平和学 シラバス
授業概要
現在世界における武力紛争の要因とは何でしょうか?
民族が違うという理由 で人はほんとうに争うのでしょうか?
どのような政治社会的背景の時に、分 断や対立、紛争は起こりやすいのでしょうか?
どうしたらそれらを予防する ことができるのでしょうか?
争いをやめる動機やきっかけとなるものは何で しょうか?
紛争解決のための国際的な枠組みや仕組みとしては、どのようなものがあり、どのような現状や課題があるのでしょうか?
本授業では、現代世界の紛争を考察する際の主な視点として、第一に、紛争 の要因について、構造的、政治的、社会的、心理的側面から検証します。
第二 に、紛争解決のための国際的な枠組みとして、主に冷戦後の国連 PKO活動に 着目し、和平合意締結から停戦、紛争後の復興、国家制度の整備という紛争 後の平和の定着に向けた一連の政策にかんする現状と課題について考察しま す。
第三に、平和を促進する要因と政治社会的背景、分断や対立、紛争を乗 り越え、平和へ向かっていく地域、社会・国の特徴とその過程について学び ます。
到達目標
① 学生は、現在社会のおける紛争について理解し、自分の考えをより深め、 さらに建設的な検証を行うための視点と方法を身につける。
② 学生は、紛争予防や紛争解決にかんする国際的な枠組みについて、調停、 和平合意、平和維持、復興の流れに沿って主要な概念とその課題について理 解する。
③ 学生は、紛争の要因について理解すると同時に、平和を促す要因、政治社 会的背景、紛争や憎しみの連鎖を超えていく地域や社会、国の特徴とその過 程について理解する。
授業計画
【第1回】はじめにー「平和とは何か?」「誰にとっての平和か?」
【第2回】「直接的暴力」と「構造的暴力」「文化的暴力」
【第3回】大量破壊兵器と第二次世界大戦終結とその教訓ー国際連盟から国際連合へ
【第4回】冷戦の終結と内戦ー「国際紛争」から「国内紛争」へ、軍人から民間人へ
【第5回】国連平和維持活動(PKO)と「国家建設」の現状と課題1 – 東ティモール(UNTAET)を事例にしてー
【第6回】国連平和維持活動(PKO)と「国家建設」の現状と課題2 -南スーダン(UNMIS)を事例にしてー
【第7回】合意形成と信頼醸成のための枠組みとしての和平合意 ー南北スーダン包括和平合意(Comprehensive Peace Agreement:CPA)を事例にー
【第8】紛争の心理的側面:民族紛争はなぜ起こるのか?ー社会認知理論の視点から
【第9回】紛争とトラウマー個人と社会に与える影響とその特徴
【第10回】和解と修復的正義(restrative justice)ー「被害」と「加害」を超えて
【第11回】期末レポート作成についてのガイダンス
【第12回】暴力と憎しみの連鎖を超える社会のプロセス ーBreaking the Cycle of Violence理論からー
【第13回】戦後日本の占領政策」再考ー世界から日本へ、そして、再び世界へ
【第14回】合意形成のための原則とメカニズムー交渉、仲裁、対話の手法について
参考文献
ヨハン・ガルトゥング「ガルトゥング平和学入門』, 法律文化社 (2003年)
ジョセフ・ナイ・ジュニア、デイヴィッド・A・ウェルチ『国際紛争(原書第 6版)』有斐閣(2007年)
花田吉隆『東ティモールの成功と国造りの課題 -国連の平和構築を越えて』創 成社(2015年),
足羽與志子・濱谷正晴・吉田裕 編著『平和と和解の思想をたずねて』大月書 店(2010年)
ハワード・ゼア『責任と癒し―修復的正義の実践ガイド』築地書館(2008年)
Yoder, Carolyn(2005). Little Book of Trauma Healing: When Violence Strikes and Community Security is Threatened, Good Books: PA.
『敗北を抱きしめて 上・下 増補版―第二次大戦後の日本人』岩波書店(2004 年)
マーシャル・B・ローゼンバーグ『NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む 法(新版)』日本経済新聞出版社(2018年), 2052円, ISBN:4532321956