小池都知事や日馬富士を暴走させた「シャドー」とは何か?

小池都知事や日馬富士を暴走させた「シャドー」とは何か?

 

人間なら誰しもが持つネガティブな感情やコンプレックスは、心理学では「シャドー」と呼ばれる。だが近年、そうした負の感情を否定し、ポジティブさだけが極端に評価される風潮が蔓延した結果、社会にはさまざまな歪みが生まれている。

 

突発的な怒りが原因の暴力事件や、政治家の暴言は後を絶たない。また、自分の負の感情を無視し続けると、人間は本来持っていた素晴らしい才能まで失い、無気力感に苛まれるようになるという。

では、我々はシャドーにどう立ち向かえばいいのだろうか?

 

なぜ「爆発する人」が増えているのか?

 

小池都知事の排除発言や、横綱日馬富士の暴行事件、市街地を50分間も車で暴走した愛媛県の会社員の事件など、最近「爆発してしまった人」のニュースが相次いでいます。

 

世界情勢も不安定な昨今、人間も社会もそれに影響されておかしくなっていると考える人もいるかもしれません。

 

確かにそういう面もあるかもしれませんが、私は人間や社会が突然変化したわけではなく、もともと持っていた「シャドー」や社会の闇が表面化しているのだと考えています。

 

シャドーは、心理学者カール・ユングが作り出した概念で、人間のネガティブな感情や、嫌なところ、隠したいと思っている部分を指します。個人レベルのシャドーもありますし、集合社会的なシャドーも存在します。

 

そして現代は、これまで隠蔽してきたシャドーが明らかにされる「透明化」(transparency)の流れが急速に進んでいます。

 

たとえば、パナマ文書やパラダイスペーパーによって、政治家や富裕層の課税逃れの実態が暴かれました。米国では、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインのセクハラ行為が暴露されたことによって#MeTooムーブメントが起こり、日本でも東芝の不正会計や、神戸鉄鋼、三菱マテリアルのデータ改ざんといった企業の不祥事が次々に発覚しています。

 

また、トランプ大統領の差別的な発言が、世界中で人種差別や国家の分裂を助長しています。彼の発言が、人々の意識に内在していた意識を浮きぼりにさせたのです。

 

孫子の兵法に、「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」という言葉があります。

 

「己」をシャドーに置き換えてみると、それは「私たちが理解していない、扱い方を知らない自分自身の衝動」ということになります。それを否認したり抑制したりしている限り、私たちは本当の敵(シャドー)に負け続けることになります。

 

実際、政治家や俳優など表舞台で活躍していた人が突然、本音や暴言を吐いて失脚する例は枚挙にいとまがありません。

 

小池都知事が自信満々な顔で「排除します」と言ってしまったのも、彼女の権力欲の「シャドー」が露呈してしまった結果でしょう。

 

関連記事:

Vol.17 なぜ「罰」だけでは暴力を止められないのか?「南スーダン内戦はかくして泥沼化した」|大仲千華 「答えを求めない勇気」

 

「ポジティブ」の大きな弊害

 

「シャドー」は、ふとした瞬間に見せるその人の隠された部分です。

職場では真面目だと思われていた経理担当者が横領したり、教師や警察官といった公的な職業に就いている人がわいせつ行為で捕まったりするニュースも後を絶ちません。身近な例で言えば、車の運転中に急に性格が変わる人はどこにでもいます。

 

人間は誰でも「ポジティブとネガティブ」「善と悪」の両面を持っています。

 

近年、心理学の分野では、ポジティブさの良い点ばかりを強調することの弊害が指摘されています。これを「ポジティビティー・バイアス」と言い、以下のような傾向が見られます。

 

