明日は3.11。
3.11になると思い出す「贈り物」があります。
BBCフィルが3.11の2年後、東日本大震災のための鎮魂のレクイエムを演奏です。
指揮棒が振りおろされた瞬間から涙があふれてくる素晴らしいコンサートでした。
それはBBCフィルにとっても特別な体験でした。
なぜなら、2011年3月11日、BBCフィルは日本公演のために日本を訪れていて、京都での公演を終え、次の公演地である横浜みなとみらいホールに向かってバスにのっている途中で東日本大震災に遭遇したからです。
津波の規模もわからず、なによりフクシマの影響や真相がわからない中で情報は交錯し、空港も封鎖される中で英国で待つ家族の間ではパニックも起きたそうです。
情報が交錯し、空港の再開や本国からの指示を待つ中で、同時に「こういう時だからこそ音楽を届けよう」という声も強くあがりましたが、大使館からの指示でけっきょくツアーは後半の5公演を終えることはなくキャンセルされました。
「『音楽家としての使命』を果たすことができずに、日本を離れることになったのは心苦しくつらい経験だった」と団員は語り、絶対に戻ってこようとみんなで誓ったそうです。
指揮者佐渡裕さんとピアニストの辻井信行さんともぜったいに戻っていて完結しよう、と誓ったそうです。
そんな体験を経ての復活ツアーが2013年4月に行われたのでした。
彼らの音色には、今度はぜったいに最後までやり遂げるぞという意気込みと日本への大きな愛が溢れていました。
指揮者佐渡裕さんとピアニスト辻井信行さんからもこの復活ツアーにかけてきた想いが伝わりました。
一番最初の曲は演目にはありましたが、BBCからの申し出で鎮魂のレクイエムが演奏されました。
そして、次にピアニストの辻井信行さんが鍵盤に触れた瞬間、隣の人もその隣の人も、会場全体が涙を流していました。
1200人のホールと演者全体が一体になったかのように感じられました。
最後は前代未聞のスタンディングオベーションでした。日本であんな反応を見るのは初めてでした。
BBCフィルの人たちにとっても特別なツアーになったそうです。
最後のリハが終わった時、普段は真っ先に食事に走るメンバーたちが、誰も席を立ち上がろうとしなかった。
そして、みんなが次々に佐渡さんと辻井さんに「I will miss you」と言い始めたそうです。
イギリス人ってシャイな人多いし、世界中のいろんな指揮者と演奏するBBCフィルは普段はそんなことを言わないんだそうです。
日本を代表する指揮者&ピアニスト × BBCフィルによる演奏。
それは、日本と世界による共同作業を象徴するコンサートでした。