「分からない部分」が減るほど未知の不安も確実に減っていくー 国連の分析手法から学んだ不安を確実に分解していく方法

南スーダンで働いていたと言うとよく聞かれるのが、「怖くなかったですか?」という質問です。

 

もちろん日本にいる時と比べれば、気をつける点はたくさんありますし、夜の7時には無線による点呼というものが全職員に義務づけられていました。これは携帯電話の電波が使えなくなることなどを想定して、無線での連絡手段を確保しておく意味があります。

 

南スーダンでは、治安研修の一環として万が一人質にとられた時の対応についても習いました。

 

(アフガニスタン、南スーダンやソマリアなどに派遣される国連職員とNGOのスタッフが現地で受けます)

 

東ティモールでは銃が発砲された時に居合わせたこと、また、南スーダンではお金をせびる兵士に銃を向けられたことが一回だけありますが、相手はお金をせびることが目的だとすぐにわかったので、落ち着いていられました。

 

そうしたリスクは存在するので、まったく怖くないと言ったら嘘になりますが、例えば、そうした出来事が「組織的なものなのか」、または「突発的なものなのか」という点で「脅威」に対する判定は大きく変わります。

 

経験を積むにしたがって、何かしらの出来事が起こってもそうした基準に従って、「今回は報道で言われているよりも大したことないな」、「あっ、今回は注意した方がよさそうだ」、とかなり判断できるようになっていきました。

 

PKOが展開する国や地域の情勢を分析する手段として、脅威分析(threat analysis)やリスク分析(risk analysis)、シナリオ分析(senario analysis)といった分析手法があります。

 

どんな手法も完璧ではないし、どんなことであっても完璧に知ることも予測することも出来ませんが、私が国連PKOの現場で学んだのは、もし「脅威」や「怖れ」というものがあったら、それを一つ一つ分解して、対処法を考え準備することはできるということ、そして準備をすればするほど、漠然とした不安は減る、ということでした。

 

脅威分析(threat analysis)やシナリオ分析(senario analysis)といった手法についてここでは詳しい説明はしませんが、どの手法にしても、分析を始めるにあたって非常に重要となるのは、何がわかっていないのかをはっきりさせること、わかっていない点があるのならばそれについての情報収集を徹底的に行うという点でした。

 

どんな分野であれ、何かに対して結論を導こうと思ったならな当然ながら十分に情報が必要なのです。

 

そして、以下のような手順で進めていきます。

 

① 現在地の把握

今どんな情報があるか?何がわかっていて何がわかっていないのか? それはどこに行ったらわかるのか?誰に聞いたらわかるのか?

 

②情報の整理

情報とは事実と意見を集めたもの。

それに対する人々の意見。

その情報は自分で確かめたか?

その情報を得たことによって新しく分かったことは何か?

 

③選択肢の確認

今どんな選択肢があるのか?

まだ気づいていない選択肢はあるか?その情報を得てどういう選択肢があるとわかったか?選択肢を十分に考えたか?全ての選択肢を洗い出す

 

④シナリオを予測する

もしこの決断を実行に移したらどうなるのか?シナリオ1の場合、シナリオ2の場合、シナリオ3の場合、 一番おそれている結果は何か?一番最善な結果は何か? 結果をどのくらいはっきり予測しているか?

 

⑤ 対策(Course of Action:COA)を考える

ぞれぞれのシナリオで関係する部署はどこか?

それぞれのシナリオに対する対策

アクションプランをあげる

 

Course of Action:COAは軍隊発祥の用語ですが、

これらの思考プロセスは、ビジネスにおける意思決定のプロセスとも共通します。

 

人は全く自分が知らないことや体験したことのないことに対して必要以上に「不安」を覚えます。いわゆる「未知の恐れ」と呼ばれるものです。

 

こうした分析マインドや思考プロセスが私たちの日常にも当てはまると思うのは、もし不安に思うことがるとしたら、「不明な部分」「分からない部分」をどんどん減らしていくことによって、ばくぜんとした未知の不安やおそれ」は確実に減らすことができる、ということです。

 

 

 

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もし「なにか違う気がする」「違和感」を感じていたら、自分のライフスタイルや仕事を見直すサイン

もし今年に入ってから、何か「違和感」を感じているとしたら、あなた一人だけではありません。

 

安心してください。

 

今日もそんな会話を聞きました。

 

何か「違和感」を感じていたことがあったのですが、2018年に入ってから「その違和感がより大きくなっている」というのです。

 

これまでのやり方が急に「すごく古い感じ」がする、という声も聞きます。

 

その「違和感」とはなにか?その違和感の「根源」について、少し話しを続けました。

 

いろいろな側面やいろいろな言い方があると思いますが、一つは、「自分を既存の職業に無理やり合わせる時代が終わりつつある」という面です。

 

2013年にオックスフォード大学のオズボーン準教授が、『雇用の未来—機械化によってどれだけ仕事が影響されるのか?』という論文を発表し、702の職業のうち47%が、10〜20年後には機械化される確率が非常に高い、と発表して衝撃を与えました。

 

特に金融、会計、法律実務の多くが自動化されるだろうと指摘され、実際昨年11月に三菱東京UFJ銀行は9500人、みずほ銀行は100店舗を削減、1万9000人、三井住友FGは4000人の人員削減を発表しました。

 

驚かす意味で言うわけではありませんが、AI化の流れは確実に始まっています。

 

昨年、私の住んでいる地域のスーパーで自動レジが導入されたとき、まさに肌感覚でこのことを感じました。実際、今年に入ってからその流れはさらに加速しています。

 

おそらくこれから数年の間にAIの導入は各分野で一気に広がると思います。

 

産業革命の時代以来、人間が重労働を担わないといけない時代がありました。

戦後の時期など、ともかく誰もが生きていかないといけない、食わなければいけない時代がありました。

 

AI(人口知能)と人間が共存を始める日がすでに始まっています。

 

AIは、ある意味、人間が人間に戻り、私たち一人一人に与えられた役割を担うことを助けてくれていると私は捉えています。

 

前回、自分の望むライフスタイルや働き方はどういうものか改めて問い直しましょう、と言いました。

 

その意味の一つは、この数年、この10年〜20年の間違に既存の職業はもうこれからなくなるかも知れないし、そもそも今までと同じ考え方では行き詰まってしまいます。

 

これからの時代、就職や仕事、職業を考える時、私たちの考え方や発想はまったく変わっていくでしょう。

 

まず一番初めに自分に問う質問はこのようなものです。

 

自分はどんなライフスタイルや働き方を望んでいるのか?

