誰と誰が争っていて何が原因なのか?
最近の世界情勢をみていると、なんだか紛争やテロが多いようだけれども、ニュースでも「ホームグランドテロ」という言葉は聞いても、断片的な情報ばかり。
民族が違うと人は争うのか?
いったい何が原因なのか?
私たちは何を知ったらいいのか?
本質的なことを知りたいと思っている人はけっこういるんじゃないか?
大学の講義での反応などを見るととても強く感じます。
そんなことを自分の体験を含めてただ今、執筆作業を進めていますが、その中から今日紹介したいのは、
このような世界情勢の中、
なんらかの危険が実際にあるのかどうか、
何に目を配り、意識を向け、
どう判断したらいいのか?
ということに対する視点です。
実際、私が南スーダンで働いていたと言うと、よく危ない目にあったことはありますか?怖くないですか?と聞かれます。
もちろん、日本に比べれば直接的な被害に巻き込まれるという可能性だけでなく、医療施設の有無から病気にかかる可能性まで「リスク」レベルは格段に上がります。
例えば、南スーダンで働いていた時には、万が一人質にとられた時のための訓練を受けましたし(アフガニスタン、南スーダンやソマリアなどに派遣される人は現地に赴任してから受けることが義務付けられています。国連だけでなくNGOの人もこうした研修を受ける体制がとられています)、
東ティモールでは銃が発砲された場面で近距離に居合わせたこと、また、南スーダンでは兵士に直接銃を突きつけられたことが一回だけありますが、相手はお金をせびってきた兵士だったと判断できたので落ち着いて対処できました。
私たちは知らないことに対して必要以上に「不安」を覚えます。いわゆる「未知の恐れ」と呼ばれるものです。
まず、現状を確認をすることから始めたいと思います。
さて、質問です。
私がいた南スーダンを例にとります。南スーダンの場合の国連要員の死亡原因と割合はいったい何だったと思いますか?
① 病気 68%
② 事故 18 %
③ 分類不明 6.65%
④ 直接的原因 6.65%
(UNMIS 南スーダン国連PKO 2010年度の場合)
病気の原因の多くはマラリアです。病院施設が限られていること、インフラの不備で輸送手段が限られるため、状態がひどくなった時に搬送まで時間がかかる(場合によってはヘリコプターを使う)ことが理由として挙げられます。
実際、現地でのストレスレベルが日常的に高いことが認識されないまま、毎日「がんばってしまう」こと、積み重なったストレスが免疫レベルを下げてしまうこと、マラリアくらい大丈夫だと思ってしまうこと、マラリアだと気づかないこと、があります。実際、母国では実戦を経てきた頑強そうな軍人たちがマラリアで命を失くしたケースが私の周りでもありました。
二番目の原因は、交通事故です。PKOの場合は、軍事オブザーバーや文民を含め、日常的に視察やパトロールのために自分で車を運転する必要のある職種が多々ありますが、交通事故は大きな死亡原因の一つです。
南スーダン(独立前)の場合、直接的原因での死亡は6.65%ということになります。そうした出来事が組織的なものなのか、突発的なものなのかという点で「脅威」の認識は大きく変わりますが、まず、アフリカで一番長い内戦をしてきた南スーダンでされ、国連要員の人たちの一番の死亡原因が93.35%紛争ではない、と事実を確認したいと思います。
その上で、
なんらかの危険が実際にあるのかどうか、
何に目を配り、意識を向け、
どう判断したらいいのか?
という視点です。
その中から、例えば、リスク分析や脅威分析と呼ばれるものを、紛争地での情勢の分析に応用し、
安全面でのリスクレベルを脅威(threat)× 脆弱性(vulnerability)と捉える考え方を見ていきます。