2017年から「新しい流れ」が始まるようです。
新しい時代においては、自分の強みや才能を知っていることがより重要になってきますが、その中でも、これまではあまり「強み」として捉えられてこなかったような特性がより重宝されていくように思います。
その一つは「感受性」です。
このシリーズでは、「感受性の高い」人の強みとチャレンジ、そして、そういうタイプの人が自分の特性を強みとして活かすために知っておくべきポイントをお伝えしていきます。
私のところにセッションに来られる方の中には、「感受性」が強く、エネルギー的に繊細 (sensitive)なタイプの方が多くいらっしゃいます。
ここで言う「繊細な」という意味は、その人の「構造」というか「つくり」というか、特性が繊細であるという意味であって、「ナイーブ」であるとも「弱い」という意味とも違います。
別の言い方をすると、感じ取る能力が高い人、共感能力の高い人たちです。
「繊細」とだけを聞くと、「競争社会」の基準からすると「弱み」のように聞こえるかも知れませんが、これからの時代、「感受性が高い」ということは「大きな武器」となっていくことでしょう。
では、「感受性」が高いことの「強み」とは例えばどういうものでしょうか?
例えば、相手が伝える1の情報から、その何十倍もの情報を読み取る能力です。または、より大きな全体像をつかむ能力です。
これは、「洞察力」(insight)と呼ばれます。
例えば、この人は、言葉ではこう言っているけど、その人の本心はいったい何なんだろう?または、「このミーティングで部長はこう言っているけど、どうも他の人たちはしらけてるなあ。みんなの本心はいったい何なんだろう?
今、会議で起きていることやこの組織全体で起きていることは何だろう?」といったより深層の部分が「分かる」能力です。
これは、人と関わる仕事、交渉や仲裁、ファシリテーション、リーダーシップといった分野で大きな力になります。
または、一つのニュースからより大きな流れを読む能力です。
例えば、私にとっても紛争地の現場でこの力が大きな助けとなりました。
例えば、南スーダンのような紛争地では、この先数ヶ月、政情がどうなるのか分からないというような環境に置かれます。
そのような環境の中で、国連のスタッフは、いろんな人に会って情報収集をし、分析を加え、あり得るシナリオなどを考えながら、それぞれの場合どう対処したらいいかを決定していきます。
私は、そういう地で仕事をする人として、いろいろな人に会って生の情報(感覚)を得て、この先の流れを掴んでおくことは、決定的に大事なことだと本能的に感じていたので、できるだけそういう時間を意識的にとっていました。
なので、新しいニュースがあったり、政情的に何かが起こっても、「ああ、これはこれ以上『大事』にはならないな」とか「今回はちょっとヤバい」とか、ある程度流れが読めたり、予測がついたりしました。
私にとってはあまりに自然にやっていたことだったのですが、
えっ?!、みんな気づいてないの?!!!