それはどうしたら可能になるのか?

どんな類似例があるのか?

どんな選択肢があるのか?

そのためにはどんなことができるのか?

 

これは、「意思決定の質問」の基本でもあります。

 

まず、自分はどんな結果を望んでいるのか?

すぐに分からなくても何度も何度も思い出して、自分に問いかけてあげましょう。

内から湧いてくる「静かな自信」ーそれは誰に奪えない

私は人が変わっていく姿を見せてもらえる

とても恵まれた仕事をしていると思う。

 

私のコーチングセッションの特徴は単なる知識ではなく身体やハートで腑に落ちること。

 

「ハートメタ」(瞑想)をすると、ココロと身体、エネルギーがシフトするので、その人が部屋を出るときに「別の人」のようになっていることがあります。

 

すると体験することが変わっていきます。

 

それまで出来なかったことが出来るようになったり、

今まで言えなかったことが言えるようになったり、

嫌な人が嫌でなくなったりします(本当です!)

 

これは「気分爽快」です。

 

(ご本人たちからはそんな余裕満々じゃないよ~という声が聞こえてきそうですが)

 

時にチャレンジなことは起こります。

でも、乗り越える準備ができているから起きること。

 

そして、気づくのです。

「ワタシってこんなこともできるんだ!」

 

そして、思い出すのです。

誰の中にもあるにんげんの底力を。

 

だからすでに表情すら変わっていて、みんなどこか誇らしげ。

 

「人生がいい方向に向かっている」

「自分は昔のままの自分じゃない」

 

実際にそういう体験をしているから。

その感覚を確実に感じているから。

 

そして、

 

一つ一つ

 

出来なかったことができるようになる時に内から湧いてくる「静かな自信」。

 

これは、誰も決して奪えないもの。

 

自分の人生に向き合っている人はカッコイイ。

 

だから「何かを変えたい」と思う時に必要なことー

 

それは、スキルでも才能でもない。

 

ちょっと飛び込む勇気。

 

あなたの勇気にお応えします。

 

 

お気軽にご連絡ください。

 

info(at)peaceblossom.net

 

(at)→@に変換してね。

 

 

「ネガティブな自分」に向き合えば運命は拓ける!ノーベル平和賞に3度ノミネートされた女性から学ぶ②

1つ目は、博士論文の執筆のために各国の核政策関係者に聞き取り調査をしたときのことです。そのときにエルワージーが気づいたのは、核保有国はどの国も「もし相手が攻撃してきたらどうしよう」という強い猜疑心に憑りつかれて互いを恐れながらも、それぞれの相手の実情はまったく知らないということでした。

 

さらにその聞き取り調査によってわかった各国の思考パターンを認知マップにまとめたところ、それが各国の相互理解を促す役割を果たし、率直な議論が生まれました。これが2つ目の気づきです。

 

3つ目は、それまでに何百回とおこなわれたなかで成果を挙げた数少ない会議の共通点は、参加者全員の意見が尊重されるオープンな雰囲気だったということでした。

 

こうした気づきから、核開発問題にかかわるすべての人がひとつの場所で顔を合わせること、それぞれが公式見解をただ一方的にスピーチするのではなく、ひとりの人間としてオープンに対話ができる場を設けること──それこそ対話の成功の鍵だとエルワージーは推測したのです。

「その2秒」が世界を救う

 

とはいえ、核軍縮会議の参加者たちのお互いに対する警戒心は強く、緊張感は並々ならぬものがありました。そこでエルワージーは、議題や参加者の選定など、会議全体を注意深く計画し、準備を進めたのです。会場は、英国オックスフォード郊外の、美しい庭園のある会議場を設定するようにしました。

 

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会場に選ばれた英国オックスフォードにあるRhodes House

 

会議を成功に導くためには、参加者全員が安心感を持ちながら公的な「仮面」を外し、お互いをひとりの人間として見ることができるような「場」を作らなければならないとエルワージーは考えました。

 

そこで会議の運営者たちが着目したのが、「内的な力」と「自己認識力」です。

 

ここで言う内的な力とは、会議場で生じるだろう不安や対立を敏感に察知し、そうしたネガティブな状態をまずは自分自身が克服して、安定した精神状態で周囲を導くことを指します。

 

エルワージーは当時を次のように振り返ります。

 

「こういう問題にかかわっていると、情けないくらいにエネルギーが抜けていく状態を経験する。感情がかき乱され、疲れ果て、燃え尽きる。私たちはたいていまったく不十分な手段で、最も困難な人間の問題に対処しなければならなかった。

 

けれども、こうした焦燥感はしばしば内部の誤解や確執、コミュニケーション不足、そして、自己認識の欠如から生じるということに同時に気がついた。

 

だから、こういう仕事をするには、情熱をもって純粋な気持ちで取り組むことだけでなく、自己認識力と内的な力が不可欠だ」

 