●ネガティブなことに対する免疫力が低い。

●予想外の出来事への対処能力が低い。

●ネガティブはいけないことだと思い込んでいる。

●ネガティブな側面や感情を否定すると、ポジティブの感度も麻痺する。

●ネガティブな感情・側面が資源や才能になることを見逃している。

●ネガティブの存在価値を無視している。

●ポジティブとネガティブの両面あってこそ全体をなすという理解がない。

 

シャドーを抑制するだけでは意味がない

 

ただそうは言っても、私たちは「怒ってはいけない」「感情的になってはいけない」「いじめはいけない」と教えられるばかりで、自分のネガティブな面やシャドーに対する理解もなければ、適切な対処方法も習ったことがありません。

 

日本では、有名人の不倫や暴行事件のニュースが流れると、非難の論調でメディアが大きく騒ぎたてます。「ほらみろ、我慢してシャドーを抑えないとああなるぞ」という声が聞こえてくるようです。

 

けれども、闇の部分を一時的に抑えつけるだけでは、かえって問題の解決が難しくなります。なにより、人間なら誰もが持つものを否定し続けていては、社会はますます不寛容に、そして生きづらくなります。

 

「シャドー」に対しては、これまで次の3つの対処方法が用いられてきました。

 

まず、ひとつめは「批判」です。

 

人は、自分のネガティブな面に触れると非常に嫌な気持ちになるので、誰かを責めたり、批判したりしたくなります。

 

まるでお役所のポスターのように、「いじめをやめよう」「パワハラはいけない」「暴行は許せない」と言うのは簡単ですが、「いけない」というだけでそれがなくならないことは、誰もがわかっています。

 

誰かを批判すると一瞬は気分がよくなるのですが、実際にはかえってシャドーへの嫌悪感を「強化」してしまうのです。

 

2つ目は「避ける」です。

ある人を見ると理屈なくイライラしてとにかく嫌だということは、誰にでもあると思います。それは、身近な人かもしれないし、職場の人かもしれないし、もしかしたら芸能人やドラマの登場人物かも知れません。

 

そういう感情を抱くと、人間はその相手を避けようとするものですが、なぜか違う場所でも、似たような人に出会い同じような不愉快な体験をすることがあります。

 

これは決して珍しいことではなく、私がコーチングで出会う人のなかにも、このような経験を繰り返している人がいます。つまり、同じようなタイプに不快感を感じてしまうのは、自分自身に向き合う課題があることを意味しています。

 

ただ、それを避け続けるだけでは、根本的な解決にはならず、同じような状況が繰り返されてしまうのです。

 

Getty Images Shadow.jpg

 

いまの自分はシャドーの裏返し

 

3つ目は「正反対の自分を繕う」です。

 

私たちは内心、自分の否定的な考えや欲望、衝動の存在に気づいています。それと同時に、「『本当の自分』を知られたら嫌われるのではないか」という怖れも持っているので、無意識に必死で自分を抑えようとしています。

「人当たりのいい人」になる人もいれば、「冷静で頭のキレる人」になる人もいます。「がんばり屋」になる人もいれば、「優秀な完璧主義者」になる人もいます。しかしその仮面の下には、たいてい「正反対の自分」が隠れているのです。

 

たとえば、一生懸命に「いい人」を演じている人は、往々にして自分をわがままだと思っています。「冷静で頭のキレる人」は、自信がなくオドオドしている自分が嫌いです。「がんばり屋」は、自分はまだまだ努力不足だと悩んでいるし、「優秀な完璧主義者」は、完璧でないと愛されないと思い込んでいます。

 

こうした「正反対の自分」は、小さいころに叱られた経験などがきっかけで生まれます。人は否定的なメッセージを受け取ると、その部分を奥深くに隠してしまうのです。

 

シャドーを否定すると生きる気力や才能まで失う

 

自分のやりたいことがわからない、やる気がでない、冷めている、自分をもっと思いっきり表現したいのに小さく縮こまっている気がする……このような悩みの原因もたいていシャドーにあります。

 

