この数日国連総会で北朝鮮が話題の中心になっています。
弱気な態度をみせては「相手になめられてしまう」とばかり、日本の首相まで過激な発言を繰り広げています。
しかし、そもそも力で人に言うことことを聞かせようとするのは可能なのでしょうか?
なんらかの行動をやめさせたいとして、相手に罰を与えることはどこまで効果があるのでしょうか?
人は批判されたり、なんらかの強制を受け続けるとどうなるのか?
罰は相手の行動を変えることができるのか?
これらの点を親と子どもの関係性を例にとって見てみたいと思います。
「きびしく懲罰的な力に基づく罰は、実際には子どもの攻撃性を引き起こす」と指摘する心理学者の見解として、以下の5点をを力の限界としてお伝えしました。
1、力は暴力の連鎖を引き起こす
2、人を力でコントロールするには大きな労力がかかる
3、おとなの罰はいずれ品切れになる
4、強制は抵抗や断絶、離縁など副作用が大きい
5、力を使うと結局は力を弱める
では、自分の意思に反して、子どもが親(学校、教師、権威)によってなにかを強制される時、子どもはどういう反応をするのでしょうか?
ゴードン博士は以下の24の反応をあげています。
1、抵抗する。無視する。否定する。
2、反抗する。服従しない。反発する。文句を言う。
3、復讐する。やり返す。反撃する。蛮行に走る。
4、他人を殴る。好戦的になる。戦う。理屈っぽくなる。
5、他人にいばる。いじめる。
6、かんしゃくを爆発させる。怒る。
7、競争する。勝ちたがる。負けを嫌う。他人をかっこう悪く見せる。
8、引きこもる
9、あきらめる。負けたと感じる。
10、話さない。無視する。相手が話しても沈黙する。
11、いい子、先生のお気に入りになろうとする
12、恥ずかしがる。臆病になる。新しいことを試すのを嫌がる。
13、不安に感じる。いつも承認さえることを求める。保障を求める。
14、おびえる。へつらう。ゴマをする。
15、おとなしくなる。言われたことに従う。同調する。
16、依存症になる(ネット、お酒、ネットショッピング、ワーカホリックなど)
17、ウソをつく。欺く。真実を隠す。
18、他人のせいにする。非難する。告げ口する。
19、逃げる。家へ帰らない。さぼる。退学する。
20、落ち込む。希望がないと思う。
21、病気になる。心身症になる。
22、食べ過ぎ。(過食症、)
23、群れをつくる。おとなに対抗してまとまる。
24、規則や法律を破る。
前回も言いましたが、ここでいう強制や力の行使は、物理的な「力」に限らず、言葉による暴力や心理的な脅しなどの「支配」や「マニピュレーション」(心理的な脅しなどの操作)も含まれます。
例えば、「いじめ」はこうした攻撃性の連鎖の一つとしても捉えることができます。
攻撃された方は、自分よりも弱い対象を探し、気分を晴らしたい(自分よりも弱い対象を探して自分の力を確認したい)という構図があるからです。
上のリストを読まれて気づいた方もいると思いますが、力の行使による副作用はわかりやすい「反撃」に限りません。
リスト上の方が物理的な反応を書いてあるのに対して、8番からは、心理的な反抗という側面が強くなってきます。
日本では、少年の犯罪行為が厳しい親のしつけに対する反抗であることがよく言われるように、過度な期待や過干渉なども含まれます。
アメリカだど、薬物依存や犯罪行為に結びつきやすくなるのでしょうが、日本の場合には、そうした分かりやすい反抗というよりも、忘れものが多くなる、ミスが多くなる、あきらめ、引きこもり、無気力といった形で出る方が多いのだと思います。
学校という公的な制度が、上から下に一方的に「答え」を伝えるという前提を植え付けていること、東京一極集中型経済&大企業主義、「本音と建前の社会」なども関係しているかも知れません。
親と子どもの関係は、その人の権威一般や社会との関係性にも現れることがありますから、なにより「どうぜ何やっても無理」といった社会全般に対する無関心やあきらめ、無力感が日本にとっての大きな損失ではないかと個人的には感じます。
人間は誰でもなんらかの「攻撃性」を持っている存在である、という前提で、人間のもっている「力」を持ちたい欲求、人はどうやって「攻撃」をしかけてくるのか、相手とのかけひきにはどのようにして対応して自分を守っていけばいいのか、
を理解することが大切だと説くのは、臨床心理学者のジョージサイモンです。
続く