紛争地の最前線で体感した「答えがない状態をホールドできる力」

ハーバード大学で「一番影響を受けた教授」にも選ばれ、ハーバード大学大学院ケネディースクールでリーダーシップを教えるディーンウィリアムズ教授は、本物のリーダーとは、答えを示さない勇気を持てる人であり、この不確実性の高い時代のリーダーに求められる大きな力の一つは、「答えがない状態をホールドできる力」だと言います。

なぜなら、今の時代の課題は複雑すぎて、たった一人の人が「正しい解」を示せるわけではないし、その時に求めらる答えも変わっていくからです。

私自身、紛争地の最前線で、この「答えがない状態をホールドできる力」がリーダーシップにも紛争解決にもとても役に立つと実感した体験がありました。

私が南スーダンで働いていた時の仕事の一つに、
和平合意が守られているかどうかをお互いに確認するための定期会合に文民の一員として参加するというものがありました。

世界の中でも最も争いの根が深い紛争の一つとされたスーダンでは、当事者間の不信は強く、和平合意が守られるためにいろいろな仕組みが設けられていました。その一つが、国連が第三者として中立の場所を提供し、当事者同士が和平合意が守られているかどうかをお互いに確認するという制度がありました。

議長を務めるのは、一万2千人強の国連軍を指揮するForce Commanderと呼ばれる軍人のトップですが、その定期会合は、国連の役割の中でも最も重要なものの一つで、かなりの緊張を強いられる会合でした。

なぜなら、「こんなことがあった (怒り)。これは和平合意違反じゃないのか?」などと、お互いが不信をぶつけあうのです。

一方通行な発言と怒りとフラストレーションの応酬が続き、答えの見えないまま、時に何時間もそれを聞き続けます。

ほとんどの人がその会合にいるだけで疲れると言う一方で、私は、そんなフラストレーションの溜まりがちな「答えのない状態」に比較的に耐性があったのだと思います。

紛争後の社会というのは、政情がいつひっくり返るかも分からない、極めて不確実性の高い環境です。いつでも避難できるように、パスポートを携帯することが求められる期間もありました。

果たしてこの状態はよくなるのか、気が遠くなるように思えたことは何度もあったものの、私にとって、その会議は、彼らの本音を垣間み、彼らのことを理解する貴重な機会でした。

 

CJMC 110407 014

あの人はなんであんな事を言ってるんだろう?
あの人が本当に訴えようとしている事は何だろう?

何時間も何度も彼らの言うことに耳を澄ましている内に、会議で何度も顔を合わせている内に、徐々に彼らと信頼関係が生まれてくるのを感じました。

私が彼らのことを本当に理解できたかは分かりませんが、少なくとも、こちらが理解しようとしている姿勢は伝わるらしいのです。

ある時、会合が午後も継続という時、国連が用意したランチの席で、スーダン軍とスーダン人民解放戦線(SPLA)の大佐たちと一緒に食事のテーブルを囲みながら、誰かが言い始めたジョークに一緒に笑ったこともありました。

そして、次の日はヘリコプターに乗って彼らの言い分を確かめに実際に「現場検証」に行きます。

一緒に現場に行き、「会合で取り上げられていたことはこうでしたが、実際に起きていることはこうでした」と事実を一つ一つ確認をするのです。

そのような作業を続ける内に、敵同士の彼らの間でも個人レベルでは信頼が生まれる瞬間を垣間みたこともあります。

第三者は、何か独自の見解を述べたり、どちらかの意見について間違っているとか正しいと意見をすることもありません。

ー お互いの言い分を判断なく聞くこと
ー 仮にどちらかが怒りだすことなどが起きたとしてもそれも含めてそこで起きているダイナミックスをただ理解すること
ー 中立の「場を保つ」こと

これは仲裁 (mediation)と呼ばれます。

一見、何もしてないような「もどかしい」状況に見えながら、
この中立の場があることの力は思っている以上に大きいのではないか?

中立でいる事の大きなポイントは、アドバイスをする訳でもなく、意見を言うわけでもなく、あくまで第三の「場を保つ」ことです。判断のない状態で双方の意見を受け止めること、「答えのない状態をホールドする力」が大きな力になりえることを目のあたりにした体験でした。

 

CPA Powell signature

⬆️ 何年もの交渉の末にまとめられた和平合意は総数240ページにも及ぶ。コリン・パウエル元米国国務長官の署名もある。

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投稿者: blossomjp

80カ国以上もの人達が ー文化も言葉も職歴も違う人達が ー アフリカの僻地で出会い、突然「国連軍」として「国連警察」として「国連職員」として仕事を始めることになっった。。。 国連に「出稼ぎ」に来ている人もハーバード卒業の「エリート」もみんな一緒。カオスでにぎやかな現場で80カ国の人たちが一緒に平和を築くためには?!

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