会議で何を言えばいいのか分からなくなってしまう、
上司や役職が上の人に対して言いたいことが言えなくなってしまう
と思う人はけっこう多いようです。
日本では、それぞれが自分の意見を発言をしたり、違う意見があってもそれが尊重されるような環境や体験は限られていますし、こんなことを言ってはいけないという制限が一般的に強いと思います。
ただ少し厳しいことを言うと、そういう人ほど自分が何を言えばいいのかばかり考えていて、肝心のコミュニケーションをする相手の興味・関心だったり、会議に参加している他の人たちや会議の目的自体がすっぽり抜けていたりします。
コミュニケーションはただ発信すれば終わりではありません。
発信されたものが相手に届いた、または届いてコミュニケーションは成立します。
コミュニケーションの始まりはそこからがやっと始まりとも言えます。
私たちはいくらでもなんらかの言葉や情報を発信することはできますが、それを受け取る人がいなければ、それは一方的な発信、または通達にすぎません。
その情報を受け取る相手がいて、はじめて「コミュニケーション」となるのですね。
そして、このコミュニケーションによって相手とどうなりたいのでしょうか?
どういう状態が理想的なゴールなのでしょうか?
会話の目的が、お互いに協力して仕事をスムーズに進めること、相手との距離を縮じめること、相手のことを知り、自分のことも知ってもらうことだとするならば、どんな姿勢が役立つでしょうか?
または最近の自分の体験を思い出してみてください。
この人と話しやすくなったなあ、
この人と距離が縮じまったなあと感じたのはどんな時でしたか?
いろんな面がありますが、そういう時には「わたしはあなたに関心を持ってますよ」「私はあなたを尊重しています」という姿勢があると思います。
では、「私はわたしはあなたに関心を持ってます」「私はあなたを尊重しています」という姿勢はどうしたら伝わるのしょうか?
それはまずは相手について知ろうとすることです。
実は私自身このテーマを書くにあたって思い出す失敗談があります。
国連PKOの仕事で、初めての任地東ティモールへ派遣された時のことです。
国連PKOの現場では100カ国以上もの同僚と、そして、国連軍という人たちと一緒に働きます。
ある日、ポルトガル軍のパーティーに招待され、ビールやワインを片手に会話が始まりました。
その部隊を指揮する司令官や階級の高い人たちが紹介されます。
誰が一番偉いのかはさすがに雰囲気でわかったのですが、軍隊の階級がわからず、階級の高い人に対して間違った階級を言ってしまったのです。
軍隊という組織は年齢が下でも階級が上ならば、その人が指揮をとるという命令の序列が非常にはっきりした、階級ありきの組織です。
軍隊の中ではコミュニケーションが比較的カジュアルなポルトガル軍であっても、やはり軍隊という組織ですからこの部隊では誰が司令官で誰が士官なのかその前提で会話が進んでいくのがわかって、
相手の家に招かれたのに相手のお名前も知らずにワインをいただいたような、相手への敬意を欠いてしまったように感じて、自分の勉強不足を恥じた思いがあります。
相手についての最低限の情報を調べておくことの重要性を痛感したのでした。
でも仮に軍の階級について覚えていたとしても、あまり馴染みのない相手だと話題を探すのには少し苦労する時もありますよね。
あまり馴染みのない相手だったり、話題が思いつかないなあと思う時ほど、無理にこちらが話そうとするよりも、質問をして相手に話してもらった方がいい場合は多いのです。
まったく知らない分野や相手だからこそ思い切ってわからないことを質問できる、という利点もありますし、自分のことを聞いてくれる人に対して人間は心を開きやすいという面はあると思います。
例えばこんな質問です。
こちらの部隊(会社)で大切にしている日課というのはありますか?
こちら(この部署)で生活を始めてみて驚いたことはありますか?
国連(この仕事)で実際に働いてみて感想はいかがですか?
思っていたのことと違う面はありますか?
こちら(この会社)に来て楽しかったことは何ですか?
これらは一例ですが、
会話を広げる質問には以下のような特徴があります。
① open-ended question=答えがYesかNOではなく、いろんな広がり方が持てる質問
② 対話的な質問=相手とのやり取りに正しいや間違いはなく、相手の感想や体験を知る目的で尋ねる
③ あなたに関心があります。あなたと仲良くなりたいです、という気持ちで聴く。
相手の反応ややり取りに正解も間違いもありません。
一つ一つのやり取りから、ああ、この人はそういう風に感じるんだ、そういう考え方もあるんだな、と相手という人を知る手がかりになります。