核軍縮問題に限らず、テーマの難しい会議では、始まる前から「こんな会議はうまくいかない」という外部の冷笑や無関心に直面するものですし、本当にうまくいくのだろうかという不安が自分自身にもよぎります。

 

そもそも、会議の参加者たちにはそれぞれの立場や前提を持ち込みますし、会議に協力的な人もいればそうではない人もいます。

 

公的な見解をただ繰り返すだけの人もいれば、あなたの意見を批判してくる人もいるでしょう。

 

攻撃を受けたと感じると誰でも緊張します。

 

あなたが反論しようものなら、相手はさらに攻撃的になるかもしれません。

 

この話し合いは失敗に終わるのではないか、というあきらめが頭をよぎることもあるでしょう。しかも、こうした感情の揺れは一瞬にして起こります。こんな精神状態に陥っては冷静に物事を判断することもできませんし、ほんとうの対話や解決策を生みだすこともできません。

 

「自己認識力」とは、そういう時にこそたった2秒でも間をとることができて、自分が感じていること、反応することを客観的に理解でき、何かに反応する前に適切な言動を決められることです。

 

FT Weekend Oxford Literary Festival - Day 1
OXFORD, ENGLAND – MARCH 21: Scilla Elworthy, three times Nobel Peace Prize nominee, on Day 1 of the FT Weekend Oxford Literary Festival on March 21, 2015 in Oxford, England. (Photo by David Levenson/Getty Images)

 

自己の「シャドー」に打ち勝つために

 

「内的な力」を育むことには、前回お話ししたシャドーが大きく関係しています。自己のシャドーを自覚していないと、自分の負の感情を相手のせいにしてしまうので、他者と建設的な関係を築くのが難しくなってしまうからです。

 

シャドーは私たちを、偏見に照らし合わせて他者の人格を勝手に決めつけるように仕向けます。しかも当人は「自分が正しい」と思い込んでいるので、相手を批判するための情報ばかりが目に入ってきてしまうのです。

 

このような状態を「ダウンローディング」といいます。私たちは、すでに確立された見方をテープのように繰り返しながら、周囲の人たちを評価しているのです。

 

しかしながら、自分の考えがシャドーに端を発していて、これが唯一無二の見方ではないと自覚していれば、ネガティブな感情に惑わされず他者にオープンでいられます。同意するかどうかは別として、相手の立場や背景を理解することもできます。

 

具体的な解決策がわからなくても、個々の見解を整理し、互いに耳を傾けたうえで、改めて新しい解決策に焦点を向け直すこともできます。もしかしたら、急に目の前の世界が開けて、これまで見えていなかったものが見えてくるようになるかもしれません。

 

そのような「オープンな状態」でこそ、初めて新しい解決策も真の対話も生まれるのです。

 

自己認識力があり、内的な力が発揮できれば、困難な状況でも自分と他者それぞれの内面の動きがわかり、全員にとって最善な方向に向かうことができます。

米英中の歴史的な対話を実現

 

とはいえ、エルワージーも、核軍縮のための会合で真の対話を起こすまでにはたくさんの失敗をしたと言います。

 

「特に最初の頃は、核兵器が人類を危機にさらしていることに抑えきれない怒りを感じ、高い道徳的見地から見下して語ったりしたこともあった。でも、正義がこちらの側にあるからと言って、相手が聞く耳を持つはずもないし、まったく効果的ではなかった。

(中略)

 

そうした体験を経て、自分のなかの怒りやフラストレーションを自覚し、克服していることは必須だと知った」

 

彼女が難しい状況を切り抜けることができたのも、内的な力のおかげだったそうです。

 

あるとき、中国代表の発言によって、議論が白熱したことがありました。内的な力によって平静を保つことのできたエルワージーは、そこで3分間の沈黙を提案したそうです。短い沈黙でしたが参加者は落ち着きを取り戻し、再開されたときには、対話を前に進めることができました。

 

その結果、エルワージーは、中国で文化大革命が終わって間もない1986年に、中国人民平和武装協会の事務総長と米英核政策関係者との面会を成功させるという快挙を成し遂げました。それだけでなく、冷戦化で最もデリケートな問題であった核分裂性物質管理の問題に関しても、初めて米英中3ヵ国の対話を実現させたのです。

 

接触そのものが困難だった時代に、中国核政策部門の大物との会合をエルワージーがアレンジできたことに、欧米の政府関係者は心底驚いていたそうです。

 

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⬆️ 英国と中国代表団との会合

 

エルワージーは、核保有国を集めた対話を完全非公開で15年間も継続しました。これにより対話が冷戦化でも信頼関係を生むことを証明し、核軍縮に向けた国際的な取り決めの潮流を作り出したのです。

 

「こうした困難な仕事を経験することによって、内的な力を発揮する方法を学んだ」とエルワージーは後に語っています。

 

内的な力をマスターすることこそが、彼女が13歳の頃からずっと求めてきた「究極のトレーニング」だったのでしょう。

 

「自分が気づいていない視点や方法があるかもしれない」というオープンな精神状態で、全体を俯瞰することによって見えてくる、新たな視点や可能性があるのです。

 

クーリエジャポン 2018年1月2日 掲載 大仲千華

LIFEシフト時代こそ生きる知恵をおばあに聞こう!ー92歳で海外公演をする離島で聞いた「人生100年時代の楽しみ方」

東京から2000km離れた、沖縄県八重山地方の離島、小浜島。

 

エメラルドグリーンの海に囲まれたこの小さな島には、一面サトウキビ畑が広がります。信号は一つもなく、道ばたでのんびりと歩いているヤギに遭遇することも珍しくありません。

 

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⬆️沖縄の原風景が残る小浜島

 

近年、この島を有名にしたのは、平均年齢84歳のアイドルグループ「KBG84」です。

 

