同じ一人の女性としてそこにいて欲しいの
ある日、私はバングラデシュ人の友人に連れられ、12人ほどのバングラデシュの女性達と一緒に座っていました。これから彼女達と一緒にあるテーマについてグループでシェアをする会に参加するためでした。
さて、そこで話されることになっていたテーマとは?
ーそれはセックスについてでした。
「あの・・・私セックスの専門家でもないし、
あの・・・その・・・そんな自信を持って人にシェアできるような体験があるようにも思えないんですけど。。。(モジモジ)」
すっかり小さくなりかかっていた私の肩を押すように友人は言った。
「Chikaいいの。私はあなたに同じ一人の女性としてその場にいて欲しいの。」
人間として当たり前の営みでありながら、途上国で、特にイスラム圏で母から娘に正しい知識が伝えられ、語られる機会はほとんどない。それが故に、正しい知識がないばかりに、簡単に防げるはずの感染症になったり、セックスがトラウマのような体験になっている女性が多いということを友人から聞いていた。
だからこそ、安全な知識を身につけるために女性同士でシェアできる会を持ちたいというのが友人の意図だった。
バングラデシュという男尊女卑が非常に強い社会において、それがどれだけ勇気のあることかを少しは理解していた私は、彼女の勇気を応援したいという気持ちで参加することになったのでした。
友人と目の前の女性たちはしばらくお互いの近況報告を交わしてから、さっそく本題に入っていきました。
「最近、悩んでいることなどシェアしたい人はいますか?(友人)
一人の女性が手をあげました。
「感染症になっているので性行為がとても苦痛です。」(女性)
「どれくらい感染症は続いているのですか?」(友人)
「もう何年もです。まだ小さい子供がいるのでミルク代をまかなうために生理用品は買えません。」(女性)
隣にいた友人は、一人一人のシェアを丁寧に聞き、受け止めながら、かつ、冷静に、身近なものを使い出来るだけ衛生的に保つ方法を彼女に丁寧に伝えていた。
そして、そのことについて旦那さんとできるだけコミュニケーションを持ちましょうと伝えていた。
こんなやりとりが何人も続いた。
ここで紹介できるのはほんの一部だけれども、私はただただその話しを聞きながら思った。
この目の前の彼女たちが男尊女卑の社会の中で生きることは毎日どれだけ勇気を要することなんだろう!!!
そして、そのバングラデシュの友人と一緒にダッカの博物館に行った時のことを思い出しました。
博物館を出る時に彼女に「トイレ行かないの?」と聞いた時のことです。ここで行っておかないと、今度はいつ行けるか分からないから位の軽い意味でした。
「わたしは大丈夫。 バングラデシュの女性は8時間くらいトイレに行かなくても大丈夫なように訓練されているのよ」
???
その意味がよく分からずにポカンとしている私に向かって彼女は優しく教えてくれたのです。
「ほら、バングラデシュではね、トイレがあまり整備されていないでしょ。 だからね、例えばバスに乗って地方に行く時などは、水もなるべく飲まないようにするの。」
!!!
知らなかった!
しかも、これは、その数週間前に、出張で3週間もバングラデシュに滞在した後の出来事だったのです。トレーニング中だったから、私の関心は紛争解決や平和維持に向けられていたとはいえ、しかも、バングラデシュ軍のPKO訓練センターでは女性トイレの数は限られていたけれども、(その場で女性は私を含めたったの二人だったのだけれども)女性トイレは存在していたからです!
ああ!すごいショック。。。。。
まがりなりにも国連で働き、この分野に少しは知っていると思っていたけど、
「知っていると思っている」事と「知っている」事とはこんなにも違う。。。
同じ景色を見ていたとしても、同じ国にいても、同じ人から同じ話しを聞きているようでも、簡単に見えることがあり、意識を払って見ようとしないと見えない事が本当に沢山ある。。。
私は紛争をしていた国や旧独裁政権の国などいろいろな国で働いてきたけれども、自分で言うのもなんだけれどもかなり繊細な心の持ち主。けっして強いタイプじゃない。
正直、見たくないことも聞きたくないことも山ほどあった。
でも、毎回とはけっして言えないけれども、なぜかその中になんというか、私の心の奥深い部分が満たされるような、極限の中で生まれる人間の知恵、勇気や強さに触れるような瞬間があった。
このバングラデシュの友人もその一人だった。私はそんな体験をさせてもらった事に対して彼女に感謝をした。
そして、南スーダンの女性のことを思い出したのです。
世界でもっとも争いの根が深いとされ、ほぼ40年間紛争が続けられていた南スーダン。
紛争が起きている状況で、最も厳しい状況におかれるのは女性と子供だと言われます。
南スーダンの女性たちにとって、銃よりも彼女たちと子供たちの命を奪ったものがありました。
産婦死亡率です。南スーダンでは、病院やなんらかのサポートを経て出産できる女性は1割にも満たず、9割をも超える女性たちはともかくどんな状況であってもなんとか自力で子供を産まざるをえない状況であり、そもそも栄養状態がよくない為、産婦死亡率は世界の一で、7人に1人は出産時に命を落とすと言われていました。紛争が続く中で、南スーダンの女性にとって文字通り命がけだったのは、出産だったのです。
そんな苦労の中で文字通り命がけで出産し、育てあげた子供たち。
南スーダンには320万丁もの銃が流通していると言われています。人口4人に1人が銃を持っている計算になります。
時に自分の息子が争いに巻き込まれ、または、家族や自分の身を守るために、または洗脳され、簡単に銃を手にしていきます。
彼らのほとんどは普通の男の子たちです。彼らが特に残酷だからではありません。日本だったら口論で終わることでさえ、銃がある環境であるがばかりに時に村同士の抗争になり、時に「部族間紛争」になり、時に「民族間紛争」になっていくのです。
南スーダンの女性たちが日々直面している困難はあまりにも大きいと言わざるをえません。
こんな状況はもう我慢できない!!!