なぜなら、人は本当の自分を無意識に抑制するとき、活力や才能、創造性なども一緒に抑えてしまっているからです。

 

その結果、仮面をかぶった自分をいつの間にか本当の自分だと信じ込み、自分の本当の気持ちも望みもわからなくなってしまうのです。すると視野も凝り固まってしまい、それ以外の見方ができなくなります。

 

世界が目まぐるしく変化する現代社会では、自分の感情やシャドーを抑えようとするだけで多大なエネルギーを消費しますから、才能を発揮するどころかエネルギー切れを起こして、行き詰まり、無気力になります。仮面をかぶった自分からは、本来の力は湧いてこないのです。

 

いまの日本に蔓延している無気力・無関心という病理にもシャドーが関与していると言えます。

 

組織や社会で「正しいこと」だけが強調され、ポジティブさだけを追い求めるように強要されると、人はかえって冷めてしまうからです。

 

表面的なポジティブの下には同程度のネガティブも存在することを認識すると、物事の全体像を理解し、自分の見方や感じ方にバランスを取り戻すことができます。

 

さらにシャドーの存在を自覚し光を当てれば、自分の一部となって、才能やひらめき、創造的なイノベーションとエネルギーをもたらしてくれます。才能には、鍛錬を積み開花するものと、「本当の自分でないもの」を削ぎ落とすことによって開いていくものがあるからです。

 

シャドーと向き合うことで、核兵器廃絶に貢献した女性

 

冷戦期に、核兵器廃絶のための国際的な対話を実現させた立役者としてノーベル平和賞に3度ノミネートされた、シーラ・エルワージーという平和活動家がいます。

 

エルワージーは、核問題を解決するためには、対立する大国や兵器製造企業の経営者、技術者など関係者すべてを集めた真の対話の場を作らなければならないと考えました。そして、その対話の成功は、シャドーに対する理解と「内的な力」がもたらしたと彼女は述べています。

 

では、対話を成功させるためにエルワージーはどんなことをしたのでしょうか? それについては、また次回の連載で書きたいと思います。

 

クーリエジャポン2017年12月9日掲載

 

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12/18(月)開催! 新しい時代を切り拓くためのほんとうの力ー「難しい」と思った時にどうしたらその先に進むことができるのか?

 

何かを考えたりしようとするとすぐに「難しい」「無理」という考えが一瞬にして自分の中をよぎります。

 

でもほとんの人が何がほんとうの問題なのか、どんな選択肢があるのか、課題や会話をその先に進めるための考え方を習っていません。

 

「思考停止状態」からその先に進むための考え方や力とは何でしょうか?

 

《日時》

2017年12月18日(月)19:00-21:00

 

《場所》

武蔵小山創業支援センター5階第2・3会議室

アクセス➡️ http://www.musashikoyama-sc.jp/access/

南北線・目黒線・三田線「武蔵小山」駅徒歩3分

 

《参加費》

1,000円(税込み)

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「内なる声に従っている人が一人いる方が、そうでない人を何百万人も集めたよりも大きな力になる」

 

この勉強会は、新しい時代をつくるリーダー育成事業の一環です。

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無関心や孤立、寛容性が下がる「社会的なトラウマ」 という現象ーその連鎖と国連関係者が学ぶ「どうしたら憎しみの連鎖を防げるのか」という理論

先日はトラウマとは単に「心の病」というよりは、「身体に残り外に出切れていないエネルギーである」とお伝えしました。

 

アメリカでは10人に一人がPTSDと言われるくらい、トラウマやPTSDが過剰に診断される状態があるとも指摘され、

 

すべてを「トラウマ化」する必要はない、と断っておいた上で、

 

トラウマと暴力の連鎖のメカニズムと、それを乗り越える過程を理論化したものして知られる

 

The Center for Justice and Peace-buildingの Strategies for Trauma Awareness and Resilience(STAR)より、トラウマが日常的にどういう風に現れるのかお伝えしたいと思います。

