小池都知事や日馬富士を暴走させた「シャドー」とは何か?

小池都知事や日馬富士を暴走させた「シャドー」とは何か?

 

人間なら誰しもが持つネガティブな感情やコンプレックスは、心理学では「シャドー」と呼ばれる。だが近年、そうした負の感情を否定し、ポジティブさだけが極端に評価される風潮が蔓延した結果、社会にはさまざまな歪みが生まれている。

 

突発的な怒りが原因の暴力事件や、政治家の暴言は後を絶たない。また、自分の負の感情を無視し続けると、人間は本来持っていた素晴らしい才能まで失い、無気力感に苛まれるようになるという。

では、我々はシャドーにどう立ち向かえばいいのだろうか?

 

なぜ「爆発する人」が増えているのか?

 

小池都知事の排除発言や、横綱日馬富士の暴行事件、市街地を50分間も車で暴走した愛媛県の会社員の事件など、最近「爆発してしまった人」のニュースが相次いでいます。

 

世界情勢も不安定な昨今、人間も社会もそれに影響されておかしくなっていると考える人もいるかもしれません。

 

確かにそういう面もあるかもしれませんが、私は人間や社会が突然変化したわけではなく、もともと持っていた「シャドー」や社会の闇が表面化しているのだと考えています。

 

シャドーは、心理学者カール・ユングが作り出した概念で、人間のネガティブな感情や、嫌なところ、隠したいと思っている部分を指します。個人レベルのシャドーもありますし、集合社会的なシャドーも存在します。

 

そして現代は、これまで隠蔽してきたシャドーが明らかにされる「透明化」(transparency)の流れが急速に進んでいます。

 

たとえば、パナマ文書やパラダイスペーパーによって、政治家や富裕層の課税逃れの実態が暴かれました。米国では、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインのセクハラ行為が暴露されたことによって#MeTooムーブメントが起こり、日本でも東芝の不正会計や、神戸鉄鋼、三菱マテリアルのデータ改ざんといった企業の不祥事が次々に発覚しています。

 

また、トランプ大統領の差別的な発言が、世界中で人種差別や国家の分裂を助長しています。彼の発言が、人々の意識に内在していた意識を浮きぼりにさせたのです。

 

孫子の兵法に、「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」という言葉があります。

 

「己」をシャドーに置き換えてみると、それは「私たちが理解していない、扱い方を知らない自分自身の衝動」ということになります。それを否認したり抑制したりしている限り、私たちは本当の敵(シャドー)に負け続けることになります。

 

実際、政治家や俳優など表舞台で活躍していた人が突然、本音や暴言を吐いて失脚する例は枚挙にいとまがありません。

 

小池都知事が自信満々な顔で「排除します」と言ってしまったのも、彼女の権力欲の「シャドー」が露呈してしまった結果でしょう。

 

関連記事:

Vol.17 なぜ「罰」だけでは暴力を止められないのか?「南スーダン内戦はかくして泥沼化した」|大仲千華 「答えを求めない勇気」

 

「ポジティブ」の大きな弊害

 

「シャドー」は、ふとした瞬間に見せるその人の隠された部分です。

職場では真面目だと思われていた経理担当者が横領したり、教師や警察官といった公的な職業に就いている人がわいせつ行為で捕まったりするニュースも後を絶ちません。身近な例で言えば、車の運転中に急に性格が変わる人はどこにでもいます。

 

人間は誰でも「ポジティブとネガティブ」「善と悪」の両面を持っています。

 

近年、心理学の分野では、ポジティブさの良い点ばかりを強調することの弊害が指摘されています。これを「ポジティビティー・バイアス」と言い、以下のような傾向が見られます。

 

●ネガティブなことに対する免疫力が低い。

●予想外の出来事への対処能力が低い。

●ネガティブはいけないことだと思い込んでいる。

●ネガティブな側面や感情を否定すると、ポジティブの感度も麻痺する。

●ネガティブな感情・側面が資源や才能になることを見逃している。

●ネガティブの存在価値を無視している。

●ポジティブとネガティブの両面あってこそ全体をなすという理解がない。

 

シャドーを抑制するだけでは意味がない

 

ただそうは言っても、私たちは「怒ってはいけない」「感情的になってはいけない」「いじめはいけない」と教えられるばかりで、自分のネガティブな面やシャドーに対する理解もなければ、適切な対処方法も習ったことがありません。

 

日本では、有名人の不倫や暴行事件のニュースが流れると、非難の論調でメディアが大きく騒ぎたてます。「ほらみろ、我慢してシャドーを抑えないとああなるぞ」という声が聞こえてくるようです。

 

けれども、闇の部分を一時的に抑えつけるだけでは、かえって問題の解決が難しくなります。なにより、人間なら誰もが持つものを否定し続けていては、社会はますます不寛容に、そして生きづらくなります。

 

「シャドー」に対しては、これまで次の3つの対処方法が用いられてきました。

 

まず、ひとつめは「批判」です。

 

人は、自分のネガティブな面に触れると非常に嫌な気持ちになるので、誰かを責めたり、批判したりしたくなります。

 

