国連職員だった私がなぜコーチング・カウンセリングを始めたのか?

国連職員だったのになぜコーチング・カウンセリングを始めたのですか?と聞かれることが多いので、最近少しづつ文字にし始めてます。完璧に表現できていない部分もあるけれども、どうしたらより通じるのか、表現することで学んでいっています。

 

長年の紛争地での国連ミッションから日本に帰国して気づいたことがありました。それは日本人の共感能力の高さです。

 

もしかしたら、「当たり前」のように思われているかもしれませんが、これは世界的に見ても非常に稀有な能力です。

 

これからの時代、こうした「感じるとる能力」はますます求められていくと思います。

 

ただ、同時に、あまりに課題が大きいと感じる時、自分が思うように出来ないことに無力感を感じて、その感覚に圧倒されるばかりに「無感覚」になっている人も多いんじゃないか?とも感じました。

 

また、空気を読むばかりに、いつの間にか、自分の価値観よりも他人の価値観が優先になってしまって、でも内心は実は「怒っている」人も多いように感じました。

 

いかにもわかり易く、怒ったりする人もいますが、日本社会では、一見おとなくしくて礼儀正しいように見えても、例えば、朝の満員電車で、周りにぶつかって降りていくような人を見かけるように、黙ってはいても密かに「怒っている」人たちです。

 

遅刻したり、ミスをしたりといった形で怒りを表現すること(本人の自覚があるかないかは別にして)は、「受動攻撃」と言われますが、日本は「受動攻撃性」が強い方だそうです。

 

だとしたら、もしかしたら、私が南スーダンなどで見てきた紛争とは形は違えど、「根っこ」は一緒かもしれない。

 

私自身、帰国して気がついたら燃え尽き症候群になっていましたが、何のやる気も感じられず、働けなかった状態から、少しづつ気力を取り戻していくに従って、要らないものが「削げ落ちていった」のでしょう。

 

自分が自分を受け入れ始めていくにしたがって、外からの評価を求めるのではなく、自分がただ自分でいることによる安心感や自由を伝えたいと思い始めました。

 

自分が自分であること。

誰かと比べる必要もなく、ただ自分であること。

その安心感とエンパワーメントが広がっている世界。

 

そんな人が一人でも増えたら世界はもっと優しいところになると思う。

 

これが私がコーチングを始めた理由です。

 

コーチングについて・お申し込みはこちらから⇨大仲千華のコーチング

《体験談》プロジェクトと向き合う姿勢が変わりました

最近いただいた体験談を紹介しています。

 

⭐️この間の講座を受けてから、プロジェクトと向き合う姿勢が変わりました。千華さんのリーダーシップのあり方をお聞きできたことが大きいです。正式な役職に関係なく、関わる人たちの間を調整するのは、私の役割であるということに気が付きました。また、明らかになっていない課題に目をむけることを学び、手応えを感じています。

東京都在住 政府機関勤務、M.H.さん

 

 

⭐️職場で自主的な勉強会を立ち上げました。安全で安心できる医療を提供できるようにするためです。2か月しないうちに当初の予定よりも何倍もの人が参加してくれました。

チームとしての意識が上がると同時に、学ぶ楽しさを体験してもらっています。自ら考え、主体性に行動できることにもつながっていると思います。医療職の人達は程度の差はあれ、皆、人の役に立ちたいと思っている人達ばかりです。参加する人が優しさや思いやりを取り戻し、眼を輝かせているのを見るのはとても嬉しいです。

医療従事者にとって、こうしたセッションを定期的に受けることは、燃え尽きの予防になっていると感じます。

 

大阪府在住 医師  S.H.さん

 

⭐️千華さんとお会いしてからほんとうに物事の変わるスピードが早くなりました。
一回一回のセッションの後に起きる「気づき」の出来事もほんとに多くて、なんとなく分かっていたつもりのことが「腑」に落ちてきます。
自分が自分に向き合うことのできる時間と体験を大切にしていきたいです。
東京都在住 クリエーター・作家 A. K. さん

 

答えがないように見える時こそ、目の前の課題を整理することは、もともと自分の中にある答えや勇気、人間のや底力を呼び覚ます機会でもあります。

 

コーチングを終えた後には、「何をすればいいか分からない」という思考停止と行き詰まりの状態から、ああ!こうすればいいんだ!と光が見えるようになっていることが目標です。