 

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⏫  The Center for Justice and Peace-building, Strategies for Trauma Awareness and Resilience: STAR)より

 

一般的にはこのような状態がみられます。

 

・判断能力が低下し、何かに対する事象を恐れとして認知しやすくなる。

・コミュニケーション能力が低下し、特に共感性が下がる

・柔軟性や寛容性が下がる

・直接何かが起こったわけでもない個人との関係において緊張や対立がおこる

・無関心や孤立

・自分の被害ばかりに目がいき、他者の視点で見ることができなくなる(歴史、係争、関係性)

 

さらに、そのエネルギーが内に向けられるか(acting-in)、または外に向けられるのか(acting-out)?に分けられます。

 

内に向けられた場合には、以下のような症状が見られます。

 

内に向けられた場合:

・依存 (インターネット、薬物、買い物、セックスなど)

・過食症・拒食症

・仕事中毒

・自傷行為

・うつ

・不安

・頭痛や身体の緊張など・慢性的な痛み

・病気(身体的症状)

・自殺

 

外に向けられた場合には、以下のような症状が見られます。

 

外に向けられた場合:

・ドメスティックバイオレンス(DV)

・虐待

・犯罪行為

・リスクを犯したがる

・攻撃的な行為

・暴力行為

・戦争

 

社会的・集合レベルでは次のようなトラウマのサインを見ることができます。

 

・無関心(国の政策や政治や社会に対する無関心)

・黙る(表現の自由の抑圧、真実が語られなくなる)

・共感や寛容性のうすれ

・二元論(ゼロか100か、こちら側かあちら側か)

・ 人との繋がりが希薄になり信用できなくなる

・環境の悪化

・性の軽視や売春の増加

・薬剤の使用量の増加

 

 

トラウマはそれに苦しんでいる当事者が自分で心の痛みを癒し、その体験を完了させなければ、さまざまな 形で次の世代や社会に引き継がれると言われています。

 

最近は、トラウマと暴力の連鎖だけでなく、それを乗り越える過程も理論化されています。

 

これは、9.11をきっかけに始まった「どうしたら憎しみの連鎖を防げるのか」という研究から生まれまし た。

 

今では、「Strategies for Trauma Awareness and Resilience: STARプログラム」として知られ、私も国連の研修の一環で参加したことがありますが、米政府や国連関係者、アフガニスタ ンやイラク従事者をはじめ、ドイツ、ケニア、レバノンなど世界60ヵ国から参加者が集まるプログラムとして知られています。

 

STARは、米国で起きた1995年のオクラホマシティ連邦政府爆破事件の被害者が「和解」へ向かっていた 過程などを理論化し、紛争を根本から解決するには、個人が心の傷やトラウマの体験を癒すことが重要だとしています。

 

STARに理論によると、寛容性の低下や排他主義といった排除型の暴力も、トラウマと暴力の連鎖の一つだと説明することもできます。

 

報復の「連鎖」を根本的に解決するためにも、こうした連鎖のメカニズムとそれを断ち切るのは何か?と理解することは役に立つと思います。

 

STARの理論では以下のステップが説明されています。

 

STAR 和解.001

 

(#1)身の安全

(#2)なげく・自分のストーリーを話す

(#3)Why me? ⇒ Why them?なぜ私?からなぜ相手?への視点

(#4)相手の「ストーリー」を理解する

(#5)ストーリーが書き換わる

(#6)ゆるし

(#7)正義(restorative justice)

(#7)和解

 

こちらについてはまた説明したいと思います。

 

個人的なトラウマやPTSD(援助従事者による二次受傷、セカンダリートラウマも含む)の回復プロセスについてはこちらで説明しています。

 

トラウマとまで言わなくても、人生では自分の思うようにならない時もあれば、理不尽なことも起こります。一人ではどうしたらいいのか分からなくなることもあるでしょう。

 

そんな波の中にいる時にどうしたいいのか?