南スーダンの女性は立ち上がり、こう言ったのです。
私たちは息子を人殺しマシーンにするために産んだんじゃない!!!
こんな争いばかり続けるならもう子供は産まない!
南スーダンの女性は、セックスをボイコットすることを宣言しました。
そしてこうも言ったのです。
「全てのにんげんは女性から生まれる。
私たちはもうこの子たちに互いを殺しあうようなことはさせたくない。
私たちにはこの子たちに争いをさせないように育てる責任がある。」
イスラエルペレス大統領がオバマ大統領から、「何が中東の民主主義と和平を妨げているのですか?」と質問され『争い合う男どもです』と答えたそうです。
また、アラブの女性たちとユダヤの女性たちが対話をすれば和平が実現するだろうとも言われています。
南スーダンでは紛争中でも女性はおしゃれを諦めませんでした。紛争が終わってから首都に真っ先にオープンした店の一つは美容院とネイルサロンでした。女性たちは直観的にどちらの方が楽しいかを知っているのだと感じます。
「女性のリーダーが増えれば戦争や不祥事は減るだろう」
世界13ヵ国で行われた調査で、65%の人が「女性のリーダーが増えれば戦争や不祥事は減るだろう」と回答しています。フランス、ドイツ、ブラジル、インド、韓国、中国、日本などで行われたこの調査では、経済危機後の世界がリーダーに求める資質としてあげられたのは、信頼や謙虚、寛容、共感、柔軟性など、どちらかと言うと女性的だと言われてきた特徴が圧倒的に上位に上げられたのです。そこで浮かび上がっているのは、感傷的ではなく賢明で静かな強さがある、プライドや権力よりも全体の理念に集中できるといったリーダー像です。
同じ調査ですが、「男性がもっと女性のような発想をしたら、世界は好ましい方向に変わるだろう」という アンケートに対して、66パーセントの男性がイエスと回答し、日本では79%、 フランスとブラジルでは76%、ドイツでは70%の男性がイエスと答えています。
ユナイテッド航空など世界的企業のブランディングに関わってきたジョン・ガーズマという消費者行動の専門家の人が経済危機後の消費者行動の変化から導き出した「女神的リーダーシップ」(原文 The Athena Doctrine)は、ニョーヨークタイムズのベストセラーになっていたのでした。
経済危機後の世界がリーダーに求める特徴はつながり、共感、寛容 ①
そう!私が現場での体験を通じて直感的に感じてきたことを裏付けるものでした!
今こそ、世界が求めるリーダー像は、プライドや権力よりも全体の理念に集中でき る賢明で芯の強さを持つリーダー。
だとしたら、賢明で静かな強さをたたえている日本の女性の力こそ今こそ世界に求められているものではないか?
紛争のような大きな問題を目にすればするほど、私たちは何か大きなことをしないといけないと思いがちです。
ただ、バングラデシュの友人が私に教えてくれたのは「同じ女性としてそこに一緒にいて欲しい」ということ。
特別なことや大きなことをやる必要もない。
私たちがその国の人の友達になること、時に一緒にいることーそれ自体、私たちが思ってる以上にすごい価値なんじゃないか?
バングラデシュの友人は私に大切なことを教えてくれたように思いました。
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民族や宗教の違いを超えて人を繋げるリーダーを育てること、
特に、仲裁や対話の力のよる争いの解決の方法について伝えること、
日本の女性の力を世界のために役に立てること、
日本と世界がお互いに学び合い、お互いの力を世界の課題の解決のために役にてること、
若い人たちの才能を育み、伸ばし、表現していくことをお手伝いすること(キャリアコーチング)
こうした活動を行っています。
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