 

こちらが一方的にアドバイスするというよりも、どんなことに悩んでおられて、どうしたいのかに耳を傾け、一緒に答えを探っていきます。

 

《大仲千華プロフィール》

国連職員として、ニューヨーク国連本部、スーダン、東ティモールなどで、元兵士の社会復帰支援などの平和支援に10年従事。多国籍チームのリーダーを務める。

2011年からは、米軍の専門家として国連の平和支援に参加するアジアの軍隊に派遣され、講師を務める。

帰国後、燃え尽き、PTSDとうつになり、何もやる気がしない・朝起きれない・働けなくなる。

心理学やスピリチュアリティーを学び始め、その過程で、科学と霊性の世界学会(ISSSEEM)にも招聘される世界的なティーチャーに出会う。自分の「弱さ」やシャドー受け入れ、統合していくことを学び、直感能力や洞察力、ヒーリング能力が飛躍的に開花する。

「自分の体験が他者への『贈り物』になる時、その傷は超越される」ことを日々体験中。オックスフォード大学大学院修了(社会人類学)。

 

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最後に。。。なぜ国連職員だった私がカウセリング・コーチングをしようと思ったのか?

私は長年の海外勤務から日本に帰って来て、気づいたことがあります。それは日本人の共感能力の高さです。当たり前のように思うかも知れませんが、これは世界的に見ても非常に稀有な能力です。

これからの時代、「感じるとる能力」はますます求められていくことでしょう。

 

同時に、そのせっかくの共感能力が、活かされていない、または、逆に「とりあえず周りに合わせればよい」という「迎合」になっているケースも多いように感じました。

また、本当はなんとかしたいと思っているのにもかかわらず、課題の大きさと複雑さにあまりに「圧倒されて」しまい、「無感覚」になっているのかも知れないとも感じました。

 

ただ、世界は日本の能力を必要としています。

 

技術、テクノロジー、ものづくりといった分野はもちろんのこと、求められているのは共感力やその精神です。

 

海外では自己主張しないといけないという誤解はまだまだ強いようですが、国連や紛争国といった場でさえ、求められていたことは、自己主張をするよりも、言葉を超えて相手が本当に求めていることは何かを全身を傾け理解することでした。

 

その精神でもって、日本はもっと世界の平和に貢献できると思うのです。

 

民族や宗教、意見の違いといったものを超えて、人と人をつなげることができる人を育てたい。

 

世界にはまだ争いが絶えません。ただ、そこにたった一人でもいいから、相手の言うことに相手に耳を傾けられる人がいたら?もう少し世界は住みやすい場所になると思うのです。

 

 

 

 

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オリンピックか予選敗退か?ー「力を弱める考え方」と 「力を強める考え方」

 

昨日は、「水の怪物」と呼ばれ金メダル23個という神業 (?!)を成し遂げたアメリカのフェルペス選手が、北京とロンドンオリンピックで圧勝した後に目標を失い、一時期は自殺も考えた時期から、どうやってその「逆境」を乗り越えることができたのかという彼のストーリーを紹介しました。

記事はこちら⇨フェルペス選手はどうやって逆境を乗り越えることができたのか?

 

 

高校野球を見ていても、一回戦で圧倒的な勝利を収めたチームが二回戦では気持ちが緩んだのか、同じチームとは思えない位ぼろ負けをすることがあります。

 

最初は、純粋に上手くなりたいと思い、練習し、挑戦することを楽しんでいた選手たちが、予選で上手くいったり、新記録を作ったりすると、期待に応えないといけないプレッシャー、または、プライドや誰かを打ち負かしたいなどの気持ちがむくむくと沸き起こってきて、彼らの調子を狂わせる。。。

スポーツではそんな様子をとても分かりやすく目の当たりにします。

では、そんな時に「人の力を弱める考え方」、または「人の力を強める考え方」とはどういうものなのでしょうか?

 

 

 

デンマーク王室から称号を授与されたデービッド・ホーキンス博士は、著書『パワーかフォースか』の中で、キネシオロジー(筋肉反射を利用したテスト)を使って、どんな考え方(意識のレベル)が私たちに力となるのか、をスポーツや芸術、政治などいろいろな分野で実験し、その結果を紹介してくれています。

 

 

例えば、実力のある選手に、相手を打ち負かすことや有名になること、たくさんのお金を稼ぐという願望を頭に思い描いてもらうと、その鍛えられた筋肉は、私たちが軽く押すだけでも下がってしまう位弱い反応をする、そうです。

 

では、「一番になること」はどうでしょうか?