 

少しでもそんなヒントになるように、トラウマやPTSDの回復理論やレジリエンスに関する研究と私自身の燃え尽き症候群やPTSDからの回復体験を質問形式にしてまとめました。

 

ここで挙げている質問は、リラックスして、まずは眺めてみて、思い浮かぶことをありのままに観察してみるというアプローチをオススメします。

 

質問を読んでもに何も思いつかなくても、ふとした瞬間に何か思い浮かぶ事もあるでしょう。

 

自分が前に進んだからこそ、意味を持ってくる質問もあるので、ぜひ定期的に眺めてみて下さいね。

 

ダウンロード・登録⭕️こちら⭕️よりどうぞ 

 

 

目次

あ、今の自分の状態について把握する

い.自分の「ストレス反応」を知る

う.今気になっていることについて観察する

え.喪失 (後悔、自責、サバイバーズギルト)に気づく

お.自己像、自己肯定感、自己受容度に気づく

か.自分の中の「不安」を意識化・言語化する

き.自分のコーピングスタイルを知る

く.自分と相手との優先順位(境界線)と当事者レベルを知る

け.自分のストーリー(解釈・認知)に気づく

こ.回復のストーリーをみつける

さ.試練の中の「意味」について知る

し.再結合・新しい自己の創造

す.回復・再生のためのステップ 

せ.トラウマからの回復・再生のプロセスで体験しうること

そ.トラウマからの回復の三段階

 

ダウンロードは⭕️こちら⭕️よりどうぞ 

 

 

海外へ行く人必見!ー 安全を創る非言語ランゲージの力

例えば、国連の平和維持活動でも自身の身の安全を守ることやこちらの影響力を強めることに対して数々の対策や研修が行なわれていますが、その内の考え方の一つに、Presence, Posture, Profile (3Ps)いうものがあります。

こちらが言語として相手側に伝えているのはあくまでも一部であり、非言語領域でも全ての面で相手にどんなメッセージを送っているのかを認識し、より効果的なメッセージを送ろうという考え方です。

Presence=現地住民との関係構築などを通じて積極的に組織の存在を示すこと

Posture=姿勢や態度など非言語ランゲージを通じて組織のコミットメントと確固たる意図を示すこと

Profile=地域住民との関係や日常的な態度や行動を通じてポジティブな影響を及ぼすこと

 

例えば、備品の置き方、車の駐車の仕方、現地の人とのコミュニケーションをする時のボディ-ランゲージなどです。

確かに、私が南スーダンの現場にいた時、治安の維持のために派遣されたいろいろな国の軍に接してきましたが、素人ながらそれぞれの軍の士気や強さが想像できたものです。

特に、こちら側が思っているイメージ、または、こちらが伝えたい印象と現地の人が受けとっている印象の間にギャップ?があることがあります。例えば、このような質問が役に立ちます。

 

◯ スタッフメンバーは普段どこに行くことが多いですか?普段誰と多く接していますか?ど 

う見られていますか?
◯ 組織のスタッフはどういう風に見られていますか? 

◯ 組織の活動はどういう風に見られていますか?
◯ 組織全体としてどんな「印象」を伝えていますか? 

◯ それは現地の人にどのように伝わっていますか? 

◯ 現地の人たちは何と言っていますか?
◯ 現地のリーダーや州政府は何と言っていますか? 

◯ こちらが伝えたい印象と現地の人が受けとっている印象の間にギャップがありますか? 

◯ どんな「印象」を今後より積極的に伝えていきたいですか? 

 

特に最後の質問、どんな「印象」を今後より積極的に伝えていきたいのか?ーこの点はとても大切です。

そこ本当に危険?危険を判断する3つの視点①ー④(了)

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海外へ行く人必見!安全を創る3つの視点③

ここまでは、リスクは、脅威のレベルを適切に認識し、脆弱性(vulnerability)に対して働きかけることができるという考え方を紹介しました。

ただ、こちらは脅威に対して、こちら側の脆弱性に対して対応するという受身的な対策しかできないのでしょうか?

