前回、内戦をしてきた国の軍人たちがなぜ悩みを打ち明けてくるのか、というお話しをしました。
あるレセプションでは、たまたま会話を始めた相手が米軍のアジア・大平洋司令部付けの司令官(将校)の方で、ワイングラスを片手に彼の体験に耳を傾けたこともありました。
最初は、米軍でのキャリアの一番初めの海外派遣先が日本の厚木基地で、「最近は他の国に紛争の調停に行くようになったけど、僕に初めて異文化体験をさせてくれ、アメリカの田舎生まれの僕の目を世界に開かせてくれた日本に感謝してる」とおっしゃっていました。
そうなんですね、と話しを聞いていると、今度は話題は東日本大震災のことに及び、
「東日本大震災が起こった時には他人の国とは思えなくて、あの日は眠らずに指揮をとったよ」とも伝えてくれました。
彼は、日本を含むアジア・大平洋全域を指揮するアジア・大平洋司令部(USPACOM)司令官の一人でした(当時)。
レセプションという場での外交的なあいさつという面も多少はあったでしょうが、彼の口調からは当時の緊迫した状態と彼という個人として奮闘した想いが伝わってきました。
組織の上にいる人であるほど意思決定に神経を使ったり、軍隊といった組織であれば尚更立場上、実際には、口に出せない葛藤を抱えていることも少なくありません。
軍隊というと、強健な肉体を持ち冷静に任務を遂行していく人たちのように思われるかも知れませんが、人間ですから、時にはそんな想いをほんの少しだけ口にしたくなることもあるでしょう。
実はここに相手との距離を縮じめるヒントがあります。
社長でも頭取でも、首相でも大統領でも、ゲリラ軍の司令官でも、当たり前ながら同じ人間です。
生産性やクリエーティビティーが上がるとの理由でGoogle内で大人気となり、シリコンバレー発の「マインドフルネス」ムーブメントを起こすことになったマインドフルネス研修がありますが、その研修ではどんな人に対しても「この人は私と同じ人間である」という瞑想を学ぶそうです。
上司とは自分よりも上の立場にあるのだから自分に対してもっと気をくばるべきだ、と思ったり、日本人は一般的に、上司や上の立場に対して完璧な人物像を求める傾向が高いように思いますが、上司も部長も社長も同じ悩みを持った人間なのです。
その上で、相手の状態を観察する、配慮する、相手の悩みを理解しようと努める、相手のことを知ろうとするということに意識を向けて見てください。
例えばこのような質問です。
あなたの上司の方はどんな人ですか?
仕事ではどんなお悩みがありますか?
上司のお悩みの解決にあなたはどのように役立つことができますか?
週末は何をして過ごしていますか?
仕事以外ではどんなことに興味がありますか?
そのように理解を向けてくれる人がいて相手も心づよいと感じてくれることでしょう。