 

「一番になること」という目標も弱い反応しかくれず、「一番になること」や相手を打ち負かすことは、ある時期には力になるようにな見えるものの、本当の力にはならず、必ず限界を迎えるそうです。

 

ゴルフチャンピオンのタイガーウッズは、対戦相手がパッドを打つ時にでも、「このボールが入りますように」と心の中で祈っている、と言われています。

 

彼は、自分自身のために、そういう意識のあり方の方が効果的だということを体験しているのでしょう。

 
では、逆に、力を与えてくれる考え方とはどういうものでしょうか?

 

 

愛する人に捧げること

自分が出来る限りのベストを尽くすこと

最高の努力をできる機会を持てることを喜ぶこと

チームを勝たせること

周りの人たちに希望や勇気を与えるため

 

 

等、だそうです。

 

今朝方、接戦の上で銅メダルを勝ち取った卓球女子チームは、まさに自分よりも「チームを勝たせる」というあり方が力になっていたように見えました。

 

 

オリンピックの決勝レベルになると、身体の大きさが圧倒的に有利になる一部の競技を除いて、身体能力の「差」はごく僅かで、身体能力や技術がある段階に達成すると、その先の能力を決めるのは「意識のレベル」だと言われています。

 

 

深海ダイバーとして世界一の記録を持ち、映画『グランブルー』で映画化されているフランス人のジャック・マイヨールという人がいますが、彼が潜っている時の意識というのは、瞑想をしている時と同じような意識の状態だそうです。

 

 

その瞑想のような意識の状態の中で、生理的な「変性状態」が起き、肉体の通常の限界を越えることが可能になる。。。

 

 

マイヨールの友人も彼と同じ深さに挑戦しますが、肉体の限界を超えるのに必要な意識のレベルに達していなかったために死んでしまいます。

 

 

マイヨールにとって、潜ることは、

個人的な記録への挑戦から、人類にとっての「未知の世界への挑戦」となり、

その目的は、「人間の潜在能力や偉大さを示すこと」になる。

 

 

ホーキンス博士は言います。

 

究極的に力をくれる考え方とは、

 

『自分の力は人間の能力を表す人類すべてのものである』というもの。

 

 

ちなみに、彼の映画を観ると、観る人は彼が潜水中に体験しているのと同じような変性状態になり、至福の状態で映画館を出てくるのだそうです。

 

 

武道の世界では、「動機」と「原理」が究極的に重要である、と言われています。

 

 

そういう意味では、私たちがスポーツ選手のプレーに感動し、讃えるのは、こうしたより高い原理に自らを捧げ、弱気になる自分も含め、個人的な欲望やエゴに打ち勝ったことを、彼らの内に直感的に感じ取るからなのかも知れませんね。

 

 

ビバ! Human Being!!!😊

 

金と銀の差を分けるものーフェルペス選手はどうやって逆境を乗り越えることができたのか?

連日リオデジャネイロ・オリンピックの接戦が繰り広げられていますね。

 

その中で、「水の怪物」と呼ばれているアメリカのフェルペス選手が、北京とロンドンオリンピックで圧勝した後に目標を失い、アルコール依存になったり、一時期は自殺を考えた時期から、どうやってその逆境を乗り越えることができたのかに興味をそそられました。

 

実際に彼は、北京オリンピックと、ロンドンオリンピックが終わった時点で、それぞれこう言ってます。

 

「北京のような練習をもう一度するなんて冗談じゃない。もう目標を達成したから、やるべき事なんてない。世の中にはもっと楽しいことがある。自分探しをしたい。」

 

2年ほど経ってから、ロンドン五輪を目指して再びプールに戻ってきたものの、目標は明確ではなく、練習への遅刻、無断欠席が続いたそうです。

 

「何もかもどうでも良かった」

 

「30歳になったら泳ぐのを絶対にやめるんだと自分に言い聞かせてきた。30歳の人を悪く言うわけではないけれど、それを自分にずっと言い聞かせてきた。あと3年後には30歳になる。だから、今後3年間を泳いでいきたいとは思わない。」とも言っています。

 

私たちがテレビで目にするのは華やかな舞台ですが、その影にはものすごい練習量があって、自分を支える新しい「目的」や「意味」を探しているようなニュアンスも伝わります。

 

そんな彼が、いったん目標を失った後、再び泳ぎ始めるきっかけとなったのは何だったのでしょうか?

