オックスフォードでは、チュートリアルといって教授と生徒が一対一で学ぶ制度を通じて、一年間の学びが進められていく、というお話しをしました。しかも、一年間で一度も答えが示されなかったともお伝えしました。
オックスフォードの学生はこのチュートリアルで何を学んでいるのでしょうか?
どんな能力や資質を体得しているのでしょうか?
オックスフォードのチュートリアルで学ぶポイント、それは私たちにどう関係するのか、そして、日常的にどう活かすことができるのかを解説していきたいと思います。
このチュートリアルが鍛えてくれる能力の一つは、分からなくても進むという能力です。
チュートリアルでは、学生は、事前に大量の文献を読み、そのテーマについてどんなことが言われていて、何が大切だとされているかについてまとめ、小論文という形でまとめ、課題の質問に答えます。
文献の量は、1週間で20冊~50冊位の量に及びます。
オックスフォードでは、この作業を一年で、一学期8週間×3学期=計24回を繰り返します。
それだけ聞くと、さすが頭がいい人は読むのが早いんだろう、そんなにできるんだ、と思われるかも知れません。
ここでのポイントは、そうではありません。
ここで習うこととは、まず「あたりをつける」ということです。
結論はこうだろう、とまず自分なりの「あたり」をつけて(仮説をたてて)、読み始めるのです。
脳は意識が向けられている情報に向かっていくと言われています。
なので、自分の結論をバックアップする情報が目に入りやすくなります。
または、それをサポートしない情報も目に入りやすくなります。
そして、次の本を手にとって、目次を読んで、あたりをつけてそのページから開きます。
そして、仮説があっているのか、それを証明するためにどこを引用するのか、または、どこをもっと調べないといけないのかwp見つけていきます。
そこで書かれていることを目にしたら、そこで書かれていることが完全にわからなくても、次の本を手に取ります。
次の本でも、同じことが言われているのか、または違うことが言われているのかを確認します。
同じことが言われていたら、それは大事なポイントですでにある程度の合意があること、もし、違うことが言われているのを発見したら、どこがどう違うのか?と見つけていきます。
そして同じことを繰り返して、自分が言おうとしていること(仮説)が合っているかどうかを検証していくのです。
私がオックスフォードに入学したばかりの頃は、1冊目の本にかなり時間をかけていました。
そして、提出まで残り2日しかないのに一文字もかけてない、しかも、何が結論なのかさっぱり検討もつかない!
読んでもわからないのは自分だけなんじゃないか?と、
途方にくれて泣きたくなることが沢山ありました。
ただ、そんな作業を毎週続けてようやく分かりました。
単純にそれでは間に合わないのです。
できないと落ち込むのではなく、やり方を変える必要があったのです。
そして、完璧に理解したから書き始めるのではなく、まず分かっているところからかじょ書きで書いてみるのです。
たったの一文字でもいいから紙に書いてみると、すごく進んだ気がします。
やってみたら分かりますが、たった一行でもたった一文字でも、まったくの「ゼロ」の状態とは違います。
できるとことから進めるのです。
結論が完璧に分からなくても、わからなくても、「あたり」でいいからどんどんパラパラと本のページを開いていくのです。