPTSDからの回復体験を質問形式にしてまとめました。

 

ここで挙げている質問は、リラックスして、まずは眺めてみて、思い浮かぶことをありのままに観察してみるというアプローチをオススメします。

 

質問を読んでもに何も思いつかなくても、ふとした瞬間に何か思い浮かぶ事もあるでしょう。

 

自分が前に進んだからこそ、意味を持ってくる質問もあるので、ぜひ定期的に眺めてみて下さいね。

 

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目次

あ、今の自分の状態について把握する

い.自分の「ストレス反応」を知る

う.今気になっていることについて観察する

え.喪失 (後悔、自責、サバイバーズギルト)に気づく

お.自己像、自己肯定感、自己受容度に気づく

か.自分の中の「不安」を意識化・言語化する

き.自分のコーピングスタイルを知る

く.自分と相手との優先順位(境界線)と当事者レベルを知る

け.自分のストーリー(解釈・認知)に気づく

こ.回復のストーリーをみつける

さ.試練の中の「意味」について知る

し.再結合・新しい自己の創造

す.回復・再生のためのステップ 

せ.トラウマからの回復・再生のプロセスで体験しうること

そ.トラウマからの回復の三段階

 

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