 

フェルペス選手は、7歳の時に父親が家を出て行ってから、母子家庭で育ち、1つのことに集中できず、色々なものに注意がいってしまって落ち着きがないことからADHDと診断され、これを克服するために水泳を始めたと言われています。

 

そして、彼の才能を見抜いてくれたバウマンコーチとの運命的な出会いを経て、北京とロンドンで18個ものメダル獲得する偉業を達成。

 

ロンドンオリンピックの後には、バウマンコーチに「最高の水泳選手になることができたのは、ここまであなたと一緒にやってこれたからです。」と感謝の言葉を伝えます。

 

メディアにも「彼がしてくれたことがなければ、今僕はこの場になっていないでしょう。この15年間、クズみたいな僕にずっと我慢して面倒を見てくれた彼に心の底から感謝しているし、愛しています。文字とおり、感謝してもし尽くせません」と語っています。

 

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そんな彼ですが、ロンドンオリンピック後、アルコールとカジノに溺れ始めます。

 

「家族は母と姉2人で男は僕1人。北京、ロンドンというような節目に、これからどう生きていったらいいんだろう。そう思っても導いてくれる父親がいなかった。辛かった。」

 

家族の誇りであり続けなければならないプレッシャー。

相談する相手もいない。

またお金目当てで近づいてくる人たちにも疲れて、アルコール依存に陥った、と言われています。

(http://number.bunshun.jp/articles/-/826266より)

 

 

一時期は自殺を考えるほどになります。

 

日本ではあまり報道されていませんが、彼は米国のメディアで当時の心境を赤裸々に語っています。

 

“I was a train wreck. I was like a time bomb, waiting to go off. I had no self-esteem, no self worth. There were times where I didn’t want to be here. It was not good. I felt lost,” Phelps revealed.

 

「一時期は、自分がこの世の中からいなくなったらいいのに、とさえ思った。まったく自信をなくし、自分に価値があるとも思えなかった。」

 

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そして、一週間ほぼ何も食べず、ほとんど眠らず、自殺することを考える。。。

 

そんな時期、フェルペス選手の長年の友人で、NFLで活躍するレイルイス選手が、フェルペス選手にアルコールを断ち切るためのリハビリ施設に入ることを勧め、ある一冊の本を彼に手渡します。

 

その本とは、アメリカで発売後1年で1000万部を越え、現在では3000万部を超えるRick Warren著の、The Purpose Driven Life (邦題: 人生を導く5つの目的―自分らしく生きるための40章)でした。

 

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そして、フェルペス選手は、その二日後にリハビリ施設からルイス選手に電話をします。

 

“Man this book is crazy! The thing that’s going on…oh my gosh…my brain, I can’t thank you freaking enough, man. You saved my life,” Phelps told Lewis with excitement.

 

「この本はクレイジーだ!オーマイガッシュ。。。信じられない。君にはお礼を言っても言いきれない。君に救われたよ。」

 

 

別のインタビューでは、さらにこう答えています。

 

In a recent interview with ESPN Magazine, Phelps explained that the book “turned me into believing there is a power greater than myself and there is a purpose for me on this planet.”

 

「自分の力よりも大きな力が存在するってことを信じるようになったんだ。そして、この地球に生まれた目的があるってことを。」

 

Lewis

 

 

そして、彼はさらに、母親が離婚して以来ほとんど会ったことのなかった父親に会いに行くことを決めます。

 

“I didn’t want to have that ‘what if.’ I didn’t want to go through life without having the chance to share emotions I wanted to share with him. That’s what I missed as a kid,” Phelps said.

