日本全国で少子化と高齢化が進む中で、人口増加率トップ5を更新し続け(沖縄県竹富町)、おばあたちがとても元気な島があります。沖縄県八重山諸島の一つ小浜島です。
この「小浜島」は、沖縄の八重山諸島に位置する人口約600人の島です。
東京からだと
羽田ー那覇(2時間)
那覇ー石垣島(50分)
フェリー(30分)
を乗り継ぎ到着します。
私が小学生の時は、南西航空というプロペラ機での移動でしたが、今は直行便もあります。ちなみに、東京ー石垣間は1950キロで、東京ー上海よりも長い羽田発の一番長い路線だそうです。
小浜島の丘からは海が見えます。海が本当に綺麗です。
さて、この小浜島のおばあたちには元気の秘訣がたくさんあります。
もう80代、90代のおばあ達ですが、毎日の日課は、朝起きたら、お隣りの家に行って、
「おーい、あんた生きてるか〜?一緒に東京に(合唱団の公演に)行くんだよ。まだ死んだらダメだよー。」とそれぞれが周るのだそうです。
そして、みんなが集まっておしゃべりをする中で、「みんな歳をとり始めたけど、何かお互いを励まして元気になる方法はないかねえ」、と、そんな話しになったそうです。
そして、いつものようにお茶会を開いていたら、誰が言い始めたのか、初恋ばなしを披露することになり、それがすごい盛り上がったそうです。
そして、戦争で着られなかったから、結婚ドレスを着ようということになって、お化粧もしてもらうことになったそうです。
そしたら、80歳を超えた「おばあ」たちに恋ごころが蘇ったように笑顔と元気が溢れ、みんなで「きゃっきゃっ」とすごく盛り上がったそうです。
おばあ達が元気な小浜島では、入会の資格は80歳以上で、70歳はまだ「研究生」、60代はまだまだ「ひよっこ」だそうです。
ドレスと恋ばなが恒例になって合唱団を結成。それがきっかけで、島内のリゾート「はいむるぶし」のステージに呼ばれるようになりました。
日本全国で生産人口減少、高齢化、少子化が進む中で、全国に元気を与えた、とサントリー地域文化賞も受賞しています。
そして、KBG84というグループ名で「徹子の部屋」にまで出場するほどになりました。
こんなにニコニコと全国の人たち、いやいや、世界の人たちにも(つい最近は北海道とシンガポールに招聘され公演してきたそうです。)に惜しみなく笑顔を振りまいているおばあ達ですが、この一件温和なおばあたちの笑顔の内には、同時に沖縄の太陽にも負けない「芯の強さ」と「知恵」があります。
おばあ達が海外にも呼ばれるのは、おばあたちの姿を通じて、島の生活を生き抜いてきた強さと包容力、そして島での生活でつちかった知恵をわたしたちが感じとることができるからではないかな、と感じます。
東京生まれの私が初めて小浜島を訪れたのは6歳の時。
小浜島は最初「カルチャーショック」の連続でした。
台風がやってきて丸3日間停電。
それなのに、叔母たちはまったく動じず、淡々とろうそくで食事の準備していました。
ーテレビはNHKしか映らない。しかもよく乱れる(当時)。
ーラジオをつければ、英語か中国語の方がはっきり入る。
ー海辺を歩けば、中国語の漂流物がいっぱい(台湾がすぐそこだから)
なにより、おばあ達の言葉がわからない!
子供ながらにはっきりと感じました。
「国境」なんてしょせん人間が作ったものなんだ、と。
お店は全部で3件。
日中はさとうきび刈りなどの農作業。
時々海に出てたこを釣ってくるなど普段の生活はシンプルなものです。
そんなおばあ達がキリリと凛々しい表情を見せる日があります。
神に豊作を感謝するために踊りと歌を捧げる祭の時です。
いつも見かける叔父達が、突然「きりっと」笛や太鼓、さんしんの名手に変身し、おばたちは、白い衣装に身を包み、神様を迎えるという大役を果たします。
島全体で、三日間、神に歌と踊りを捧げるのです。
「かっこいい」!!!!!
こうした姿を見て育つ小浜島の子供達の憧れは、社長でもサッカー選手でもなく、三線や笛、たいこ、そして歌と踊りが上手い人なのです。
その祭を6歳の時にみた私も、あまりの迫力に圧倒され、大人になったら、絶対にこの祭に参加しようと誓ったのでした。(成人すると正式な参加資格を得ることができます。)
世界中の神話や神に捧げる儀式は突き詰めていくと、どこかに共通点があって、
人間が生きていくための知恵を教えてくれていると、人類学者や神話の研究者が言っていることを思い出します。
台風が来たらすべてが寸断される環境において、小浜島のおけるこうした祭事というのは、一人ではけっして生きられない島で生まれた「生き抜く知恵」を、おじいやおばあが全身で後世に伝えていく神聖な空間なのでしょう。
なんとも深遠な仕組みが出来ているものだと深い感銘を覚えます。
小浜島では年長者は知恵のある人として敬われます。
年長者は若い人に「知恵」を伝える役割があるとされています。
97歳の「カジマヤー」という長寿を祝うお祝いでは島全体で祝福します。
ヒデおばあのお祝いの時には、島の小中学校の生徒全員が手作りの竹笛を練習してお祝いをしました。(小浜島は竹笛が有名です。)
ちなみに最近「カジマヤー」を迎えた山城ハルおばあ(96)もKBG84のメンバーです。
🔼 写真:小浜島リゾートはいむるぶしさんのブログより
人は誰もが誰かの役に立ちたい生き物。
そして、「いのち」には、次の世代にほんとうに大切なことを伝えたい、残したい、よりより社会を残したい、という本能が備わっているのです。
当たり前だけれども、
人は物でもないし、お金でもない。
生産するとか消費することと全く関係ない次元にそもそも本来の人の価値は存在する。
そんな当たり前のことを「小浜島」は思い出させてくれるのです。