次には、脅威のレベルを適切に認識し、それに対する脆弱性(vulnerability)を下げると同時に、どうしたら相手の動機に働きかけることができるか?

 

別の言い方をすると、③ こちらは相手にどう働きかけることができるのかという視点を見ていきたいと思います。

 

リスクは脆弱性(vulnerability)を下げ、また相手の動機に影響力を及ぼすことによって、予防の割合をより高くすることができます。それをここでは、「仲裁的予防」と呼びます。

仲裁的予防とは、相手の関心やニーズ、心配事を含め何が相手のインセンティブになるかを全体的に捉え、能動的に働きかける考え方です。 そのための視点は以下の5つの点です。

◯ ポジション (Position)⇒ 彼らの公式な見解・ポジションは何か?

◯ 心配事 (Concern)⇒ 彼らの心配事は何か?

◯  ニーズ (Needs)⇒ 彼らのより深いレベルにおけるニーズは何か?

◯  動機 (Motivation)⇒ 相手にとっては何がインセンティブになるか?

◯  圧力 (Pressure/Disincentives)⇒ 相手にとっては何が圧力になるか?

 

これらをまとめると、脅威は脅威のレベルを適切に認識し、それに対する脆弱性(vulnerability)を下げ、相手の動機に働きかけることにより、積極的に紛争を予防することができる、ということができます。

 

ここまでをまとめると以下のようになります。

 

ある状況が本当に危険なのか?を判断するためには、

① 相手の意図や動機、目的は何なのか?を理解すること (脅威)

②こちらが相手にどう見られているのか(脆弱性)

③ こちらは相手にどう働きかけることができるのか (影響力)

の三点です。

特に、自分が思っているイメージ、または、こちらが伝えたい印象と現地の人が受けとっている印象の間にギャップ?があることがあります。例えば、このような質問が役に立ちます。(続)

ベルリン3

海外に行きたいのに親に反対されたら(南スーダン編)

先日、これから南スーダンへ行くという若い方にお会いしました。首都ジュバにあるユネスコ事務所でインターンをするためだそうです。せっかくのチャンスを得たのはいいけれども「治安面での不安があります」とおしゃっていました。

 

確かにそうですよね。

私も一番はじめの赴任地東ティモールへ赴任した時の治安面での不安は大きかったのをよく覚えています。

 

では、その南スーダンですが、国連要員の一番の死亡原因はずばり何でしょう?

 

夜9時以降は外に出ない(現時点での国連の南スーダンの治安対策による)

無線の使い方をしっかり覚える(現地に着いたら配られます)

無線の点呼に参加する(治安レベルによって行なわれます)

など、まず現時点での国連の南スーダンの治安対策に従うことは必須条件です。

 

その上で、何が国連要員の死亡原因となるのでしょうか?

 

南スーダン(UNMIS)における国連要員の死亡原因

 

① 病気 41件(68.3%)

② 事故 11件(18.3 %)

③   分類不明4件(6.65%)

④   悪行(malicious act)4件(6.65%)

合計60件(2005-2011年の間)

 

国連本部PKO局ウェブサイトより

http://www.un.org/en/peacekeeping/resources/statistics/fatalities.shtml

 

①   病気

病気の原因の多くはマラリアです。病院施設が限られていること、インフラの不備で輸送手段が限られるため、状態がひどくなった時に搬送まで時間がかかる(場合によってはヘリコプターを使う)ことが理由として挙げられます。

実際には、現地でのストレスレベルが日常的に高いことが認識されないまま、毎日「ついがんばってしまう」こと、積み重なったストレスが免疫レベルを下げてしまうこと、マラリアだと気づかないこと、マラリアくらい大丈夫だと思ってしまうこと、があるようです。実際、母国では実戦を経てきた頑強そうな人たちが病気で命を失くす例が私の周りでもありました。