 

「僕の気持ちを伝える機会を一生逃したくないと思ったんだ。僕は子どもの頃から自分の父親に自分の気持ちや感情をシェアしたいってずっと思っていたから。」

 

 

そして、その3ヶ月後、彼は、長年のガールフレンドだったニコールにプロポーズをして籍を入れます。

 

そして、すぐに子どもに恵まれます。(ちなみに、子どもの名前のミドルネームにはコーチへの尊敬の念を示して、コーチの名前をつけています。)

 

愛する家族に自分のプレーを見せること、が彼の新しい原動力になり、3連覇、金メダル23個、という今回の「偉業」につながったのです。

 

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陸上やラグビ一など体が大きい方が圧倒的に有利な競技はありますが、オリンピックの決勝レベルになると、身体能力の差はごく僅かだと言われています。

 

高校野球を見ていても、一回戦で圧倒的な勝利を収めたチームが二回戦では気持ちが緩んだのか、同じチームとは思えない位ぼろ負けをすることがあります。

 

そんな時に人に「力」をくれる「考え方」とはどういうものなのでしょうか?

 

もし、身体能力にはそれほどまでの「差」がないのだとしたら、最終的に金メダルと銀メダルの「差」を決めるものは何なのでしょうか?

 

 

続く

これって燃え尽き? ①燃え尽き症候群の徴候って?

 

最近、私のところに燃え尽き症候群でカウンセリングに来られる方が増えています。

実際、この数年において、燃えつき症候群(バーンアウト症候群)になる人が増えているようですね。

これから、3回にわたって、燃え尽きの症候群の徴候や対策を一緒に考えていきたいと思います。

 

燃え尽き症候群になることは恥ずべきことでも珍しいことでもありません。そうした状況で役に立つことを自分自身の体験も含めてまとめてみました。

 

 

燃えつき症候群とは?

 

燃え尽き症候群 (Burnout Syndrome)とは、それまで何かに取り組んで来た人が、過度のストレスに晒されることにより、疲労感や無力感に襲われ、あたかも燃え尽きたかのように気力を失してしまう状態のことを言います。

より具体的には、朝起きられない、意欲が湧かない、イライラが募る、集中力できない、対人関係において引きこもりがちになるなどの兆候がみられます。病気に対する抵抗力も低下するなど、うつ病に至ることもあります。

「バーンアウトシンドローム」は精神心理学者のハーバート・フロイデンバーガーによって用いられた造語で、日本語では「燃え尽き症候群」と呼ばれています。燃え尽き症候群という概念が紹介された当初は、対象者は主に医療や教育、福祉関係者などの対人援助職に従事する人とされてきましたが、現在では、スポーツ選手、ビジネスマン、研究者、エンジニアなど、他のさまざまな職種や業種にも見られるとされています。

 

燃えつき症候群の徴候

燃え尽き症候群の特徴は、単なる肉体的な疲労だけでなく、文字通り「気力が枯渇したような消耗感」が伴うことで、「長期間、感情的な負担を必要とされる状況に関わることによって生じた身体的、情緒的、精神的な消耗感」とも表現されています。いわば、エネルギーが枯渇した状態です。

では、日常的にはどのような徴候が見られるでしょうか?

  • 仕事、職場、同僚に対する不満や批判が募る

ささいなことでイライラしたり、批判的になったり、怒りっぽくなる。今までなら、問題なく適応できたようなことに対応できなかったり、仕事、職場、同僚に対する不満を覚えたり、批判的になる。

  • 人間関係が億劫になり、引きこもりがちになる。

こちら側がエネルギーを消耗させている状態であるために、相手のために気を配ったりする余裕がを持てなくなり、人間関係が億劫になってしまい、人とのかかわりを避けるようになり、引きこもりがちになる。

  • 無関心・冷めている

今まで関心のあったことや今までの自分が打ち込んでいた現象に対して、無関心になる。

  • 先延ばしが多くなる

小さな作業が大きな作業のように感じられ、圧倒される(overwhelming)感じがするために、簡単なメールさえ返信ができなくなるなど、先延ばしが多くなる。

  • 集中できない・身が入らない

目の前にやるべき事が沢山あるのは頭で分かっているのに、身体が動かない、仕事に集中できない。ミスが多くなり、仕事の質が下がりがちになる。

  • 「行き詰まり」・停滞感を覚える

自己否定しがちになり、仕事に成果があったとしても、その成果を実感できなくなり、「行き詰まり感」を感じる。

  • ストレス性の身体症状

朝起きられない、寝ても疲労が抜けずに、全身の倦怠感を覚える。仕事に行きたくないと感じる。頭痛、肩こり、食欲不振、潰瘍などのストレス性胃腸障害がある。体重が減ったり、寝つきが悪い、眠りが浅いなど、睡眠障害等の症状が出ることもあります。

 

バーンアウトを起こしやすい要因としては、以下の点が挙げられます。

燃えつき症候群を引き起こしやすい要因(続く)

 

これって燃え尽き?② 燃え尽きを引き起こしやすい要因とは?

