携帯電話のノキアがインドの字が読めない層をターゲットに携帯電話をデザインしたものの、字が読めない人だと見られるのが嫌だったからだったので、その製品はほとんど売れなかったというエピソードがあります。
日本は素晴らしい携帯電話端末を作っているのに、なぜグローバルに売れないのか、という問いにもつながります。
逆に、その国の人たちの体験を理解することで新しい製品の開発に成功した事例もあります。パナソニックのミャンマー支店長の方が、ミャンマーで初めて電気のない村を見学した時の経験が、新しい製品の開発につながったというエピソードです。
彼は、だんだんと日が暮れていく「暗さ」を実際に体験ながら、それでも、ろうそくで勉強する男の子の一生懸命さを目のあたりにしたり、「今まで日が暮れるとやることはなかったけど、携帯が電話ができて友だちとおしゃべりができるようになってとても嬉しい。けれども、携帯電話を充電するためだけに隣町まで30分かけて歩かなければならないの」という女性の悩みを聞きます。
ミャンマーのような国では、携帯電話が外の世界と繋がる唯一の手段ですから、病人が出た時などのライフラインであるなど、携帯電話の重要性はさらに大きいのです。
そこで、彼は、携帯電話も充電できるソーラーランタン(電灯)を開発することを決意します。ミャンマーの人たちが買える値段にするために、開発チームを協議を重ね、国内向けの家電開発とは逆に、機能をできるだけ削ぎ落としたシンプルな製品にします。その製品がその村に届けられた時、女性や男の子はとても嬉しそうな顔をしていました。
世界の課題を思うとき、シンプルな技術で解決されそうなものが沢山あります。問題の一つは、世界で流通している製品のほとんどが先進国に住む人たちの視点で設計されているということです。最近は、Technology for the other 99という、途上国の人たちの視点でデザインを見直してみようという動きがあって、実際、シンプルな技術で途上国の長年の課題が解決されていくイノベーションが起きています。
ます「知ろうとする」ことから。彼らの生活を観察すること、彼らに聞いてみることから。そこから大きな一歩が進みそうです。