国連PKOのもう一つ面白いダイナミックスは、それぞれの国の軍人の人たちが、自分の国ではないアフリカというコンテクストで、自分自身が「国連」という立場になることで、自分の国の課題が違う目で見えるようになること。
フィリピンで、フィリピン軍を対象に2週間半の国連に派遣される候補者向けのトレーニングの講師を務めていた時のことです。
国連のPKOに関するトレーニングは国連が設定した基準があって、人権、住民の保護、ジェンダー、人道支援など国連軍として派遣されるためのマインドセットを学ぶのですが、国連みたいな理想主義なかなか信じられないんだよねーっという雰囲気が強くありました。
なんだろうコレ?と、質問を受けたり、話しをしていくうちに、どうやら、実際にミンダナオに実際に派遣された人も少なからずいたみたいで、口に出されずとも「僕たちはアフリカより先に、ミンナダオ(軍と武装勢力が内戦中)の問題で困ってるんだよね。」という心境なのだと分かってきました。
そんな時にやったのがこんなエクササイズ。「もしあなたが国連要員として南スーダンの派遣されて、武装解除される元反政府勢力の元兵士の人に支援する立場になったら」という設定で、①「彼らが困っていること・心配事はなんですか?」②「彼らが必要としている支援は何ですか?」
彼ら自身も兵士だから、元兵士が武装解除されるというシナリオに共感したのかも知れません。南スーダンという第三国のコンテクストがよかったのかも知れません。「国連」という役回りでいつもの視点からはなれたのもよかったかも知れません。各チーム議論がとても盛り上がり、気づけば、彼らの中で、自然と反政府側の元兵士たちのは「まったく理解できない敵」から「少しは理解できる相手」に変わっていったようです。
それ以来、トレーニングは順調に進み、大成功な研修となりました。彼らは国連のPKOというコンテクストを使って、自然にミンダナオのことに対してもたくさんのヒントを受けとったようです。