小浜【K】ばあちゃん【B】合唱団【G】の頭文字と、メンバーの平均年齢が84歳であることから命名されました。

 

80歳にならないとグループに入ることができず、入団式ではウェディングドレスを着て、恋バナを披露するのが慣例になっています。

 

彼女たちはすでにメジャーデビューをしていて、オリジナルソングも出しています。

 

「天国に一番近いアイドル」というキャッチコピーを掲げて活動するうちに、「元気なおばあちゃんたち!」とインターネット上で評判になり、「徹子の部屋」をはじめさまざまなテレビ番組でも取り上げられました。

 

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英「BBC」で取り上げられたことから海外でも注目されるようになり、高齢化に悩むシンガポールから「元気の秘訣を教えて欲しい」と招待を受け、2016年末についに初の海外公演を果たしました。

 

「センター」を務める92歳の仲目トミさんが、事前に英語の勉強に励む様子はNHKでドキュメンタリーとして放送され、話題を集めました。

 

2017年にはアルゼンチンのドキュメンタリー映画制作チームが、彼女たちを撮影するために来島しました。

 

離島で聞いた「人生100年時代の楽しみ方」

 

2016年以来話題の『ライフ・シフト 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、東洋経済新報社)を読まれた方も多いかも知れません。

 

この本には、人間が100年生きるこれからの時代、人生を「学校」「会社」「引退」という3つのステージで捉える前提自体が変わり、働き方や価値観がますます多様化すると書かれています。

 

今後はこの3つのほか、自分の体験や分野を広げていく時期や、自分で仕事を生み出していくステージなどが加わり、いくつものステージが同時平行で進む「人生のマルチステージ化」が進み、100年ライフをよりよく生きるためにも「無形資産」が一つの鍵になると言われています。

 

無形資産はモーチベーションや人間関係、健康、好奇心や探求心、新しいことを学べる「オープンさ」などを指します。

 

著者の一人であるグラットンも、人生を支える「資源」をより広い観点から捉え直すことが大切だと説いています。

 

この本を読んでいるとき、小浜島のおばあたちのことが頭に浮かびました。

 

彼女たちこそ、「無形の資源」を積み上げながら、人生のライフ・シフトを楽しんでいると感じたからです。

 

なぜ信号が一つもない小さな離島のおばあたちが、海外公演までする「アイドルグループ」になったのか?

 

──そんな素朴な疑問にお答えしながら、彼女たちの持つ知恵をもとに、ライフ・シフト時代を生きるためのヒントをご紹介したいと思います。

引きこもり防止の食事会から「アイドルグループ」が誕生!

 

小浜島の人口は、およそ600人。

 

最寄りの石垣島から、約30分高速船に乗ります。ちなみに、東京─石垣島間は1950kmで、東京─上海間よりも距離があり、羽田発の国内線のなかでは最長距離路線だそうです。

 

小浜島は起伏のある地形なので、どこにいても海が見えます。島の周りにはサンゴ礁が広がっているので、エメラルドグリーンに光る海は本当に綺麗です。

 

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⬆️透明な海が一面に広がります。この写真は何の加工もしてません!

 

島の主な産業は、さとうきびなどの農業と畜産業。島の中心部には、小さな商店が1軒と民宿が数件あるだけで、沖縄の原風景を残すのどかな集落があります。

 

さて、小浜島のおばあたちの一日は、「ある日課」で始まります。

 

慶田盛英子さん(88)は、まず先祖に向かって手を合わせ、自分の子供たちとその家族、孫9人、ひ孫13人の1日の無事と健康、幸せを祈ります。

 

そして、お隣りの家へ歩いて行き、「おーい、あんた生きてるか? 一緒に東京に(合唱団の公演に)行くんだよー。まだ死んだらダメだよー」と声をかけるのだそうです。東京公演は、おばあたちの新たな目標なのです。

 

80歳を超えたおばあたちが公演することになったもともとのきっかけは、一人暮らしになったおばあたちの引きこもりを防ぐために始められた月一回の食事会でした。

 

気づいたら、島のおばあたちのほとんどは夫に先立たれて一人暮らしになり、歳も80を超え始めていました。

 

みんなに集ろうと声をかけた花城キミさんも当時すでに80歳を超えていました(現92)。そこで「残りの人生楽しく過ごすため、何かみんなで元気になれる方法はないかねえ」という話になりました。

 

そこで、キミさんが「初恋話」を始めたところ、これがものすごく盛り上がりました。

 

おばあたちの時代は戦争のせいで恋愛や結婚に心をときめかせている余裕はなかったので、「死ぬ前にウェディングドレスを着てみたい!」という声があがり、せっかくだからお化粧も華やかに着飾ってみんなで写真撮影をすることになりました。

 

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⬆️80代のおばあには見えないほど綺麗です!

 

これを機に「小浜島ばあちゃん合唱団」が結成され、新人メンバーの入団式にはウェディングドレスを着て、恋バナを披露するのが恒例になりました。

 

すると島内にあるリゾート施設のイベントに呼ばれようになり、初めてお客さんの前で合唱を披露したら「おばあたちの歌声を聞くと元気になる!」と大好評。毎年ステージに立つようになりました。

 

それ以来、島在住のシンガーソングライターつちだきくおさんが、月一回の練習をサポートしてくれることになりました。

 

彼が半分冗談で、「東京でおばあたちが歌って踊ったらうけるだろうね」と言うと、おばあたちから「じゃあ連れてって!」という声があがり、その場で東京行きが決定しました。

 

⬆️公演のため小浜港から船で旅立つ前に「うーとーと」(祈りの意味)するおばあたち

 

「死ぬ前に山手線に乗れる!」と、それはそれは賑やかな旅だったそうです。

 

東京では品川プリンスホテルで歌を披露し、テレビ番組にも出演しました。

 

