この変化の早い不確実性の高いこれからの時代においてはもはや決まった正解はなく、正解のないような問いに対してどうやって考えるか・アプローチするかがますます問われるようになること、
そういう時代においては、一つの正解を求めるのではなく、
新しい解を導き出すための「考え方」(思考プロセス)を学ぶことがますます大切になるだろうとお伝えしました。
ではその考えるステップとはどういうものなのでしょうか?
例えば、オックスフォード大学のチュートリアルでは実際に何をどのように学ぶのでしょうか?
チュートリアルは、週に1回1時間程度、教授と学生が1対1もしくは1対2になって行われ、学生が、毎週与えられたテーマについて事前に調べ、そのテーマに対する回答を小論文として書いて臨みます。
チュートリアルでは、
そのテーマについてはすでにどういう事が言われていて(先行理論のレビュー)、
その点で大切だとされていることは何かをまとめ(論点の整理)、
課題の質問に答えることになります(議論の結論)。
1、これまでの論点をを理解し・整理し、結論を出す
毎週新しいテーマが与えられ、毎回新しい文献を読み、新しいテーマを理解し、整理し、言語化します。そのテーマに関する、それまでの何十年もの(何百年、何世紀もの)洞察の積み上げを、自分の言葉で表現していく作業です。小論文を通じ、これまでの研究では何がすでに明らかになっていて、何が重要なのか、まだどんな課題があるのか、について全体を構成し、結論を出します。
この作業を一年で、一学期8週間×3学期=計24回を繰り返します。
2、その結論にいたったプロセスを確認する
完成した小論文を教授に渡し、チュートリアルが始まります。教授に質問されたことは主に三点でした。
「それはどういう意味なのか?」
「そこをもう少し説明してくれる?」
「どうしてそういう結論になったのか?」
(私、もしくは、もう一人の学生に対して)
「どうして」「なぜ?」と質問されることによって、
または説明を求められることによって、
不明確なところは明確にし、
意見の根元にある前提を確認し、
その結論にいたったプロセスを確認しています。
3、洞察を深める
その上で、一つの意見を掘り下げ、洞察を深めていきます。
このテーマに関して言えば、今の時点ではこうだけど、この点に関してはまだ足りない、という認識の上で、「あなたはどう思う?」「こういう意見もあるけど、それ対してはどう思う?」と、自分の意見が求められ、時には、自分とは異なる意見に対する意見が求められます。
4、何が分かっていて何が分かっていないのか?
そのような質問をされると、自分の中で理解できている時には答えることができても、理解が足りない時には上手く言語化できなかったり、説得力のある答えができなかったものでした。こうした質問のやりとりによって、どこを分かっていてどこを分かっていないのかが明らかになっていきます。
5、理解を「積み上げる」
オックスフォードでのチュートリアルでは、ある問いに対する答えや解が一つでないこと自体は問題にされません。
むしろ、
解は一つとは限らないこと、
誰も一人では理解を深めることは出来ないという前提の上で、
お互いに意見を交わし、自分とは違う意見についても聞くことによって、自分はなぜその結論にいたったのか、という自分の思考プロセスを確認する、という作業が求められました。
⬆️ デービッド・パーキン学部長とクリスマスパーティーにてー授業がパブで行われたことも
理解や解はある日突然やってくる訳ではありません。「閃き」も、何千回、何万回もの地道な作業の延長にやってくると言われるように、この時の体験から「理解」とは「積み上げる」ものなんだと学んだように思います。
「考える」という作業にも「型」があり、
新しい解やオリジナルな解も「型」を経て到達すること、
一つ一つ成功体験を積み重ねていくこと、
そして、
多様な意見があってよいこと、
誰も一人では理解を深めることができないという前提は、
変化が激しく、不確実生の高い時代に生きる私たちに大きなヒントを示してくれているように思います。
(まとめ)
⭐️解はまったくゼロの状態から導き出すのではない。
⭐️ 新しい解やオリジナルな解にも「型」を経て到達する。
⭐️理解を積み上げる先に解がある。
⭐️解は一つとは限らない。
⭐️ 誰も一人では理解を深めることは出来ない。