その病気ですが、統計を改めて確認すると、2006年という始めの国連が首都を越えて地方に展開し始めた一年目で13件と一番多く起きていることが分かり、その後輸送やオフィスの整備が進むにあたり2010年では3件と数が大きく減っています。つまり、輸送手段や医療整備の整備とそのまま関連している事が分かります。

② 交通事故

二番目の原因は交通事故です。PKOの場合は、軍事オブザーバーなどパトロールを行なう時に自分で車を運転する必要のある職種が多々あるのですが、多くの国・場所で交通事故が大きな死亡原因としてあがります。自分の国ではない「解放感」、政府機能が崩壊している国ということで気が緩んでしまう、ストレスが高くなる環境で運転でストレス解消しようとすること、他に娯楽がない環境で仕事中毒になる、などが原因として挙げられます。

すると、直接的原因は6.65%ということになります。この数字を大きいとみるのか小さいとみるかはその国の情勢にもよるので一概には言えませんが、この6.65%の出来事が組織的なものなのか、突発的なものなのかという点でこの数字の評価はさらに変わります。

つまり、南スーダンのような紛争に近い最前線の勤務地・国であっても、93.35%以上は、直接的な行為ではない原因だということです。

 

アフリカ

南スーダン

内戦が再発

民族間の衝突

 

確かにそれだけで「危そう」に聞こえるし、不安が「漠然」と膨らみそうです。

知らないことが多い時には漠然と不安が大きくなるものですよね。

 

ただ、全然で紛争予防や治安維持をする人たちの間でさえ、一番の死亡原因は病気と交通事故だということです。

 

何が本当に気をつけるべきことなのかーそれがはっきりすると不安はずいぶんと和らぐと思います。

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米軍の安全対策を海外進出する企業に応用すると?

安全対策(情勢分析)でのリスク分析のフレームワーク(考え方)の一つを紹介しました。

リスクレベルを、脅威(threat)× 脆弱性(vulnerability)と捉える考え方です。

例えば、外務省発行の安全対策ブックレットにも、その社会での「脅威」について知りましょう、とあってもどう脅威を判断し評価すればいいのかは書いてありません。

この考え方は、ありうる脅威を把握すると同時にこちらの安全面での弱い部分=脆弱性(vulnerability)を下げること =予防出来る面を増やすことでリスクを下げることができるというものでした。

今回はリスクを単に軽減するという視点だけでなく、先を見越してより積極的に安全に投資をするこという視点を取り上げたいと思います。

リスクレベル= 脅威(threat)× 脆弱性(vulnerability)× 強み(strengths)です。

例えば、米軍や国連の平和維持活動でも自身の身の安全を守ることに対して数々の対策や研修が行なわれていますが、

その内の考え方の一つにPosture(姿勢) & Perception(どう見られているのか)というものがあります。

 

こちらが言語として相手側に伝えているのはあくまでも一部であり、非言語領域でも全ての面で相手にどんなメッセージを送っているのかを認識し、より効果的なメッセージを送ろうという考え方です。例えば、備品の置き方、車の駐車の仕方、現地の人とのコミュニケーションをする時のボディ-ランゲージなどです。

確かに、私が南スーダンの現場にいた時、治安の維持のために派遣されたいろいろな国の軍に接してきましたが、素人ながらそれぞれの軍の士気や強さが想像できたものです。

 

「この軍ジョギングしてるけどなんか士気がなさそう。。。いざという時大丈夫だろうか?」

「そごいこの軍!きびきびしてる!この軍なら安心した。」

 

さて、これを企業の文脈に応用すると、どうなるでしょうか?

◯ 駐在員の方は普段現地の方にどう見られていますか?どんな現地との接点がありますか?どこに行くことが多いですか?