ちなみにつちださんは、おばあたちのウェディングドレスの相手役を10年近く務めており、数年前におばあたちから賞状を受け取ったそうです。そこにはこんな一言が書かれていました。

 

「あなたは私たちのよき息子であり、よき彼氏です。」

 

ユーモアも忘れないそんなおばあたちの元気で明るい笑顔には、沖縄の太陽にも負けない「芯の強さ」と「知恵」があります。

 

不便な離島こそ「果報の島」

 

小浜島に簡易水道ができたのは1963年。それまでは天秤棒をかついで、井戸から水を汲んでいました。水道の蛇口から水が出るようになったのは、西表島からの海底水道が完成した1977年のこと。

 

電気が通じるまでは石油ランプでの生活で、テレビは長い間NHKのみ。民放放送が始まったのは、1993年でした。

 

⬆️ さとうきび畑が広がる

 

戦後の食料難に、離島ならではの不便さが加わり、台風が来たら5日間の停電は当たり前という厳しい生活。たくさんの苦労を経験したことは想像に難くありません。。。

 

それでも、おばあたちは、私に何度も何度も小浜島は「カフー(果報)の島=恵まれた島」だと何度も言うのです。

 

「平たくて水源が限られた他の島と違ってね、小浜島はとても水に恵まれている。島にはたくさんの湧水があるおかげで米や麦、サトウキビや野菜、なんでも作ることができた」

 

小浜島は、石垣島と西表島の間に位置するため、外洋の荒波から守られ穏やかな海岸に囲まれています。集落から歩ける距離にある海辺に出れば、アーサー(海藻の一種で沖縄では天ぷらにされる)やしじみを採ることができます。

 

さらに小浜大豆と呼ばれる島原産の大豆を使って、おばあたちは味噌も醤油も一から作ってきました。着るものも、学校の制服以外はほとんど自分たちで縫ったそうです。

 

小浜島のおばあたちが「着るものを自分で作る」と言うのは、綿花を育てて収穫し、糸を紡いで染色して、機織りし、着物に仕立てるということを指します。

 

綿だけでなく、苧麻(ちょま)や芭蕉という植物からも糸を紡いだり、琉球藍から自分の好みの色を出すなど、作り出す布地の種類も豊富。

 

しかも、おばあたちはこの全行程を誰もが一人でできるそうです! 元気な頃は家族全員分の着物を用意していたそうです。

 

「買ったものを着ると暑い。やっぱり麻がいい」と、藍染の名人でもある慶田盛英子さんは、自分で仕立てたというお気に入りの麻の藍染の写真を見せてくれました。

 

こうした作業は、日常生活に根付いた「祈り」でもあった、と言います。

 

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小浜島は沖縄のなかでも「芸能の島」として知られ、五穀豊穣に感謝する祭など年に4回ほど大きな祭事があります。その際のお供えものを用意すること、そして、神さまを島にお迎えする儀式を執りおこなうことは島の女性の重要な役割でした。

 

「神さまに、スーパーで買ってきた米や小麦粉で作った餅をお供えすることはできません。だから手作りします。砂糖はサトウキビから作り、塩は海水を汲んできて釜で塩炊きします。赤味噌、白味噌、酢も作りました。なければ作るのが当たり前でした。」

 

「お供えをするためにはいつ種をまき、いつ収穫したらいいのかがわかります。」

 

そう話すのは、合唱団最年長の山城ハルさん(99)です。

 

島の人たちの生活は祭事を中心に周っているとも言えます。

 

島の人は薬草の知識も豊富。熱冷ましのために使うもの、あせもを抑える薬草など、島に自生するものでほとんどの病気を治してきたというハルさん。

 

彼女が生まれて初めて健康保険証を作って病院に行ったのは、なんと97歳のときでした!

 

⬆️カジマヤー(97歳のときにおこなわれる長寿のお祝い)の祝福を受ける山城ハルさん。子供6人、孫18人、ひ孫31人、玄孫5人に恵まれた。お祝い当日は石垣島、沖縄本島、東京などから大勢の家族・親戚がお祝いに駆けつけた。PHOTO: KIKUO TSUCHIDA

 

変化があるときほど、「変わらないもの」を意識する

 

島の人にとって「生きる」ということは、「何もない」環境で必要なものを育てつくること。それがけっして当たり前じゃないことを知っているからこそ、島の祭事では人々の表情が変わります。

 

島民全員が島の女性が紡ぎ織った正装を着用し、(島の祭事には伝統衣装を着なくては参加することができません)、男性は笛を吹いて太鼓をたたき、三線の調べに合わせて歌い、踊ります。女性も一緒に歌い踊り、自然界への感謝を伝えます。

 

世界の儀礼や祭事を突き詰めていくと、人間が生きていくための知恵を伝えていくための社会の仕組みだという共通点があると、ある人類学者が言っていたことを思い出しました。

 

台風が来たらすべてが寸断される環境において、小浜島のこうした祭事は、一人ではけっして生きられない島で生まれ受け継がれてきた知恵を、おじいやおばあが全身で後世に伝えていく神聖な空間なのでしょう。

 

そうした祭事は、「人にはそれぞれの役割があって、誰もがお互いを必要とするもの」という精神を伝え、後世に受け継がれているように感じました。

 

97歳の長寿を祝う「カジマヤー」というお祝いでは、小浜島の小学校の全校生徒が竹笛をふき、孫やひ孫はもちろん、島全体でおばあたちを祝福しました。

 

小浜島おばあ④

 

小学校の授業で竹笛をはじめて取り入れた花城正美さん(元小浜小学校校長)はこう話してくれました。

 

