マイストーリー⑩ 「本当の勇気は弱さを認めること」

3.11の朝、私は早朝の便で成田空港に帰国する便に乗っていました。私が南スーダンから帰国してちょうど1ヶ月くらいたった頃でした。

乗っていた便はほぼ定刻とおりに到着し、荷物を引き取り、首都高を経由してバスで自宅に向かっていました。ああ、無事に着いてよかった。ああ、春も近いなあ、とぽかぽかする春の日差しをはっきりと覚えています。

のんびりするのもつかの間、それから1時間後に家が揺れたのです。

幸い私自身も家族も全員無事で、親戚や友人にも直接的に被害にあった人もいませんでした。

 

しかし、私の中で何かが起きたように感じました。

この時の地震で、私の中の「箱」が開いたのです。

震災が、私が南スーダンにいる間に無感覚になっていた部分の箱を開けたのです。

 

もしかしたら、何か少しおかしいんじゃないか?と感じたのは、満開の桜の花びらの下に立っていた時でした。

それまで海外生活の長かった私にとって生の満開の桜を見ることはとても楽しみにしていたことでした。

それなのに、その桜を目の前にしながら、私はきれいだとも美しいともうんともすんとも感じられなかったのです。

 

どうしたんだろう。。。

きっと疲れているからに違いない。しばらく寝て休んだら元に戻るよ。自分に言い聞かせるように思いました。

それからしばらく朝起きれない、という状態が続きました。

身体が空っぽになってしまったかのように、身体にまったく気力が入らないのです。

1日のルーティンといえば、ゆっくり起きて近くを散歩するのがやっと。何もやる氣がしない。誰かに会う気力さえないし、誰にも見られたくもない。。。

 

まさか自分が。。。

それまでバリバリを仕事をこなしていただけに、この自分の状態を受け入れることにはしばらく時間がかかりました。

そして、紛争や世界のニュースに関することをまったく聞きたくなくなり、テレビのニュースを見ることもほとんどなくなりました。

 

トラウマケアに関する研修を受けた時の資料にこう書いてあります。

「私たちの安全を脅かすような出来事に会ったり、極度の緊張状態が続いている時、それは脳の神経系統に影響を及ぼします。

それは、竜巻のようなエネルギーが身体の中に溜まっている状態です。そのエネルギーが数週間のうちに解放されるか統合されないと、いわゆるトラウマの状態を後に引き起こすことがあります。」

記憶は断片的になり、思い出すことができる時もあれば思い出せない時もある。感情を抑圧し無感覚状態(numbness)になります。自然災害や似たような出来事に遭遇することによって抑圧された部分が思い出される時、それは癒しの機会である。

時には激怒や不安、鬱や絶望としても現れる。こうした体験は同時に私たちの人生の『意味』も崩壊させることがある。」

「そうした環境に長い間身を置くこと、または、そうした影響を強く受けた人たちに関わることによって似たような症状を受けることがあり、それは『二次トラウマ』(secondary trauma)と呼ばれる。」

 

ああ、これだ!と知ったのは随分、後のことでした。

 

そして、無感覚な状態は、傷に鈍感になるだけでなく、

創造性、愛や喜びにも鈍感になってしまう、ことを知りました。

 

私は、自分の体験がここまで抑圧されていたとはまったく気づかなかったのですが、

こうした現象は、紛争地でなくとも、カウンセラーや看護師さんといった対人援助職に就く人にも多く見られること、

特に繊細なタイプの人や共感能力の高い人は自分の痛みと他人の痛みを区別すること(自分と他人との間に健全な境界線を持つこと)を学ぶ必要があることを知りました。

 

 

そして、

同時に、

これは、

 

私にとって、

「本当の勇気は弱さを認めること」だと学ぶこと、

そして、少し大げさに聞こえるかも知れませんが、

生きる意味を再発見していくプロセスでした。

 

この時の私の体験をとても上手に表現してくれている本があります。

(著者のTEDでのスピーチは視聴回数ベスト3にランクインしています)

 

