新しいチームに参加するとき、新しいプロジェクトに関わるとき、リーダーや上司として誰かに関わる時、周りの人たちの強みをどうやって発見すればいいのでしょうか?
人は第一印象だけでは判断できないし、その人さえもが気づいていない強みを見てあげることがその人のサポートになる、そして究極的には自分をも助けることになる ー この点についてとても意識をすることになった体験があります。
アジアと中東8カ国の軍隊での訓練の講師を務めていた時のことでした。
その訓練は、国連の平和維持活動に参加する軍に平和維持活動について理解をしてもらい、仮想国のシナリオを元に演習を行うことでした。
参加国は、ネパール、スリランカ、フィリピン、バングラデシュ、モンゴル、ヨルダン、タイ等でした。
全員が同じ演習をこなすのですが、それぞれのパフォーマンスにはそれぞれの国の特質が見事に表れました。
演習では、住民のデモ隊に対して対峙するものもあれば、人道支援の車列が武装勢力に襲われ、それに対処するというシナリオもありました。
演習でありながら、決して簡単な内容ではないのですが、ある国の軍隊の番で、判断に躊躇があるというか、私の目には「および腰」のように見える態度がありました。
その様子に私は「本番だったらどうすんだ!」と自分でもびっくりする位に怒っていました。
演習でありながら、実際に起こりえることばかりなので、ただの演習だと思えなかったのだと思います。
そして、そのことをその日の夕食で同席したある元PKO司令官に話すことになりました。
彼は紛争地の最前線で30何カ国もの軍人、1万人もの国連軍を指揮した人です。
彼は落ち着いた口調で私にこう言ってくださいました。
「いろいろな国の人たちがいるところがチャレンジでもあるけど強みだよ。」と。
たしかに!
この一言が私の頭の中でこだましました。
「きっとあの国の人たちの得意な分野があるはず!」
ともかく明日は、もっとこの国の人たちについて理解してみよう、と思いました。
神さまに、この人たちを昨日までの「私の目」ではなく、まったく「新しい目」で見せてください、とお願いしました。
私の相手への見方らや捉え方が変わったからでしょうか、彼らは、次の日の演習では素晴しいパフォーマンスをはじめました。
そして、前日の演習では、通訳や上官からの指示が誤解されて伝わっていたことが判明しました。
昨日の原因は、彼らの能力の問題ではなく、指示系統に問題があったのです。
そしてさらに!
演習後に行なわれていた、国別対抗のサッカー大会でそのチームが見事に優勝したのです。
身体的にもっと大柄なヨルダンやネパールチームを断然に引き離してぐんぐんと勝ち抜いての優勝は本当に見事なものでした。
私はサッカーは詳しくないのですが、素人目から見ても、パス回しとチームワークが抜群でした。
サッカー大会で優勝できたなら演習が出来ないはずがない!、と改めて思いました。
たった1日だけの演習で、しかもその日の私の見方だけで、彼らの能力を判断しようとしていた自分を反省しました。
どんな人にでも得意な分野がある。
そこに目を向けて伸ばし、活かすことー
すべての人の強みや特性が上手く活かされたらどんなチーム・組織になるんだろう?
司令官はそんな楽しみを私に教えてくれました。