「子供たちに、ただ『やりなさい』と言ってもやらない。でも、おばあの喜ぶ顔を見たいと、みんながんばって竹笛を練習しました。おかげで全員が笛を吹けるようになりました」

 

小浜島は、藍染めと織物でも有名です。ただ、小浜島の織物は、島の祭事で着るための正装として織られてきたため、商用として島外に出ることもなく、世に知られることもありませんでした。

 

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⬆️結願祭と言われる島での重要な行事(国の無形文化財に指定)

 

それでも、おばあたちは糸を紡ぎ、孫やひ孫一人ひとりの幸せと健康を祈って着物を織り続けてきました。

 

どこで知ったのか全国各地から「藍染や織物、祭事について聞かせてください」と、けっこうな数の来訪者があるそうです。

 

経験豊富なおばあたちの話は、「聞いておくべきことがある」と感じさせるもので、私自身も取材中に知りたいことが尽きませんでした。

 

ただ、いくら地域の繋がりが強い沖縄といっても、こうした繋がりが自動的に生まれるわけでもありません。

 

この小浜島も、かつては「保守」か「革新」かと政治をめぐって二分されたことがありました。そのせいで、島の主要作物であるさとうきびの収穫の際にはお互いに手伝うのが慣例だったのに、それが中断された時期もありました。

 

「そういうこともあったね。80過ぎると楽しく生きたいと思う。いまはみんなで笑ってるさあ」

 

小浜島のおばあの笑顔は、人生の涙も苦労も乗り越えた後の人生の勲章なのでしょう。

 

島のおばあたちは「私が生きている間に(藍染や織物)を学びなさい」と伝えています。

 

人生で何が一番大切なのかを学びなさい──私にはそんな風に聞こえました。

 

先述の『ライフ・シフト』には、「人生の移行や変わることがあるからこそ、何が変わらないのかを知ることが重要になる」とあります。

 

当たり前ながら、人の価値は物やお金だけでは図れない。

 

生産や消費とまったく関係ない次元に、存在する価値というものがある。

 

「ない」ように見えるときでも、常に「果報(恵み)」は存在する──。

 

おばあたちの存在と知恵は、私たちにライフ・シフト時代を生き抜くために必要なものを教えてくれます。

 

2016年12月、おばあたちは海を渡り、6,000人もの聴衆を前に堂々とシンガポールの晴れ舞台に立ちました。

 

おばあたちの中にはこれが初めての海外渡航になった人もいましたが、毎年祭事を執り行い、人前で歌い踊る経験を80年近くも積んできた経験がここで大いに役に立つことになったのでした。

 

「たくさんの人に元気を届けたい!」とステージに立つその姿は、まさに「自分の役割を果たす」小浜島の精神そのものでした。

 

自ら紡ぎ、染め、織った着物を身にまとって。

クーリエジャポン 2017年9月15日掲載  大仲千華

 

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運営者プロフィール

 

国連ニューヨーク本部、東ティモール、南スーダン等で現地国政府の人材育成や元兵士の社会復帰支援に約10年従事に従事。国連の平和支援の最前線である南スーダンで80人強の多国籍チームのリーダーを務める。リーダーシップや仲裁について研鑽を積む。

 

米海軍大学院付けの専門家として、世界的な研修プログラムにおいて唯一の日本人女性として講師を務める。

 

燃え尽き症候群と二次受傷(PTSD)になり、心理学やカウンセリングを学び始め、回復・再統合する過程で直観能力とヒーリング能力が飛躍的に開花。

 

自由に活き活きと生きる人を増やしたい、応援したい、世界の課題にチャレンジする人たちをサポートしたいと思い、コーチングとカウンセリングを始める。

 

人生で尊敬する人は、沖縄小浜島のおばあたち。(*^-^)ニコ

 

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前に進みたいと思っているのに悩んで決められない時は、 「不安」を一つ一つ分解する

前に進みたいと思っているのに悩んでしまう時、動けないとき、決められない時がありますか?

深い部分では、たいていの場合、なんらかの不安がその人を止めています。

 

ばく然と嫌な感じやモヤモヤするという体験はあっても、いったい何が自分を止めているのか、本人が気づいていないことも珍しくありません。

 

スポーツ界では、選手の体力や技術の差はもはやごくわずかで、日常的に差をつけるのはメンタル面であると言われています。

 

毎日練習を積み、一流の技術を持つ選手でさえ、いくら練習を積んでも不安がまったくなくなることはありません。

 

若い選手、すでに実績を残している選手、それぞれの悩みや不安があるのだと思います。

そうした時、スポーツ心理コーチは、「不安」の根源を突き止めることをします。

 

なぜ、自分は不安を感じているのか?何が起きることが怖いのか?という不安の「原因」を探るのです。

 

2015年、ラグビーワールドカップで日本チームが強豪南アフリカに勝利したことが話題になりました。

本番が近づく中、チームでは不安も緊張も高まっていたそうです。

 

同時に、ラグビー日本代表チームには、心理面における選手へのサポートもあり、スポーツ心理学者の荒木香織さんなどがチームの不安への対処に取り組んだと語っています。

不安の原因を一つ一つ分解していくのです。

 

これは、私たちの日常生活にもそのまま当てはまります。

 

最悪の場合、何が起きることを一番おそれているのか?

自分にとって一番怖いことは何か?

