バングラデシュのような男女の格差がある社会では男性自身はそのことについてどう思っているんだろう?と思ったことがあります。
イスラム圏では、社会的に男女の役割や規範が細かく決められていて、例えば、女性は男性が一緒に食事をしない、女性は学校に行かなくていいとされたりする地域があるなど、女性の地位はまだ厳しい状況にあります。
バングラデシュ軍対象のトレーニングの講師を務めていた時、その一環としてジェンダーについて講義をする機会がありました。国連の平和維持活動(PKO)に関するトレーニングには国連が規定した世界共通の項目があり、人権や人道法などに並んでその内の一つがジェンダーでした。 彼らが派遣先の国の治安を守るという重要な仕事を果たす上で、女性が紛争国でどのようなチャレンジに直面するものなのかを理解するという意図でした。(もちろん男性にも大きなチャレンジがあります。)
ただ、イスラム圏で、ましてや相手は軍人。さて、ジェンダーの話しがどこまで通じるんだろう??? わたしの方にまだ偏見があり、正直はじめは懐疑的でした。
「『男女の役割』というのは文化的、社会的に規定されているものです。 男女の役割は社会の変化や世代を経て変わることもあります。」と説明しました。 すると、世代で変わることもあるってどういう意味ですか?と質問があがりました。 バングラデシュではちょっと想像がつきにくいのですが。。。?! そんなニュアンスが伝わってきました。
こんな説明をしました。 「私の祖母は沖縄の片田舎に生まれました。その村で子どもを8人育てました。 その娘(私の母)は戦後、その片田舎に生まれながら、船で東京にやってきて、働き始めてすぐに男女雇用機会均等法が制定され、女性のプロフェッショナルとして定年まで働きました。孫(私)は国連に入り、ニューヨークや南スーダンで働きました。最近、ひ孫(私の姪っ子)が誕生しました。 彼女はとても活発なので南スーダンでは飽き足らず宇宙へ行ってしまうかもしれません。」
最後に笑いがおきたので通じたようです。
バングラデシュで女性が何時間もトイレを我慢することにショックを受けた話しもしました。紛争の前線を経験してきた現役の軍人ばかりでしたが、親身に耳を傾けてくれました。講義の後、彼らのうちの何人かが私のところに来てこう伝えてくれました。 「実はずっとこういう話しをしたいと思っていたのです」と。
一般的に男尊女卑と言われている社会でさえも、個人的には必ずしもそれでいいと思っているわけではなくて、 男性自身、本当はもっと自由に女性と接っしたい、しかも、女性にもっと自由であって欲しいと思っている(!) 新鮮な驚きでした。