英語力がある段階になると、仕事が早くなります。
それは思考回路が英語脳になることと関係している、というのが私の経験的な持論です。
もっと言うと、英語は結論(意思決定)を前提に会話が組み立てられていくからです。
英語で仕事をするというとすごい語彙力が必要で文法も完璧でないといけないと思う人が多いかも知れませんが、ビジネス英語であっても日常的な表現はとてもシンプルで、時にたった一語、またはたった3語くらいでやりとりがなされます。
語彙力や文法も大事ですが、私はある段階から英語力を伸ばすには英語的思考回路を身につける方が大事なのではないか?と思います。
そして、英語脳は仕事をすることを助けてくれます。
私は独立前の南スーダンの首都ジュバで国連PKO活動にかかわっていた当時たった一人の日本人だったので、かなり完全に英語脳になっていました。
(UNCEFなど他の国連機関やNGOやJICAで働いている人、ハルツームで働いている日本人はいました。そして、仮に日本人がいても職場では英語で話すことになるのですが)
日本語は母国語なので、なにかしらの単語が一瞬出てこないことはあっても、日本人の友人に会えば日本語は口から出てきます。
でも、メールででのやりとりはほぼ英語のままでした。
それは、英語の方が簡単で楽だったからでした。
慣れれば、英語の方が簡単で楽というのは、日々現地国や国際機関とやり取りをする日本のNGOや日本の組織で働いている人も共有していた感覚だったらしく、
日本人なのになんで英語で返ってくるの?という雰囲気でもなく、日本人同士でも英語でやりとりすることは普通に行われていました。
なぜ「英語の方が簡単で楽」なのか?といえば、それはおそらく
英語で仕事することと、日本語で仕事することの違いは何ですか?
英語で仕事をするということについて知っておいて方がいいことはありますか?
という質問の答えとも共通します。
それは、英語は結論 (意思決定)を前提に会話が組み立てられていくから、です。
国連職員の間でも日常的に使う語彙のレベルは、非常にシンプルです。
Do you want to the new Indian restaurant tonight around 7:30?
そして、求められている返答も単純です。
今晩食事に行く?Yes かNoか
インド料理でいいのか?Yes かNoか
7:30でいいのか?Yes かNoか
そこには、行きたいけど何かNoの理由があるのならその理由も伝え、
じゃあ代わりに〜行きたい、または〜して欲しいといった返答が求められます。
例えば、
cf.一昨日インド料理食べたばっかりだから、レバノン料理はどう?
cf.今晩は車がないから迎えに来てくれたら行けるんだ、などです。
もちろん日本語でも似たような会話はありますが、英語は結論だけ、
もっと言うと単語だけを言えばいい(単語で成り立つ)という面がより強いと思います。
先ほどの例にとると、こんな感じです。
that sounds great. will join. See you then!
(直訳) いいね。行く。んじゃ後で!
大文字にさえなってないし、真ん中の文では主語の(I=私)すら省略されています。
でも、今晩7:30にインド料理行く?か行かないかについての相手の質問に対しては、
「行く」と返答しているのでやりとりは十分に成り立ってなっています。
日本語だと少し乱暴な感じに聞こえるかも知れませんが、仕事上のやり取りも非常に端的です。
それは、英語(ヨーロッパの言語)は文章構造上も目的ありきの言語だからです。
逆に、いくら完璧な文法で立派な文章が並べられてあっても、これは何のために書かれた文章や報告書なのか、何のためにシェアされているのか?読み手側のアクションとしては何が求められているのか?が明確でなければ、意味が不明瞭な文章とされます。
日本語をバックグラウンドをする人で職場で、英語でどう返答したらいいか悩んでしまうという人は、丁寧な文章や完璧な文章を書こうとするよりも、
このメールや報告書はどういう位置づけなのか?
上司の承諾を求める文なのか?
なんらかのアプローチを提案するための資料なのか?
これを伝えることでどうしたいのか?
これを読んだ人に何を決めて欲しいか(意思決定)
これを読んだ人にどうして欲しいのか(読み手のアクション)
といった点に今一度注意を払ってみるといいと思います。
そして、こういう点を明確にします。
⭕️これは何のための文章(報告書)か
例)これはこういう目的で送っています、と冒頭で言う。
⭕️社内(組織内)での位置づけ
必要ならば決定事項や決議を冒頭で引用・触れる
例)月日の会議の通り、〜とすることが決まりました。それによって〜
⭕️ これを読んだ人に何を決めて欲しいか(意思決定)
例)進捗状況はこうです。次の段階に進めていいのかお知らせください。
⭕️これを読んだ人にいつまでに何を(返信)してを欲しいか(読み手のアクション)
例)いつまでに〜の点についてお返事ください。
こうして分解していくと、英語での仕事というイメージに覆いかぶされていたものよりも、実際に何をやればいいのかより明確に見えてくるのではないでしょうか?
国連ニューヨーク本部時代のわたしの上司は国連の花形部署を取り仕切る人だけあって、とても優秀な人で、国連代表としてBBCにも出演してPKO活動が展開する地域の情勢や国連の取り組みについて説明するような人でしたが、彼の返信はとてもシンプルでした。
Please go ahead. (了解。そのまま進めて)
Please talk to *** 部署. (***部署と先に話しつけておいて)
Let’s discuss this at the next Unit’s meeting. (次の定例ミーティングで扱おう)
よく英語(勉強している外国語)で夢を見るようになったら、
一つの段階に達したサインと言われますが、
改めて国連で学んだ英語脳的仕事術について考えてみると、あえて言うならば、
仕事のメールに一言または15語以内で返信できていたらかなり高いレベルにあると言えます。
(誤解のないように付け加えておきますが、英語でも丁寧な言い回しやそれなりの外交上のやり取りの文言は存在します)
ちなみに、オバマ前米国大統領は、ホワイトハウスのスタッフがオバマ大統領に意思決定を求める書類に対して、返す型が決まっていたそうです。
Agree (同意します)
Disagree(同意しません)
Let’s Discuss.(話し合おう)
オバマ大統領の返信はこれだけです。
ここにも、ビジネス英語は結論(意思決定)ありきという特徴がよく現れています。
日本の大企業に勤めていると、意思決定は上の人がやること、意見を聞かれてもそれがどこまで尊重されているかも反映されているかもわからない、と感じる人もいるかも知れませんが、どんな仕事にも意思決定は含まれていますし、自分がやっていることの目的を自分の中で明確にするというのは、やはり大事だと思います。
英語は構造上それをよりはっきりと意識させられますね。
そして、慣れると英語の方が簡単ではるかに仕事がやり易いと個人的には思います。
重役の誰々さんの顔色をうかがったり、「忖度」についてさらに忖度するよりも、より本質的な部分で勝負ができます。
わざとはっきり言う事を避けたり、あえてあいまいに表現する日本語の奥ゆかしさはそれはそれで味わいつつ、目的と意思決定をより明確にする英語脳を持ちあわせることは可能だと思います。
もっと大きな仕事をしたい、もっと思い切って自分の力を試したい、職場の人たちはいい人だけど、ここはずっと自分がいるところとは思えない、もっと違う職場があると思っている
ーそういう人にはぜひ英語脳的仕事術を身につけていただきたいと思います!