自分がどんな人間で、どんな体験をし、何が大切なのかを認め、人生の不完全さを引き受けるには、不完全さの中に美があることを知る必要があります。

そのために役に立つことは、

・心の痛みを無視したり、自分を批判するのではなく、自分自身の温かい理解者になること

・人間は誰でも悩み、自分の無力さを感じることを知ること

・否定的な感情を抑えすぎず誇張もせず受け入れること。痛みを無視したら痛みに共感することはできない。弱みや不完全さを認めず、あるべき姿にそぐわない部分を切り捨て、認められるためにヘトヘトになるのでもなく、否定的な感情や思考と「一体化しすぎない」こと、です。

ブレネー・ブラウン「本当の勇気は弱さを認めること」2013年、より

http://edu-dev.net/2012/08/29/ted_vulnerability/

本当の勇気は「弱さ」を認めること-ブレネー-ブラウン-ebook/dp/B00GTAV3P6

Brene Brown

 

ああ、これだ。

決して、簡単には聞こえなかったけれども、解決の方向が分かった気がして、安堵を覚えました。

 

私は少しづつ、

自分の弱さを受け入れること、

ないものではなく、あるものに目を向けること、

すでにあるものに感謝すること、

を学び始めました。

 

その頃、国連の平和維持活動のトップリーダー(国連事務総長代表)研修参加者の募集の案内を見ました。国連事務総長代表とは、リタイアするくらいの人たちの一握りの人たちが検討される位のポストです。

30代の私が受ける研修ではないのはないのだけど、なぜか私は履歴書を送っていました。

数週間後、東京の外務省のある会議室に私は座っていました。隣には、世界で初の防衛大臣になったフィンランドの元大臣や国連特使、国連PKOの元司令官などの方たちが座っています。

私は「オブザーバー」という立場での参加がゆるされたのです。この研修を受けるには1~2周りも年齢も若いけれども経歴が買われ、正式に「話す」権利はないけれども、研修にいてもいいよという訳でした。

 

さて、この研修は、Senior Misson Leaders Trainingと呼ばれ、国連の平和維持活動を指揮する国連事務総長代表候補者を養成するという目的でした。

参加者としては、各国から推薦された軍人や警察のトップ、ニューヨークやアフリカやアジアなどで現地のトップを勤める国連の幹部などの人たちが揃っていました。

彼らは、国を代表している立場であり、この研修で推薦され国連外交で主要ポストにつくことが目的なので、すべての講義や課題が評価の対象となるのでかなり真剣です。

 

私は「オブザーバー」という立場での参加だったので、正式に発言することはできません。

前線で活躍してきた講師陣の生のリーダーシップについての体験を聞ける機会がありながら、課題をしたり発言をするプレッシャーから解放されているのですから、ある意味とても理想的なシチュエーションだったかも知れません。

米軍が作っただけあって課題はけっこう本格的で、内容が面白かったので、正式には何の評価にもならなかったけれども、資料は読んだし、私だったら答えはこうかなあと課題にも取り組んでました。

 

その様子があまりに熱心に映ったのか、初めの1週間が過ぎてから、特使がパネルのメンバーとして参加して欲しいと言ってくれました。

「えっ?でも、私『オブザーバー』だし、みなさんそれぞれの国のトップのような方たちですけど。。。」

断わるのはあまり得意ではなく、せっかくのチャンスだし、除隊兵士の武装解除・社会復帰支援(DDR)という分野での南スーダンでの体験は私しか喋れる人が他にいなかったので、引き受けることになりました。

 

私にふられた質問は一つ。話した時間は3分くらいでしょうか。

 

そこからの展開には自分でも自分で驚きました。

その5分後、私は国連特使から他の国の軍隊に国連の平和維持活動についてトレーニングをするプログラムの講師にスカウトされたのです。

 

そして、自分の心境の変化にもっとびっくりしていました。

関わり方は違っても、また世界の紛争や国連のPKOという現象に向き合ってみよう、と。

 

少しづつ気力が戻っていたのを感じました。

 

何かに向き合うことーそれは、自分に力を取り戻してくれるんだと、この研修に参加することで体験したように思います。

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投稿者: blossomjp

80カ国以上もの人達が ー文化も言葉も職歴も違う人達が ー アフリカの僻地で出会い、突然「国連軍」として「国連警察」として「国連職員」として仕事を始めることになっった。。。 国連に「出稼ぎ」に来ている人もハーバード卒業の「エリート」もみんな一緒。カオスでにぎやかな現場で80カ国の人たちが一緒に平和を築くためには?!

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