まるでお役所のポスターのように、「いじめをやめよう」「パワハラはいけない」「暴行は許せない」と言うのは簡単ですが、「いけない」というだけでそれがなくならないことは、誰もがわかっています。

 

誰かを批判すると一瞬は気分がよくなるのですが、実際にはかえってシャドーへの嫌悪感を「強化」してしまうのです。

 

2つ目は「避ける」です。

ある人を見ると理屈なくイライラしてとにかく嫌だということは、誰にでもあると思います。それは、身近な人かもしれないし、職場の人かもしれないし、もしかしたら芸能人やドラマの登場人物かも知れません。

 

そういう感情を抱くと、人間はその相手を避けようとするものですが、なぜか違う場所でも、似たような人に出会い同じような不愉快な体験をすることがあります。

 

これは決して珍しいことではなく、私がコーチングで出会う人のなかにも、このような経験を繰り返している人がいます。つまり、同じようなタイプに不快感を感じてしまうのは、自分自身に向き合う課題があることを意味しています。

 

ただ、それを避け続けるだけでは、根本的な解決にはならず、同じような状況が繰り返されてしまうのです。

 

Getty Images Shadow.jpg

 

いまの自分はシャドーの裏返し

 

3つ目は「正反対の自分を繕う」です。

 

私たちは内心、自分の否定的な考えや欲望、衝動の存在に気づいています。それと同時に、「『本当の自分』を知られたら嫌われるのではないか」という怖れも持っているので、無意識に必死で自分を抑えようとしています。

「人当たりのいい人」になる人もいれば、「冷静で頭のキレる人」になる人もいます。「がんばり屋」になる人もいれば、「優秀な完璧主義者」になる人もいます。しかしその仮面の下には、たいてい「正反対の自分」が隠れているのです。

 

たとえば、一生懸命に「いい人」を演じている人は、往々にして自分をわがままだと思っています。「冷静で頭のキレる人」は、自信がなくオドオドしている自分が嫌いです。「がんばり屋」は、自分はまだまだ努力不足だと悩んでいるし、「優秀な完璧主義者」は、完璧でないと愛されないと思い込んでいます。

 

こうした「正反対の自分」は、小さいころに叱られた経験などがきっかけで生まれます。人は否定的なメッセージを受け取ると、その部分を奥深くに隠してしまうのです。

 

シャドーを否定すると生きる気力や才能まで失う

 

自分のやりたいことがわからない、やる気がでない、冷めている、自分をもっと思いっきり表現したいのに小さく縮こまっている気がする……このような悩みの原因もたいていシャドーにあります。

 

なぜなら、人は本当の自分を無意識に抑制するとき、活力や才能、創造性なども一緒に抑えてしまっているからです。

 

その結果、仮面をかぶった自分をいつの間にか本当の自分だと信じ込み、自分の本当の気持ちも望みもわからなくなってしまうのです。すると視野も凝り固まってしまい、それ以外の見方ができなくなります。

 

世界が目まぐるしく変化する現代社会では、自分の感情やシャドーを抑えようとするだけで多大なエネルギーを消費しますから、才能を発揮するどころかエネルギー切れを起こして、行き詰まり、無気力になります。仮面をかぶった自分からは、本来の力は湧いてこないのです。

 

いまの日本に蔓延している無気力・無関心という病理にもシャドーが関与していると言えます。

 

組織や社会で「正しいこと」だけが強調され、ポジティブさだけを追い求めるように強要されると、人はかえって冷めてしまうからです。

 

表面的なポジティブの下には同程度のネガティブも存在することを認識すると、物事の全体像を理解し、自分の見方や感じ方にバランスを取り戻すことができます。

 

さらにシャドーの存在を自覚し光を当てれば、自分の一部となって、才能やひらめき、創造的なイノベーションとエネルギーをもたらしてくれます。才能には、鍛錬を積み開花するものと、「本当の自分でないもの」を削ぎ落とすことによって開いていくものがあるからです。

 

シャドーと向き合うことで、核兵器廃絶に貢献した女性

 

冷戦期に、核兵器廃絶のための国際的な対話を実現させた立役者としてノーベル平和賞に3度ノミネートされた、シーラ・エルワージーという平和活動家がいます。

 

エルワージーは、核問題を解決するためには、対立する大国や兵器製造企業の経営者、技術者など関係者すべてを集めた真の対話の場を作らなければならないと考えました。そして、その対話の成功は、シャドーに対する理解と「内的な力」がもたらしたと彼女は述べています。

 

では、対話を成功させるためにエルワージーはどんなことをしたのでしょうか? それについては、また次回の連載で書きたいと思います。

 

クーリエジャポン2017年12月9日掲載

 

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投稿者: blossomjp

80カ国以上もの人達が ー文化も言葉も職歴も違う人達が ー アフリカの僻地で出会い、突然「国連軍」として「国連警察」として「国連職員」として仕事を始めることになっった。。。 国連に「出稼ぎ」に来ている人もハーバード卒業の「エリート」もみんな一緒。カオスでにぎやかな現場で80カ国の人たちが一緒に平和を築くためには?!

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