短近な資源を活用しながら、マネーの経済システムと並行して、個人の範囲で小さくてもいいから「お金に依存しないサブシステム」を並行して持っておこう、という考え方がじわじわと拡がっているようです。
地域エコノミストの藻谷浩介さんの講演を聞きました。
なんで?
いろいろなアングルがあるとは思いますが、一つは、生産人口減少、高齢化、少子化という課題です。
東京を含め、日本のあらゆる地域が14歳までの子供の人口の減少、生産年齢と言われる15~64歳までの人口の減少、65歳上の人口の急増という問題に直面しています。
平成合併前32,000市町村のすべてをほぼ私費で訪問したという藻谷さんが見せてくださった全国の市町村のデータによると、
今までは、人口の減少は交通の不便なところの問題と思われていたのですが、交通の便がよくて工場があっても、例えば、静岡市といった新幹線も止まる東海道本線上の場所でも人口減が続いているそうです。
そして、地方の過疎化のインパクトが強くて、人口減少は地方の問題だと思われがちなのですが、
65歳以上の老齢人口が増えていくという点では、この現象は、早いか遅いかの違いだけで、実は都市部の方が顕著なのだそうです。(団塊の世代の多くはリタイア後も都会で暮らし続けるからです。)
逆に、地方の一部では老齢人口の増加は止まってきている所もあります。(団塊の世代の多くは東京に出てるままだからです。)
2050年日本人口2050年日本人口
これって、どういうことかと言うと、都市部では医療、福祉・介護予算は増加し、消費人口が激減する=今の経済規模は保てない (移民の受け入れなどなんらかの対策がとられなければ)、ということで、それならば、全体的に考えると、新鮮な野菜に魚、おいしい水のある生活の方がいいかも、という人たちが出てきます。

だから、
交通を整備する
工場を誘致する
観光客を誘致する
というよりも、
藻谷さんは、
人口が減らなくなること
若者が定住し、ずっと子供が生まれ続けることを考えようと言います。
今の住民が毎年1歳ずつ歳を取っていくこと、
若者が進学や就職のために地域を出て行くことはある程度は止められないにしても、
🙆 若者たちを呼び戻す工夫をすること、そして
🙆子育て世代の支援で出生率を高くできる、と言います。
実際に、そのことに早くに目をつけた北海道のニセコ町は、北海道の豪雪地帯の中でも特別豪雪地帯に指定される冬の生活はけっして楽とはい言えない「僻地」にありながら、住環境を整備して子育て支援策を充実させた結果、30代の子育て世代が転入し、人口増加率が全国でナンバー3に入ったそうです。
ちなみに、町長が「町全体で子供を育てます!」とYoutubeで熱く宣言しています。
ちなみに、とても興味深いと思ったのは、全国的に少子化が進む中で、人口増加率ナンバー5はみんな「辺境」にあることでした。
沖縄県竹富町
沖縄県北大東島
北海道ニセコ町
鹿児島十島村
沖縄県宮古島市
(順不同)
子育てがしやすい、ということと、そこにある資源と魅力を最大限に生かした町づくりをすれば人は来るという可能性が示されているように思います。
ニセコの例はさらにヒントをくれます。
ー移住者の受け入れ態勢を徹底的にとっていること、
ー家探し(賃貸)の支援を徹底していること(地方では家を貸してくれる家が少なく、まず移住者が苦労するのは家探しだそうです。)
ー外国人の受け入れ態勢を徹底的にとっていること、
ー外国人む含め誰にでも広く就職の門戸を開いていること、
ー結果的に、国際結婚も多くなって、永住につながっていること、
ーそれが田舎でありながら開かれた文化をつくっていて、移住者も住みやすいと感じること、
そして、驚いたのが冬よりも夏の観光客の方が人数が多いということで、その理由ー「川下り」と「トレッキング」はもともとニセコを訪れたオーストラリア人のアイデアだったという点です。
地元の人に「当たり前」のことも外の人から見たら「当たり前」じゃない。
「辺境」を自覚していることもあってか、ニセコ町の町民の方々も外国人を受け入れるための努力をしていること、「外部(外国人も含め)」の意見やアイデアにもオープンな点は大きそうです。
そして、地域活性化のためのもう一つの提言が、地消地産を進め、地域外に出ていくマネーを減らし、すでにある周りのものから価値を生むお金に依存しないシステムを並行して持っておこうという「里山資本主義」です。
世界中から一番安くて大量に作られたものを買ってくるのではなく、地元産の質を上げて地元産をもっと使うライフスタイルです。
例えば、伊勢原市民1人当たりの年間のモノ消費のたった《1%=1.2万円》を、地元産品の消費に使えば、12億円が地元経済に回ることになり、雇用を300人分増やせます。
他には、
設備費は地元の業者に発注する
地代は地元の人には安くする
光熱費は中東から何万マイルもかけて運ばれてくる石油ではなく、里山から調達できる「まき」を使う
貯金は都会に預けず地元に再投資する
原材料は出来るだけ物々交換をする
地元学校での給食や介護施設などでの食事では農家から直接野菜を買い取り100%地元の食材を使う
観光客に出す食事にも徹底的に地元産の食材を使うなど、
まだまだ出来る余地はたくさんある、と言います。
特に、燃料は石油を輸入するのではなく、日本には里山という大きな資源があるのだから、それを燃料として最大限に利用しよう、と提唱しています。
オーストリアは林業を復興させて、年間に1兆円弱の木材資源を輸出する外貨を稼ぐ産業になり収入の高い職業として若者に人気だそうです。
ハイテク産業は、商品陳腐化のスピードが速いので、藻谷さんが提唱するのは徹底的に地元産の付加価値をあげること・ブランド化することでした。ニセコの例にも繋がりますね。
さて、この話しを聞いた後だったので、川根本町の有名な秘境温泉寸又峡でいただいた食事で、地元産のものはどれですか?と聞いたら、幸いに野菜や魚のほとんどが地元産でした。
質素に暮らした方がいいとか
都会を捨てて田舎暮らしをしようとか
自給自足をしようとか
マネーは悪だ
そういう意味ではないし、
そこにある自然の資源を活かそうという発想も
「お金で計れない価値」も
地消地産という考え方も
生活の質という視点も
当たり前と言えば当たり前なのだけれども、
藻谷浩介さんの講演は、人口統計や経済的なデータも含めて示してくれたことで、
しかも年間に400回も文字通り全国各地津々浦々で講演をするとかで(1日辺り2回以上です)、
あまりモノを買うことに興味のないさとり世代やゆとり世代とのそれ以上との世代との「世代間の橋渡し」的な言語にもなっていて、
そういった価値を直観的に感じてきた人たちを超えて、全国的な議論のきっかけをくれているんじゃないかと感じました。
この川根でのイベント自体が、地元のリーダーと全国と世界の若い人たちがつながって開催し続け今年7回目を迎えるとかで、そんなフラットな横のつながり自体も象徴的だと感じました。

そして、人口増加率が全国的トップレベルと紹介された沖縄の竹富町の小浜島からは、平均年齢84歳のおばあアイドルグループ「KBG84」が最近メジャーデビューを果たしました。
品川プリンスでのコンサートは満席で、NHKにも民放にも「徹子の部屋」にも出演し、BBCやCCTVにも取り上げられています。
この小浜島は、私の父が生まれた島で、私のおばさんもKBG84に参加しています。
小浜島のおばあ達ってなんでそんな元気なの?
小浜島的「里山(離島)資本主義」の秘訣とは???
里山資本主義③: BBCでも絶賛84歳のアイドルグループを生んだ小浜島の秘訣とは?