Tokyoオリンピック誘致プレゼンに見る世界を動かすコミュニケーション(2)

東京オリンピック誘致チームは東京をどう世界にプレゼンしたのか?東京オリンピック誘致のコンサルタントチームのコメントを見ていくことで、世界を動かすコミュニケーションのコツが見えてきます。

2016年の時にTokyoの魅力を上手く伝えられなかったという反省から、Tokyoの強みとストーリーを再定義することから準備が始まったことを前回紹介しました。

ではプレゼンの練習で重要だったことは?プレゼンコーチ、Martin Newmanさん(キャメロン首相やプーチン大統領のコーチもつとめた人です)が、誘致プレゼンにとって一番大事だったことを講演で伝えてくれました。

(3)どんな印象を残したいのかを決める

人は言葉の7パーセントしか覚えていない。だから、大切なのはどんな印象を残したいかを決めること。当時のTokyoの印象は、安全だけどつならなそう。。。

「まず、東京チームは自分たちの残したい印象を『Shining』(輝いていること)に決めた。その精神は発表者全員によく浸透して、練習が上手くいかない時や迷った時には、Shiningしてるかを基準にして互いに助けあっていた。情熱を伝えることをとにかく重視した。猪瀬知事は英語が苦手で日本語でやってもいいと言ってあったんだけど、自分も輝いていることが大事だって言って一生懸命英語のスピーチを練習していたよ。」

(4)表現力を高める

「太田選手には『銀座のパレードには50万人もの人が集まりました』の感動が本当に伝わるまでそれこそ何百回も練習してもらった。佐藤選手のスピーチは感動的だったので、それが伝わるように彼女には間をとることを意識してもらった。」

(5)頭とハートを繋げる

「画像を通じてTokyoのワカモノの躍動感を伝えることを意図したように、舞台でも佐藤選手、太田選手や滝川クリステルさんといった若い才能ある人達に思いっきり彼らの魅力を表現してもらうことを心がけたよ。

こうして『安全だけどつまらなそうな東京』は『安全かつエキサイティングで行ってみたい東京』になって、IOC委員の頭とハートの両方を勝ち取ることができたと思うよ。」

なるほど。どんな印象を残したいのか?を先に決めておく。それに従ってどんな言葉回しがいいかを決めていくー。私たちはかっこいい言葉使いを考えることに時間を使ってしまいがちですが、メラニアンの法則が教えてくれているように人は言葉の7%しか覚えていないのですよね(笑)。とすると、自分が伝えようとしている内容と一環したエネルギーを放っているのか?その一点に尽きるというわけですね。納得です。

最後の言葉も印象的でした。「『日本には出る杭は打たれる」というフレーズがあるらしいけど、今回発表してくれた若い人達が見せてくれた。思いっきり出てしまえばいい。そしたら金メダルだよ!」

Tokyoオリンピック誘致プレゼンに見る世界を動かすコミュニケーション(1)

東京誘致チームはTokyoをどうプレゼンしたのか?東京オリンピック誘致のコンサルタントチームのコメントを見ていくことで、世界を動かすコミュニケーションのコツが見えてきます。

2013年5月の段階ではIOC委員は、イスラム圏(イスタンブール)での初のオリンピック開催という歴史をつくるのに名を残す方が魅力的だと感じていた。さてTokyoチームが練った作戦とは?!

(1)東京の強み、キーメッセージを再確認すること

日本が世界からどう見られていて、オーディエンスにとって何が魅力的なのか?日本が世界に与えられる価値は何か?を認識していること。

誘致チームコンサルタント、ニックバレリー氏はこう言っています。「2016年の時はトーキョーは国際都市Tokyoとしての魅力を十分に伝えられなかった。関係者は都市の機能も予算も世界一なのになんで落選??と落ち込んだと思う。当時足りなかったのはまずストーリー性だった。だから、私たちが始めに取り組んだのは、Tokyoの強みを中心にキーメッセージとストーリーを再定義することだった。」

「世界の経済大国と言えばアメリカと日本。それ自体大きな強みなのに2016年のプレゼンでは十分に伝えられなかった。日本で当たり前のことが世界では当たり前じゃないって認識することは大切だ。」

「それで安全なTokyoを全面に出すことにしたけど、『安全そうだけどなんかつまらなそう』という印象が拭いきれてなかったんだ。イスタンブールの『東西の架け橋』はエキゾチックな響きがあるからね。それに匹敵するくらいのインパクトが日本にも求められていたから、アジア唯一の候補地だったことを利点にして、欧米とは違う『エキゾチックさ』と『若さ』を全面に出すことにしたんだ。だから、画像では若者の躍動感を伝えることを意識したよ。」

(2)人間的なストーリーがあること

「それに情熱的な人間のストーリーがあることも重要だよ。佐藤選手は自身の癌と津波の経験から立ち直っていくという体験を持っていたのだけど、スポーツには周りの人達に勇気や希望を与える力があるというより大きなストーリーに繋げることで多くの共感を得たんだ。」

ただ、それだけじゃだめなんだ。一番大事なことは。。。

世界からどう見られていて何が日本の強みなのか、日本が世界に与えられる価値は何か? ー 個人から国のレベルまでそんな視点がますます必要になってくるようです 。(Tokyoオリンピック誘致プレゼンに見る世界を動かすコミュニケーション(2)に続く)