では、燃え尽きを起こしやすい要因としてはどういうものがあるのでしょうか?

 

燃えつき症候群を引き起こしやすい要因

バーンアウトを起こしやすい要因としては、以下の点が挙げられます。

 

①「どこまでやっても終わりがない」

燃え尽き症候群が多く見られる職種としては、従来から教師、医師、看護師、ソーシャルワーカーなどが挙げられてきました。こうした「対人援助職」の仕事の特徴の一つは、仕事に終わりがないこと、どれだけ仕事をやっても患者や症状など、いつでも状況が求める状況に終わりがないこと、同時にそうした状況に対して、必ずしも目に見える成果や「達成感」に繋がるとは限らないことです。

 

②「この状況をどうすることもできない」

人間とは、基本的には、自分で考え、自分の能力を使って目の前にある問題を解決したいと望む生き物です。

一方的に決められた方針に従わざるを得ないのか、決定事項はどのように伝えられるのか、それとも、意思決定になんらかの形で参加できるのかどうか、自分が関わっている仕事において、または、目の前の状況に対して、なんらかの形で自分が能動的に関わっているという感覚を持てるかどうかは、動機付けを影響する大きな要因になります。

また、与えられた状況に対して、自分が望むように対処できないと感じる時、人は無力感を感じることがあります。

 

③ サポートやコミュニティーの欠如

燃えつきを引き起こす要因となりやすいもう一つの要因は、職場におけるサポートやコミュニティーの崩壊です。どんな組織や人の集まりでされ、お互いがお互いに対して深い関わりを持っていくには意識的な努力が要ります。果たして、このチームは長いこと続くのだろうかと思ったり、また、時には、あるポストをめぐって、メンバー同士が競争しなければならない場合などはお互いのサポートが特に難しくなります。

また、組織の理念と現場との状況に大きなギャップがある時、または、現場で必要とされることと逆に見えるような決定が行われたりすること、時には自分の考えとは違う組織の方針について説明したり弁明することになったり、時には相容れない選択が求められる場面に周囲のサポートがないような状況です。

 

④ 「対人援助過労」(caregiver fatigue)

対人援助職に従事する人の中には、自分が人の役に立っていると感じられることに充実感を感じ、それをさらなる原動力とモーチベーションとするタイプの人たちも多くいます。自分のためだけには頑張れなくても、なんらかのチャレンジに置かれても、自分の目に前の人の状況のためになんとかしたいと思うことで、大きな力を発揮するような人たちです。

同時に、自分の目の前にいる人がなんらかの苦痛を抱えている状態に対して、自分が何もできないと感じたり、自分が思うように応えられていないと感じると大きなストレスを感じます。

そういう時には、自分に対して落胆したり、無力感を感じたり、無意識レベルにおいては、「自分は価値がない」とも感じがちです。そうした無力感を補うために、必要以上にワーカホリックになることもあります。

また、「彼らはもっと困っているのだから、自分の悩みはとるに足らない」、「彼らはこんなに苦労しているのだから、私もそうあるべきだ」と、自分のケアよりも相手のケアを優先し、自分を犠牲にしてまで周囲の要求に応えようとします。

また、誰かの役に立つことと、自分のアイデンティティーが同一化されてしまうと、「なんとかしたい」「自分がいなければならない」と思うあまりに、何らかの問題が起こると、自分のせいじゃないかと、さらにストレスを溜め込みます。

また、「あの時はもっとこうできたんじゃないか?」「自分は十分にできていないのではないか?」といった失敗感を抱える傾向も高いのです。

こうした現象は、カウンセラーやソーシャルワーカー、医療従事者などの対人援助職の間で、「対人援助過労」(caregiver fatigue)と呼ばれています。援助する側と援助される側との関係性において健全な境界線(boundary)を持てなくなると、仕事での役割と個人としての人格を別けることが困難になるのです。

こうした傾向は、ある面においては、その人たちが元々持つ共感能が高いからこそ起こりうる現象でもあると言えます。自分の中にある他者への共感や人を思いやる気持ちが高いからこそ、自分が思うように応えられない事に対して、必要以上に厳しくなることがあるからです。

 

では、燃え尽きのよい根源的な要因とは何でしょうか?

