キャベツ専業農家が新宿伊勢丹で連日完売のおしゃれ発信源になるまで

「ここにあった!」私は思わず叫んでしまいました。

 

なぜなら、その店にあったのは、私がこの数ヶ月ずっと探し求めていたものだったからです。

 

大吉七菜海さんに会ったのは、東京赤坂アークヒルズ前のヒルズマルシェでした。

 

彼女がおしゃれなラッピングに包み手にしていたのは「ケール」でした。

 

ケールはミネラルが豊富で「野菜の王様」と言われます。

 

普通のスーパーではあまり売っていない希少な野菜です。

 

テニスチャンピオンのジョコビッチ選手は、世界一位になるまでには文字通り何度も「大きな壁」を乗り越える必要があって、「起きていられる時間にできることはすべてやった」と語っています。

 

その一つが食事改革で、彼が公開しているメニューの中にはほぼ毎日ケールが登場します。

 

わたしもケールを食すると執筆が進むので、実はあちこち廻って探していたのです。

 

そんな経験もあったので、彼女はどうやってケールを調達し、都会のど真ん中でたった一人で、どうしてケールを売るようになったのか?と興味を持ちました。

 

しかも彼女のお名前は大吉(だいきち)さん。

 

彼女の田舎の鹿児島県の指宿ではごくごく一般的な性で、同級生の名前もみんな大吉(だいきち)、中吉(ちゅうきち)、小吉(しょうきち)、末吉(すえきち)だったそうで、町を離れて始めてそれが珍しいことに気づいたそうです❗️

 

彼女は社会学を学ぶ大学2年生でした。

 

彼女の実家は、指宿で東京ドーム5個分の土地で農業を営むキャベツ専業の農家さんで、これまでずっとキャベツを育ててきたそうです。

 

町のほとんどの人が農家で、農家=キャベツという図式ができあがり、それになんの疑問も持たなかったある日、七菜海さんのお母さんは家族に向かってこう言ったそうです。

 

「このままキャベツだけやっていたら危ない。もし不作になったらおしまい。何か他のこともやらないといけない」と。

 

お父さんは「それなりに上手くいっているのだから『キャベツでいいじゃないか』」と言い、その時はそれで終わったそうです。

 

その一方で、お母さんは着々と準備を進めていました。

 

農業の6次産業化するサポートをする「女性農業次世代リーダー育成塾」へ通い、東京へ行くようになりました。

 

 

その地域の農家としては珍しく、野菜をおしゃれに「ラッピング」することを始め、農園の新しいロゴもつくりました。

 

七菜海さんは、当時高校二年生でしたが、お母さんと一緒にデザインを考えるようになり、実際にロゴや袋のデザインが出来上がっていく様子をずっと見てきたそうです。

 

ケールが緑なので、赤が映えるだろうとケールには赤のリボンもついています。

 

そんな日々がしばらく続き、お母さんからニュースを聞くのです。

 

新宿の伊勢丹と銀座三越で大吉農園のケールを売ることになったと。

 

お母さんは、月一回東京へ通い、その度にケールを片手に、卸売り市場で営業をしていました。

 

同時に東京の大手百貨店におかせてもらえれば、信用が付き販路も広がるだろうと機会を探っていました。

 

 

大吉農園のケールはまず週に一回新宿の伊勢丹に置かせてもらい、連日完売が続いて常設的にケールが置かれるようになったのです。

 

そして、その実績が買われ、銀座三越、日本橋三越にも大吉農園のケールが広がりました。

 

大吉農園(だいきちのうえん)の取り組みは地元でも注目され、最初は反対したお父さんもいまでは全面的に協力しているそうです。

 

 

「実はその時、お母さんがあまりに頻繁に東京に通うから『アヤシイ』って思ってたんです。今だから言えるんですけどね(笑)」

 

 

そんな経験があって、大吉農園の野菜をもっと広げたい、人生経験を広げたいと考えてアークヒルズのマルシェで出店することになりました。

 

「2016年7月に出店して、初めて「完売」した時は感慨ひとしおでした。その時の経験は大きな自信になっています」と七菜海さんは言います。

 

そして、ケールがどうしたらもっと売れるようになるのかを自然に考えるようになりました。

 

「スーパーに行くと、それまでは気にならなかったポップが目に入るようになりました。

 

そして、どうしたら商品を手に取ってもらえるか、自分がどんな接客を受けると嬉しいかと考えるようになりました。」

 

 

ケール

 

ケール②

 

 

「お客さんと話しているときが一番楽しいです。人との出会いが学校ではできない貴重な体験だと思います。もっと自分の実力をつけていきたいです。」

 

寮でケール料理を友達にふるまっているという七菜海さんは、「一時間で5品も作れるようになったんです!」とケールパスタ、スープ、サラダにバーニャカウダの美味しそうな写真を見せてくれました。

 

ケールサラダ.jpg

 