◯ 駐在員のご家族はどんな現地社会との接点がありますか?

◯ 会社や精神やサービス自体はどういう風に見られていますか?

◯ 本社(日本)や日本の動向はどんな影響を与えていますか?

◯ ホームページやプレスリリースはどんなメッセージを発信していますか?

◯ それは現地の人に伝わっていますか?

◯ こちらが伝えたいメッセージと現地の人が受けとっているメッセージの間にどんなギャップがありますか?

◯ 現地のメディアや政府や商工会議所からはどんな風に伝えられていますか?

◯ どんなメッセージを今後より積極的に送っていきたいですか?

◯ どんな方法がありますか?

◯ どんなアクションをとりますか?

 

まとめると、

1、より積極的に安全に投資をする。

2、今後どんなメッセージをより積極的に送っていきたいかを確認する。

3、Posture(姿勢) & Perception(どう見られているのか)という非言語領域にも意識を向ける。

4、ホームページやプレスリリースなどが発信しているメッセージを見直す。

5、駐在員本人だけでなく、家族や出張者も会社の代表・広告塔であるという意識を全員が持つ。

 

 

Sri Lanka Triangle 128

海外に行きたいのに親に反対されたら(1)

海外に行きたいとあなたが言い始める時、何パーセント位の親が賛成し反対するでしょうか?

一人旅をしたい、海外に留学したい、海外で働きたい、アフリカに行きたい。。。自分がやりたいことを実現する、しかもそれに海外に行くことが含まれると誰もが通らないといけない「関門」に親の反対に直面する、または親を説得するということがあるようです。

正式な統計がある訳ではありませんが、周りの人たちを見ていても、最初から親が全て手放しで賛成したというケースはほとんどないようです。

結果的に8カ国計12年の海外勤務・生活を送り、国連では南スーダンでも勤務した私ですが、一番初めに留学したいと言った時は母に反対され、大学一年生の時にはじめてタイに旅行に行った時には、1週間に一回電話をするという条件でオッケーされ、帰国の日には私を迎えに成田空港に来る程でした。(バックパック旅行の話しです。。。(汗))

さて、一番初めに留学したいと言った時の理由は「治安が心配だから」という答えでした。

「治安」ー 確かに親にとっては最大の心配だろうけど、高校二年生にとって諦めるにはあまりにも漠然としすぎてリアルな説得力がない「治安」という理由。。。

「じゃあ、もし安全だったらいいの?

同じクラスのミエは9月からアメリカに留学するんだよー。

アメリカじゃなくてニュージーランドとかオーストラリアならいいの?

AFSの交換留学プログラムは安全なんだってー。」

 

身近に短期留学に行った友達がいたこと、高校自体に交換留学プログラムがあってそれにも応募したけど落ちた事、例をたくさん出して話していく内に段々と、安全な先でサポート体制がしっかりしているところを探すというのが条件となりました。

 

資料請求をし、書類を揃え、担任の先生にも推薦書の作成をお願いしました。

そして、試験の日が来て、面接にも行き、合格通知が届きます。

そんな既成事実をどんどん作っていったらもう親も反対しづらいのでしょう。

晴れて、私は高校二年生の1月から1年間ニュージーランドの高校に交換留学しました。

 

国連では南スーダンでも勤務した私ですが、高校2年生でニュージーランドに留学をするのを決めた時が一番勇気がいったような気がします。行き先というよりも、当時インターネットもEメールもなくて海外に行くことの意味がもっと大きかった時代、日本人がいない日本語もまったく通じない環境へ飛び込むと決めた一歩の「一歩」は文字通り大きかったのだと思います。

 

さて、念願の留学もかない、大学に入学して一番はじめの夏休みに旅行をしていろんな国を自分の目で見たいと思った時、次の「反対」の「関門」は以外とすぐにやってきました。

(海外に行きたいのに親に反対されたら ②に続く)

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