 

人間根源的な欲求は、大きくいって5つに分けられると言われています。

 

(1)制御欲求(コントロールしたいという欲求)

(2)承認欲求(認められたい、愛されたいという欲求)

(3)安全欲求(生存、安心したいという欲求)

(4)一体の欲求(所属感、つながり)

(5)存在の欲求(尊厳、意味、貢献)

 

これを逆にすると、これが満たされないことを人はおそれるということになります。

 

「それで食べられなくなること」がこわい、というよく言われることがあります。

確かにそういう不安や恐れがあるのも事実でしょう。

 

でも、それをさらに掘り下げていくと、

 

おそらく、

生存や安全のおそれよりも、

 

拒絶されるおそれ

認められないおそれ

存在価値が否定されるおそれ、

 

といったものの「おそれ」の方が、現代人にとっては強いのではないかと思います。

 

不安のほんとうの原因がわかれば、問題の一番難しい部分が解決されたのも同じです。

 

そして、次のステップは、その不安の原因を減らすためには、どんなことができるのか?という対処法を考えていくことができます。

小池都知事や日馬富士を暴走させた「シャドー」とは何か?

小池都知事や日馬富士を暴走させた「シャドー」とは何か?

 

人間なら誰しもが持つネガティブな感情やコンプレックスは、心理学では「シャドー」と呼ばれる。だが近年、そうした負の感情を否定し、ポジティブさだけが極端に評価される風潮が蔓延した結果、社会にはさまざまな歪みが生まれている。

 

突発的な怒りが原因の暴力事件や、政治家の暴言は後を絶たない。また、自分の負の感情を無視し続けると、人間は本来持っていた素晴らしい才能まで失い、無気力感に苛まれるようになるという。

では、我々はシャドーにどう立ち向かえばいいのだろうか?

 

なぜ「爆発する人」が増えているのか?

 

小池都知事の排除発言や、横綱日馬富士の暴行事件、市街地を50分間も車で暴走した愛媛県の会社員の事件など、最近「爆発してしまった人」のニュースが相次いでいます。

 

世界情勢も不安定な昨今、人間も社会もそれに影響されておかしくなっていると考える人もいるかもしれません。

 

確かにそういう面もあるかもしれませんが、私は人間や社会が突然変化したわけではなく、もともと持っていた「シャドー」や社会の闇が表面化しているのだと考えています。

 

シャドーは、心理学者カール・ユングが作り出した概念で、人間のネガティブな感情や、嫌なところ、隠したいと思っている部分を指します。個人レベルのシャドーもありますし、集合社会的なシャドーも存在します。

 

そして現代は、これまで隠蔽してきたシャドーが明らかにされる「透明化」(transparency)の流れが急速に進んでいます。

 

たとえば、パナマ文書やパラダイスペーパーによって、政治家や富裕層の課税逃れの実態が暴かれました。米国では、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインのセクハラ行為が暴露されたことによって#MeTooムーブメントが起こり、日本でも東芝の不正会計や、神戸鉄鋼、三菱マテリアルのデータ改ざんといった企業の不祥事が次々に発覚しています。

 

また、トランプ大統領の差別的な発言が、世界中で人種差別や国家の分裂を助長しています。彼の発言が、人々の意識に内在していた意識を浮きぼりにさせたのです。

 

孫子の兵法に、「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」という言葉があります。

 

「己」をシャドーに置き換えてみると、それは「私たちが理解していない、扱い方を知らない自分自身の衝動」ということになります。それを否認したり抑制したりしている限り、私たちは本当の敵(シャドー)に負け続けることになります。

 

実際、政治家や俳優など表舞台で活躍していた人が突然、本音や暴言を吐いて失脚する例は枚挙にいとまがありません。

 

小池都知事が自信満々な顔で「排除します」と言ってしまったのも、彼女の権力欲の「シャドー」が露呈してしまった結果でしょう。

 

関連記事:

Vol.17 なぜ「罰」だけでは暴力を止められないのか?「南スーダン内戦はかくして泥沼化した」|大仲千華 「答えを求めない勇気」

 

「ポジティブ」の大きな弊害

 

「シャドー」は、ふとした瞬間に見せるその人の隠された部分です。

職場では真面目だと思われていた経理担当者が横領したり、教師や警察官といった公的な職業に就いている人がわいせつ行為で捕まったりするニュースも後を絶ちません。身近な例で言えば、車の運転中に急に性格が変わる人はどこにでもいます。

 

人間は誰でも「ポジティブとネガティブ」「善と悪」の両面を持っています。

 

近年、心理学の分野では、ポジティブさの良い点ばかりを強調することの弊害が指摘されています。これを「ポジティビティー・バイアス」と言い、以下のような傾向が見られます。

 

●ネガティブなことに対する免疫力が低い。

●予想外の出来事への対処能力が低い。

●ネガティブはいけないことだと思い込んでいる。

●ネガティブな側面や感情を否定すると、ポジティブの感度も麻痺する。

●ネガティブな感情・側面が資源や才能になることを見逃している。

●ネガティブの存在価値を無視している。

●ポジティブとネガティブの両面あってこそ全体をなすという理解がない。

 

シャドーを抑制するだけでは意味がない

 

ただそうは言っても、私たちは「怒ってはいけない」「感情的になってはいけない」「いじめはいけない」と教えられるばかりで、自分のネガティブな面やシャドーに対する理解もなければ、適切な対処方法も習ったことがありません。

 

日本では、有名人の不倫や暴行事件のニュースが流れると、非難の論調でメディアが大きく騒ぎたてます。「ほらみろ、我慢してシャドーを抑えないとああなるぞ」という声が聞こえてくるようです。

 

けれども、闇の部分を一時的に抑えつけるだけでは、かえって問題の解決が難しくなります。なにより、人間なら誰もが持つものを否定し続けていては、社会はますます不寛容に、そして生きづらくなります。

 

「シャドー」に対しては、これまで次の3つの対処方法が用いられてきました。

 

まず、ひとつめは「批判」です。

 

人は、自分のネガティブな面に触れると非常に嫌な気持ちになるので、誰かを責めたり、批判したりしたくなります。

 

まるでお役所のポスターのように、「いじめをやめよう」「パワハラはいけない」「暴行は許せない」と言うのは簡単ですが、「いけない」というだけでそれがなくならないことは、誰もがわかっています。