「大学は先生の研究を一方的に聞くだけ。私は、このケールがどうしたらもっと売れるようになるのかをもっと学びたい」と七菜海さんは続けます。

 

きっと、これも多くの大学生や今の若者の声を代弁したものなのでしょう。

 

七菜海さんの話しを聞いていると、ビジネスとは最初から何か大きなことである必要もなく、意地はってやるようなことでもなく、起業か就職かの二者選択でもなく、

 

自分がいいと思うものをいいと言い、周りに伝え、表現し、提供する(販売する)ということは、日常生活の延長にある身近な行為で、簡単に楽しく気軽にやっていい時代なんだ、と感じます。

 

「このままではいけない」と感じ取った女性の「第六感」。

 

『ファースト・ペンギン』に反対はつきもの。

 

反対されても形にしていったお母さんの勇気が、ケールを通じて指宿と東京をつなぎ、女性に勇気を与えてくれているように感じます。

 

 

時代の変わり目では、これまでと同じことを同じようにやっているだけでは先は拓けない。

 

だから、自分で自分の道を切り開くしかない。

 

いいものを必要な人へ。

軽やかに楽しく。*^^

 

以下、大吉農園おすすめケールバニラシェイクレシピです。

 

ケール&バニラ&豆乳(お好みで)をシェイクします。

私はさらにパイナップルを加えてみました。

美味しかったです!(^^)ニコ

 

 

大吉農園

https://www.instagram.com/explore/tags/大吉農園/

http://www.thepicta.com/user/daikichifarm/3965071611

 

 

 

お問い合わせ先

大吉農園(だいきちのうえん)

鹿児島指宿市湯の浜6−3−21

daikichifarm@gmail.com

 

ホームページもないのにNHKから電話がかかってくるミラクル農家: 東京的里山資本主義

東京で新宿から35分圏内で専業農家をしているミラクル農家があります。

ホームページもブログもないのに、ある日、突然NHKの大河ドラマの担当者から電話がかかってきて「おたくの野菜は新鮮で野菜らしい野菜なので大河ドラマで使いたい」と言われ、農家さんなのにカウンセラーのようでもあり、働くママまで支える農家さんなのです。

確かに、大河(時代)ドラマで、スーパーで売っている形はいいけれども野性味のない野菜は使えない。

 

それにしてもすごい!と思ったのは、ホームページもブログもないのに、口コミだけで?評判がNHKに届き、しかも、地方にも農家は山ほどあるのに、新鮮で野菜らしい野菜としてテレビ映りがいいと思われたこと。

 

実際、見栄えがいいだけでなく、この清水さん(清水農家)は、日本の中でもフレンチのクオリティーがトップクラスに入る東京の国立(くにたち)から車で10分位なので、国立のフレンチレストランにも直接野菜を卸している、影で国立のフランス料理を支えている実力派の農家さんなのです。

 

さて、この清水さんがスタンドを始めたのは、10数年前。農協経由だとどうしても規格から外れてしまう大量の野菜を見る度に、形のいい野菜よりも野菜らしい野菜を作りたい、と思ったのがスタンドの始まりだったそうです。

 

最初は、自分が作った野菜を直接近所の人たちに届けられるのが嬉しくて、来てくれるお客さんにいつも家でやってる「野菜が美味しく食べられるおうちレシピ」を教えてあげたそうです。人に喜んでもらうのが好きだからいつもついつい「おまけ」をしちゃう。しかも、大量のおまけ。私もいつも両手で抱えきれない位の野菜をもらったものでした。

 

出来るだけ農薬は使わないポリシーだから、子供にいいものを食べさせたいママもわざわざやってくる。若いママが集まるようになるから、自然に子育て相談が始まることも。。。だから、清水さんの顔は時にカウンセラーのよう。

 

そして、なぜか、子供たちが学校の帰りにスタンドに立つ清水さんに挨拶をするのです。

共稼ぎの家庭が多い東京の郊外。

 

ママは子供に「帰る時には清水さんに一言でいいから『こんにちは』って言うのよ」と言い、清水さんは後で、仕事帰りに買い物によるママに「~ちゃん、何時に通ったわよ」、と一言「報告」をする。

 

これ、東京の郊外に自然に根付いた子供の見守りシステム。

都会的里山資本主義。

 

清水さんのスタンドはお花が飾られていて、いつも全国各地のお土産でいっぱい。「おまけ」のお返しに、お客さんが旅行先で買ってくるから。

 

2014年ベストセラーになって新書大賞を受賞した「里山資本主義」の副題は「日本経済は「安心の原理」で動く」。

 

JR中央線国立駅から車で、清水さんの畑に近づいてくると、空気が変わるのが分かります。都会にいるのにそこはとても落ち着いた平和な空間なのです。

 

農業と平和って一般的には別々の分野のものだと思われているけれども、清水さんのスタンドに来ると「農業平和賞」というものが存在してもいいなと思うのです。

ブルーベリー

里山資本主義④(了)