内向型の強みとして、共感能力の高さ、感受性の高さが挙げられます。
ここで言う「繊細な」という意味は、その人の「構造」というか「つくり」というか、特性が繊細であるという意味であって、「ナイーブ」であるとも「弱い」という意味とも違います。
別の言い方をすると、感じ取る能力が高い人、共感能力の高い人たちです。
「繊細」とだけ聞くと、「競争社会」の基準からすると「弱み」のように聞こえるかも知れませんが、これからの時代、「感受性が高い」ということはますます「大きな武器」となっていくことでしょう。
では、「感受性」が高いことの「強み」とは例えばどういうものでしょうか?
例えば、相手が伝える1の情報から、その何十倍もの情報を読み取る能力です。または、より大きな流れや全体像をつかむ能力です。
これは、「洞察力」(insight)と呼ばれます。
例えば、この人は、言葉ではこう言っているけど、その人の本心はいったい何なんだろう?または、「ミーティングで部長はこう言っているけど、どうも他の人たちはしらけてるなあ。みんなの本心はいったい何なんだろう?
今、会議で起きていることやこの組織全体で起きていることは何だろう?」といったより深層の部分に意識がむく能力です。
これは、人と関わる仕事、交渉や仲裁、ファシリテーション、リーダーシップといった分野で大きな力になります。
紛争地の現場でも、私にとってこの力が大きな助けとなりました。
例えば、南スーダンのような紛争地では、この先数ヶ月、政情がどうなるのか分からないというような環境に置かれます。
そのような環境の中で、国連のスタッフは、いろんな人に会って情報収集をし、あり得るシナリオなどを考え、分析を加えながら、それぞれの場合どう対処したらいいかを決定していきます。
私は、そういう地で仕事をする人として、いろいろな人に会って生の情報(感覚)を得て、この先の流れを掴んでおくことは、決定的に大事なことだと感じていたので、できるだけそういう時間は意識的にとるようにしていました。
そうした習慣もあったので、政情的に何かが起きたり、新しいニュースがあったとしても、「ああ、これはこれ以上『大事』にはならないな」、「今回は注意」など、ある程度予測がついたりしました。
私の「鋭敏なアンテナ」が、相手が伝える1の情報からその何十倍もの情報を読み取ってくれるのか、私の分析が流れを読んでいた、全体像を掴んでいた、ということは実際にありました。
同じ街にいながら、同じ国にいながら、同じ人に会いながら、同じ情報を耳にしながら、その人が導き出す結論や分析はまったく人それそれでした。
断片的な情報から、全体像を「掴んでいく」能力はまさに大きな力です。
こうして、私の感受性の高さ・繊細さは「分析力」「判断力」「紛争解決力」(仲裁力・対人関係能力)として、紛争解決の最前線で大きな武器となってくれました。
言葉で伝わるのは10%にも満たないと言われていますが、
例えば、
初めて会う人との関係構築の中で、
全く新しい環境 (組織や街や国など) に慣れるために、
お互いに母国語ではない言語で話している時など、「感受性」が役に立つ場面はけっこう多いのではと思います。
この力は、そしてコーチ・カウンセラー・講師として発揮されています。
ある方の相談内容について聴いている時に、その方が言わんとしていることの全体像や課題の根っこの部分が「パッと」把握できる能力です。
もちろん、いくつか質問をして、課題を探ったり、それを確認してきますが、洞察力が大きな土台をつくってくれています。
実際、最近は、この「感じ取る能力」・「共感能力」のビジネス上の価値が科学的にも証明されつつあります。
5年連続で全世界での視聴回数ベスト5内にランクインし続け、2016年12月現在で全世界での総視聴数が27,677,409回(!)を超えているTEDがあります。
ヒューストン大学の心理学者ブレネーブラウン による「Power of Vulnerability」です。共感の力こそが、クリエティビティーやイノベーションへの入り口だと言っています。
世界中の企業や組織がクリエティビティーやイノベーションを求めています。
ただ、 それが大事だろうとは思っていながら、それがどうしたら起こるのか分からない。
そして、人間はいくら理性的に判断し、行動していると思っていても(そう信じたくても)、実際には感情で動く生き物だということも私たちは知っています。
誰でも傷つくのは怖い。批判されるのも失敗するのも嫌。
見えないところで直感やイノベーション、クリエイティビティーを潰しているのはこうした「不安」や「恥」の意識だと言われています。
そして、その「解毒剤」こそが「共感」であると、このTEDの著者ブレネーブラウンは言っています。
そして、「共感」が起こる時の大きな要素として、「相手の感情がわかること」(feeling with the other)が挙げられています。
このTEDの後、彼女のところには、アメリカ中のCEOや企業からイノベーションを起こす秘訣を教えて欲しいと、講演の依頼が殺到したそうです。
「共感の力」とビジネスの接点が科学的に証明されつつあること、このテーマが全TEDの中でもベスト4にランクインし続けている事実そのものが興味深い現象だと思います。
感受性や共感能力はビジネス上でも大きな価値なのです。