と逆にびっくりしたこともあって、「ああ、これは知らせなきゃいけない」じゃないけど、正式な職務の一部であるかどうかは関係なく、分析レポートを書いて重宝されたこともありました。
そして、私の分析が全体像を掴んでいた、先を見越していた、ということが実際にありました。
同じ街にいながら、同じ国にいながら、同じ人に会いながら、同じ情報を耳にしながら、その人が導き出す結論や分析はまったく人それそれでした。
断片的な情報から、全体像を「掴んでいく」能力はまさに大きな才能なのです。
こういう場合の「分かる」能力は、ロジカルシンキング的に一生懸命考えてたどり着く結論というよりは、感覚的に「わかる」という種類のものです。
私の場合、この能力が、今ではどう発揮されているかと言うと、例えば、カウンセラーとしてある方の相談内容について聴いている時に、その方が言わんとしていることの全体像や課題の根っこの部分が「パッと」把握できる能力です。
もちろん、いくつか質問をして、課題を探ったり、それを確認してきますが、その能力は高い方だと思います。
また、いくつかのニュースの断片を合わせていって、大きな流れやより大きな全体像をつかめることです。
私はクーリエジャポンという媒体で連載記事を持っていますが、2016年8月3日付けの記事 Vol.3 大仲千華「答えを求めない勇気」で英国のEU離脱について書いたことが、今回の米国大統領選挙にもそのまま「当てはまる」ので自分でも少しびっくりしました。
Beautiful landscape
また、「感受性が高い」ということは、「エネルギーを伝達できる能力」にも繋がるので、スピーチや文章を書くなどなんらかの表現をする人にとって大きな力になります。
その人が感動したことについて伝えようと思うと、その感動のエネルギーが文章なりを通じて相手に伝達されるからです。
私はずいぶん長い間スピーチが苦手だと思っていて、自分がスピーチが上手だと思ったことはなかったのですが、南スーダンの紛争地の現場にいる時、私が話し始めると、それまでしらけていた参加者が耳を傾け始めるということを体験することがありました。
南スーダン政府との会合で、
南スーダン人民解放軍の人たちと一緒にいる時、
スタッフミーティング等々で、
相手がこちらに耳を傾けるのが分かり、上司や他の人たちから「Chikaのスピーチすごくよかったよ」と言われることがあると、嬉しいのだけど、
「えっ??、はて、私はいつからスピーチが上手になったんだっけか??」と、当人としては「狐につままれる」ように感じたこともありました。
当時の南スーダンの状況は
(今でもそうですが)、紛争が再発する要因もいくらでもある。
独立できるかどうかも分からない状況。
そんな真剣勝負みたいな日々だったので、
「たった今私がこの場でここにいる人たちに届けられる一言は何だろう?」と、私なりに必死に考え、何かを真剣に伝えようとしていた気持ちが相手に伝わったのだと思います。

⬆️国連のスタッフデー@南スーダンにて。
民族衣装を着て来たエチオピア人の同僚と一緒に
多国籍チームのリーダーに抜擢されてからは、政府やNGOとのミーティングでも「国連代表」として一言求められたり、視察とか出張先で一言求められるなど、その状況もよりフォーマルになっていきましたが、
私はそんな体験を経て、「かっこよく話す」ことも、「国連職員とはこうあるべき」もやめて、誠意を持ってハートから話すことの方が効果的だということを学んでいったのでした。
最近のコミュニケーションに関する研究では、言葉や文字として伝わるのは10%以下(またはもっと低い)ということが言われています。
今では、文章を書く時でも、言葉を超えて全体のエネルギーとして何を伝えたいのか、ということに意識を置いています。
だとするならば、言葉を超えて、全体のエネルギーを伝えることができる能力とは、まさに「繊細さ」や「感じ取る能力」「感受性」の大きな強みなのです。
こうした能力が開花すると、
人に教えること、講師、執筆、ダンス、デザイン、演劇、絵を描く、歌を歌う、音楽、イラスト、建築、彫刻、織物、アスリートなどー
そういうタイプの人たちの、自分の中から「湧きでるもの」を表現する意欲、そしてそのベストを追求する「内なる意欲」はもともと強いので、それが助けとなり、それがどんな分野であっても、自分の表現や作品は自然と高い水準に達していきます。
「感受性」「繊細さ」や「感じ取る能力」を自分の強みとして成功している有名人としては、例えばこのような人たちが挙げられています。
スティーブン・スピルバーグ
メリル・ストリープ
アガサ・クリスティーン
アルバート・アインシュタイン
エリザベス・キュープラ・ロス
デール・カーネギー
などです。


Dan Millman ‘The life you were born to live: A guide to finding your life purpose’ p.242より
邦題 ダン・ミルマン「「魂の目的」ソウルナビゲーション―あなたは何をするために生まれてきたのか」より
ただ、どんな人にとっても、その人の強みとチャレンジは「表裏一体」であるように、そういうタイプならではチャレンジもあります。
では、こういうタイプの人たちが、その「感受性」「繊細さ」や「感じ取る能力」を才能として「開花」するためにはどんな事が役に立つのでしょうか?
次回に続く。