私はいい音楽に触れると、文(書きたいこと)が浮かぶことがあります。
今回、初めて食べ物を口にしてそのような感覚を受けました。
ウェルカムプレートを口にした瞬間、身体が振動するように、インスピレーションがおきたのです。
ミシュラン三ツ星、ピエール・ガニェールさんでの体験でした。
「こんな料理をつくる人はどんな人だろう?」
「どうしたらこんな料理が生まれるんだろう?」
「このインスピレーションはいったいなんと表現したらいいんだろう?」
そんな心地よい感動を覚えながら、私の中からいろいろな質問が湧き出るほどでした。
「このままではどうしても帰れない!」と思い、お願いしてシェフの方にお話しを聞かせていただくことができました。
毎日新しい料理を生み出すコツとは何でしょうか?
音楽家や料理人、執筆家など「クリエーティビティー」の過程には、なにか共通点があるのでしょうか?
そんな質問を探求する前に、さて、その前に一緒に料理を堪能したいと思います。
ANAインターコンチネンタルホテル赤坂 最上階。
サントリーホールがあるカラヤン広場の隣に位置しています。
フロアーには明るい日差しが差込み、レストランの入り口には、ピエール・ガニェールの写真があります。

彼が笑顔で「ようこそ」と迎えてくれているようです。
スタッフの方が入り口の「大きな扉」が開けてくださいます。
文字通り大きな扉なので、「この先にはどんな世界があるんだろう?」と、ワクワク感が刺激されます。
うす紫を基調にしたエレガントなインテリア。
それなのにどこか「遊び心」を感じるところが新鮮でした。





ウェルカムプレート
前菜
メイン
デザート
最後のプレート
ドリンク
素敵なステッフの方々がサーブしてくださり、どれも美味しく、堪能させていただきました!
さて、身もココロもすっかり満たされて、落ち着いたところでシェフ赤坂洋介氏がやってきてくださいました。
世界の中でもピエール・ガニェールの冠のついたレストランは数えるほどしかない中で、ピエール・ガニェールから絶対の信頼を受ける一人。

(写真) ピエール・ガニェール東京さんより
正直、思ったよりも若くてびっくりしました。
が、彼がいったん口を開くと、ミシュランの星を持つシェフの世界とはこういうものか、とすぐに彼の話しにに引き込まれていくのがわかります。
毎シーズンごとにメニューを一新するので、彼は、常に何百ものメニューを考え、試食し、創作するそうです。
一年で何百という数のレシピを生みだしながら、
旬の素材を選びに全国を訪れるという赤坂シェフ。
その中でも特に面白いと思ったのは、赤坂氏の素材の選び方です。
彼は素材を選ぶ時にどこを見ているのか?
まず先に見て回るのは、周囲の環境です。
農場の周りにはどんな景色が広がるのか?
どんな空気なのか?
牛・豚・鳥はどんな空気を吸い、どんな環境に囲まれて過ごしているのか?
そして、素材選びで次にすることは、
どんな思いで鳥を育てているのか?という農家さんの「想い」を聞くことです。
おそらく、ここが一番大切な点で、試食をするのは「最後の最後」なのです。
試食をする段階というのは、「確認する」作業に近いのかも知れません。
そして、料理をする時になによりも一番先に考えることは、メニューでも素材でもなく、「お客さんにどんな体験をして欲しいのかを決めること」。
「楽しんで欲しい。そう思って決めています。」
料理人の腕や素材の良さはあっても、原点は「楽しんでもらいたい」
一見シンプルに聞こえますが、そのために自分の持つ全てを出すかける一流に仕事人の気概も感じました。
同時に、私は何か「それ以上」のものを料理から感じていました。
それが私の中で共鳴を引き起こし、何かを訴えかけてくるので、私はそれが何かをどうしても「掴みたい」と思ったのです。
「たった一皿でも前のシーズンと同じものを出すことはないんですか?」
私は質問の角度をちょっと変えて、もう少し粘ってみました。
「ありません。」
彼はきっぱりと答えました。
「僕も進化し続けているので、自分が生み出すものは毎回変わります。
その時に自分が出せる最高のものを出したいと思っています。」
「料理人には突き詰めることを得意とする人もいます。でも、僕は新しいものを創り出すのが好きなタイプです。
1日たりとも前日と全く同じ料理を出したことはありません」(❗️)
そして、さっき私がいただいたばかりの一品を挙げて、ここが今日新しく「創作」したところです、と教えてくれました。
毎シーズン、新メニューを決めるまで何十回も何百回も試食を重ねるそうです。
それだけでも大変な「仕事」だろうと想像するのに、
彼はなんと毎日少しでも違うものを出していると言うのです!
それを聞いたときに、私は自分が知りたかったことの答えをいただいたと思いました。
「革新的」、「斬新」「芸術的」といった形容詞がつくピエール・ガニェールの世界。
「革新的」「斬新」「芸術的」といったものはひらめきや特別な才能によって生み出されると思いがちですが、実は、そうした小さな毎日の「積み重ね」から生まれるのですね。
一日一日の「新しいポイント」は小さい部分かも知れないけれども、彼らは毎日その「一ミリ」でも自分が日々進化することを怠らないのです。
すごく「当たり前」のように聞こえるかも知れませんが、「創作活動」・「クリエーティビティー」は基礎やしっかりとした土台の上に築かれるという創造性の本質を改めて教えてもらったように思いました。
私自身も執筆にしろ日々の仕事にしろ、日々進化していきたい、改めてそう思ったのでした。
ピエール・ガニェール
また行きたいです!