今すぐに出来ることは何でしょうか?

 

燃え尽き症候群③ 燃え尽き症候群の間違った対処法 vs. より効果的な対処法

 

 

これって燃え尽き?③ 燃え尽き症候群の間違った対処法 vs. より効果的な対処法

 

そのような状況が続いてくると、今の仕事は私にとってあまり意味がないのではないか?

報われないんじゃないかと感じ、今まで自分を支えていた仕事への情熱や自信、職業的な誇りが失われていくように感じます。

 

より根源的なレベルにおいては、燃え尽き症候群の要因は「意味の喪失」です。

 

人間とは「意味」を求める生き物であり、私たちは、日常で体験することになんらかの意味をみつけることで、日々の生活の中に秩序や安定を感じることができると思うからです。

例えば、人がストレスの大きい環境や仕事に置かれたとしても、耐えようと思うことができるのは、自分が置かれている状況になんらかの意義があると思える時です。

 

そうした「意義」には、一緒に働く同僚の人たちとの関係を築いたり、自分が関わっている仕事やコミュニティーの成果を実際に目にしたり、感じたり、価値を共有する仲間がいること、そうした人たちとのつながりを持つこと、そうした人たちのコミュニティーに属することも含まれることでしょう。

 

そうした意味において、自分が体験する状況にもはや意義を見出せなくなる時、私たちは文字通り目的や活力を失ってしまうのです。

 

燃え尽き症候群の間違った対処法 vs. より効果的な方向性

 

まず燃え尽き症候群になり始めた人は「まさか自分が」と自分がそのような状態であることを「否定」しがちです。

アルコールやなんらかの中毒的な習慣に陥ることも一時的には気を紛らわすことに役に立つように見えますが、根本的な解決にはなりません。

燃え尽き症候群になることは恥ずべきことでも珍しいことでもありません。そうした状況で役に立つことは、自分が体験している徴候に対してまず自覚を持ち、自分の時間をとり、セルフケアを優先させること、他者との健全な境界線を持つことを学ぶこと、自分がもうどうすることも出来ないと感じた出来事や体験を整理することです。

 

また、このように感じているのは一人じゃないんだ、こんな風に感じてもいいんだ、こんな経験をしてもおかしくないんだ、と感じたり、体験できるような機会や安全な場があることは、バーンアウトの予防や回復に役に立ちます。

 

自分はバーンアウトではないかと思ったら

 

今すぐに出来ること

 

  • 週に最低1日はメールやパソコンに向かわない日を設ける
  • パソコンの画面を見ながらランチを取らない(食事を味わい、休憩をとる)
  • 深夜や早朝などの時間外の業務に関して、「ノー」と言う。
  • 身体を動かす時間をつくる。(エクササイズは身体の緊張を解放します)
  • 紙に自分の体験や感じていることをなぐり書く(燃え尽きの無感覚の下には怒りがあることが多いので、怒りを解放させましょう)
  • 1日を振り返るための日記をつける(1日5分でもいいので、1日の最後に心を落ち着ける時間を持つ)
  • 自分の感情に意識を向けること。
  • 瞑想やマインドフルネスの練習など心を落ち着かせる時間を持つ。
  • 仕事とは関係ない人とおしゃべりをする。
  • セルフケアを優先すること。

 

バーンアウトから回復するために役に立つこと

  • 休むこと、自分のために使う時間を優先的に確保すること
  • 自分にバーンアウト症候群の兆候があることを受け入れること
  • 自分がいなくてもなんとかなることを受け入れること
  • 仕事と全く関係ない時間を持つこと
  • 自分に対する自己評価とプロジェクトの成果を区別すること
  • 自分が信用できると思う人に聴いてもらうこと
  • 自分の体験を吐き出し、感情的な整理をすること
  • 必要であればカウンセラーのサポートを求めること
  • 援助する側と援助される側との関係性において健全な境界線(boundary)を持つことを学ぶこと
  • 自分が出来なかったことではなく、出来たことに目を向けること
  • 人生の領域においてバランスを持つことに意識を向けること