「緊張したときはどうしたらいいですか?
プレッシャーから解放される方法教えてください。」
8回のオリンピックでメダルをもたらしている奇跡の人、井村雅代シンクロナイズドスイミング女子監督。
彼女が選手との向き合い方などを書いた「教える力」という本があります。
その中で、プレッシャーへの対処方についてこう言っています。
「プレッシャーなんてとことん感じたらいいねん。
プレッシャーとか緊張は、とことん味わってそこを突き抜けないと。」
真正面から向き合って、プレッシャーを感じつくすと「こんなもの、何の役にも立てへん。自分の力を出すしかないやんか」という結論までいって、ようやく開き直ることができる。
なるほど。
では、「自信がない時」どうするか?
オリンピック選手なんだからもともと自信はあるだろう、と思う人もいるでしょうが、実際には違います。
2008年の北京オリンピックの決勝の前日、チームの緊張が最高になって、その72時間は何をしたのか思い出せない、というくだりがあります。
その前の演技で思ったような演技ができず、選手達はすごいプレッシャーと緊張を感じていて、長年のカンでこれは「やばい」と思ったそうです。
それで、彼女はどうしたかというと、選手たちをオリンピック選手村の一番人通りの激しいところへ連れていきます。
そして、そこで「ランドドリル」と言われるシンクロの振り付けを全員で練習するのです。
「あの時選手に必要だったのは体力の温存ではなく自信です。」
「そして人から見られる怖れを取り除くことでした。」
「そのまま練習を切り上げて、一人で部屋にこもっていたら余計なことを考えてしまう。だったら、もうクタクタになって何も考えられないほど疲れ果てて、あとはベッドに倒れこんで寝る方がいい。」
最後に心のよりどことになってくれるのは、「これだけやったのだから」という感覚だから。
そして、実際にメダルを手に入れるのです。
その夜、井村コーチの選手一団が宿舎に戻ってきた時の選手達のすがすがしい顔を見た他の国のコーチは心の中で「ああ、負けた」と思ったんだそうです。
おそらくこのレベルにいたると、身体能力の差はほとんどなくて、メンタルなのでしょう。
「これだけやったのだから」という感覚 ー シンプルだけど、大きな真理を教えてくれているような気がします。