無理にこちらが話そうとして相手にとって面白いのかわからない話題を続けるよりも、
質問をして相手に話してもらった方がいい、と言いました。
そして、
会話を広げる質問として、「対話的な質問」というのを挙げました。
では、何を「対話」と言うのでしょうか?
対話の特徴の一つはその前提とそのアプローチにあります。
私自身、南スーダンで元反政府軍の人たちと関係を築いていく中で、非常に役に立っていたと感じた「対話的な質問」がありました。
例えば、彼らが怒りだす時、彼らの真意がなかなか掴むめない時、表面的には同意しているようでも、何かがお互いの間で理解されていないように感じた時などです。
「今、あなたが仰った事はとても大切だと感じました。あなたが仰ったことを理解したいと思っているのですが、よかったら、どうしてそのように考えるようになったのか教えていただけませんか?」と、聞き続けたことです。
別の言い方をすると、次のような意図の質問をすることです。
◎ どのような考えでその結論にいたったのですか?
◎ そうおっしゃるのにはどんな理由があるからですか?
◎ その考えの背景にはどんな事実や体験があるのですか?
これはどういうことを意図した質問かというと、
相手はなぜそう考えるのかということを理解する質問です。
その意味とは、
人が何かいう時、自分の意見や感想をいう時、
「人にはなぜそう考えるのかというそれぞれの体験や背景がある」という前提に立つことです。
その意見そのものとは同意できないし、相容れないように思っても、
人はなぜそう考えるのかというそれぞれの体験や背景は理解できるという考え方です。
そのためには聴くことにもっと意識的になることが必要です。
自らの意見を正当化し、議論に「勝つ」ためではなく、
自分とは違う意見や異なる視点を理解するために聞くこと。
相手の考えを主観的なものだと決めつけるのはなく、
相手がどのような体験を経て、
そのような考えを持つように至ったのかを理解するために聞くこと。
相手が間違っていると証明するためではなく、自分の理解を広げるために聞くこと。
相手に反論するためではなく、お互いの共通の理解を得るために聞くこと。
自分の推測に基づいて聞くのではなく、
新しい理解や可能性にオープンになるために聞くこと。
議論も対話も両方が必要なものですが、
お互いの理解や洞察が深まったり、新しい見方ができるようになったり、
参加者が納得するような同意が生まれる時には、
なんらかの形で対話的な要素が起こっていると言えます。
その上で、
一時的に自分の考えを保留し、人それぞれに持っている意見や価値観の背景、理由を探求し、共有できる新しい考え方を共に探っていくこと。
対話の力は、
変化の早いこれからの時代、
新しい発想や創造性を生み出す場づくりのスキルとして、
課題解決のスキル等として、
主体性を引き出す新しいリーダーシップのスキルとして、
多国籍なチームや全く違う考えを持つ人たちと会話を広げ合意を得ていくために、
対立や紛争解決(conflict resolution)の手段として、
これからますます大きな力となることでしょう。