 

誰かを批判すると一瞬は気分がよくなるのですが、実際にはかえってシャドーへの嫌悪感を「強化」してしまうのです。

 

2つ目は「避ける」です。

ある人を見ると理屈なくイライラしてとにかく嫌だということは、誰にでもあると思います。それは、身近な人かもしれないし、職場の人かもしれないし、もしかしたら芸能人やドラマの登場人物かも知れません。

 

そういう感情を抱くと、人間はその相手を避けようとするものですが、なぜか違う場所でも、似たような人に出会い同じような不愉快な体験をすることがあります。

 

これは決して珍しいことではなく、私がコーチングで出会う人のなかにも、このような経験を繰り返している人がいます。つまり、同じようなタイプに不快感を感じてしまうのは、自分自身に向き合う課題があることを意味しています。

 

ただ、それを避け続けるだけでは、根本的な解決にはならず、同じような状況が繰り返されてしまうのです。

 

Getty Images Shadow.jpg

 

いまの自分はシャドーの裏返し

 

3つ目は「正反対の自分を繕う」です。

 

私たちは内心、自分の否定的な考えや欲望、衝動の存在に気づいています。それと同時に、「『本当の自分』を知られたら嫌われるのではないか」という怖れも持っているので、無意識に必死で自分を抑えようとしています。

「人当たりのいい人」になる人もいれば、「冷静で頭のキレる人」になる人もいます。「がんばり屋」になる人もいれば、「優秀な完璧主義者」になる人もいます。しかしその仮面の下には、たいてい「正反対の自分」が隠れているのです。

 

たとえば、一生懸命に「いい人」を演じている人は、往々にして自分をわがままだと思っています。「冷静で頭のキレる人」は、自信がなくオドオドしている自分が嫌いです。「がんばり屋」は、自分はまだまだ努力不足だと悩んでいるし、「優秀な完璧主義者」は、完璧でないと愛されないと思い込んでいます。

 

こうした「正反対の自分」は、小さいころに叱られた経験などがきっかけで生まれます。人は否定的なメッセージを受け取ると、その部分を奥深くに隠してしまうのです。

 

シャドーを否定すると生きる気力や才能まで失う

 

自分のやりたいことがわからない、やる気がでない、冷めている、自分をもっと思いっきり表現したいのに小さく縮こまっている気がする……このような悩みの原因もたいていシャドーにあります。

 

なぜなら、人は本当の自分を無意識に抑制するとき、活力や才能、創造性なども一緒に抑えてしまっているからです。

 

その結果、仮面をかぶった自分をいつの間にか本当の自分だと信じ込み、自分の本当の気持ちも望みもわからなくなってしまうのです。すると視野も凝り固まってしまい、それ以外の見方ができなくなります。

 

世界が目まぐるしく変化する現代社会では、自分の感情やシャドーを抑えようとするだけで多大なエネルギーを消費しますから、才能を発揮するどころかエネルギー切れを起こして、行き詰まり、無気力になります。仮面をかぶった自分からは、本来の力は湧いてこないのです。

 

いまの日本に蔓延している無気力・無関心という病理にもシャドーが関与していると言えます。

 

組織や社会で「正しいこと」だけが強調され、ポジティブさだけを追い求めるように強要されると、人はかえって冷めてしまうからです。

 

表面的なポジティブの下には同程度のネガティブも存在することを認識すると、物事の全体像を理解し、自分の見方や感じ方にバランスを取り戻すことができます。

 

さらにシャドーの存在を自覚し光を当てれば、自分の一部となって、才能やひらめき、創造的なイノベーションとエネルギーをもたらしてくれます。才能には、鍛錬を積み開花するものと、「本当の自分でないもの」を削ぎ落とすことによって開いていくものがあるからです。

 

シャドーと向き合うことで、核兵器廃絶に貢献した女性

 

冷戦期に、核兵器廃絶のための国際的な対話を実現させた立役者としてノーベル平和賞に3度ノミネートされた、シーラ・エルワージーという平和活動家がいます。

 

エルワージーは、核問題を解決するためには、対立する大国や兵器製造企業の経営者、技術者など関係者すべてを集めた真の対話の場を作らなければならないと考えました。そして、その対話の成功は、シャドーに対する理解と「内的な力」がもたらしたと彼女は述べています。

 

では、対話を成功させるためにエルワージーはどんなことをしたのでしょうか? それについては、また次回の連載で書きたいと思います。

 

クーリエジャポン2017年12月9日掲載

 

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

12/18(月)開催! 新しい時代を切り拓くためのほんとうの力ー「難しい」と思った時にどうしたらその先に進むことができるのか?

 

何かを考えたりしようとするとすぐに「難しい」「無理」という考えが一瞬にして自分の中をよぎります。

 

でもほとんの人が何がほんとうの問題なのか、どんな選択肢があるのか、課題や会話をその先に進めるための考え方を習っていません。

 

「思考停止状態」からその先に進むための考え方や力とは何でしょうか?

 

《日時》

2017年12月18日(月)19:00-21:00

 

《場所》

武蔵小山創業支援センター5階第2・3会議室

アクセス➡️ http://www.musashikoyama-sc.jp/access/

南北線・目黒線・三田線「武蔵小山」駅徒歩3分

 

《参加費》

1,000円(税込み)

⭐️当日お支払いください。お釣りのないようにご用意をお願いいたします⭐️ 

 

《お申込み》⭕️こちら ⭕️よりお申込みください。

 

詳細はこちら➡️

 

「内なる声に従っている人が一人いる方が、そうでない人を何百万人も集めたよりも大きな力になる」

 

この勉強会は、新しい時代をつくるリーダー育成事業の一環です。