東京で新宿から35分圏内で専業農家をしているミラクル農家があります。
ホームページもブログもないのに、ある日、突然NHKの大河ドラマの担当者から電話がかかってきて「おたくの野菜は新鮮で野菜らしい野菜なので大河ドラマで使いたい」と言われ、農家さんなのにカウンセラーのようでもあり、働くママまで支える農家さんなのです。
確かに、大河(時代)ドラマで、スーパーで売っている形はいいけれども野性味のない野菜は使えない。
それにしてもすごい!と思ったのは、ホームページもブログもないのに、口コミだけで?評判がNHKに届き、しかも、地方にも農家は山ほどあるのに、新鮮で野菜らしい野菜としてテレビ映りがいいと思われたこと。
実際、見栄えがいいだけでなく、この清水さん(清水農家)は、日本の中でもフレンチのクオリティーがトップクラスに入る東京の国立(くにたち)から車で10分位なので、国立のフレンチレストランにも直接野菜を卸している、影で国立のフランス料理を支えている実力派の農家さんなのです。
さて、この清水さんがスタンドを始めたのは、10数年前。農協経由だとどうしても規格から外れてしまう大量の野菜を見る度に、形のいい野菜よりも野菜らしい野菜を作りたい、と思ったのがスタンドの始まりだったそうです。
最初は、自分が作った野菜を直接近所の人たちに届けられるのが嬉しくて、来てくれるお客さんにいつも家でやってる「野菜が美味しく食べられるおうちレシピ」を教えてあげたそうです。人に喜んでもらうのが好きだからいつもついつい「おまけ」をしちゃう。しかも、大量のおまけ。私もいつも両手で抱えきれない位の野菜をもらったものでした。
出来るだけ農薬は使わないポリシーだから、子供にいいものを食べさせたいママもわざわざやってくる。若いママが集まるようになるから、自然に子育て相談が始まることも。。。だから、清水さんの顔は時にカウンセラーのよう。
そして、なぜか、子供たちが学校の帰りにスタンドに立つ清水さんに挨拶をするのです。
共稼ぎの家庭が多い東京の郊外。
ママは子供に「帰る時には清水さんに一言でいいから『こんにちは』って言うのよ」と言い、清水さんは後で、仕事帰りに買い物によるママに「~ちゃん、何時に通ったわよ」、と一言「報告」をする。
これ、東京の郊外に自然に根付いた子供の見守りシステム。
都会的里山資本主義。
清水さんのスタンドはお花が飾られていて、いつも全国各地のお土産でいっぱい。「おまけ」のお返しに、お客さんが旅行先で買ってくるから。
2014年ベストセラーになって新書大賞を受賞した「里山資本主義」の副題は「日本経済は「安心の原理」で動く」。
JR中央線国立駅から車で、清水さんの畑に近づいてくると、空気が変わるのが分かります。都会にいるのにそこはとても落ち着いた平和な空間なのです。
農業と平和って一般的には別々の分野のものだと思われているけれども、清水さんのスタンドに来ると「農業平和賞」というものが存在してもいいなと思うのです。
里山資本主義④(了)